第2話 すれ違い

いつもの状況、いつもの電車の揺れ。そして吊革につかまりながら、いつしか読書に夢中になる。40分ほどで揺られる車内が暗い池袋駅に吸い込まれ、電車が停車すると、降車ホームに人が溢れ、続いて乗車ホームのドアが開く。少し空いてきたドアから遅れて降りる。揺れるポニーテールが人混みから垣間見える。もう3年も同じ光景。そして俊は、足早に追いついて、震える声で、

「いつも会いますよね!」

「・・・・・」

「話できる?」

「・・・・・」

無限の時間が通り過ぎて行く。

今日は、そのまま、予備校に行かずに、やっとのことで、地下鉄のホームへノロノロと移動する。大塚まで赤い色の地下鉄に乗り込む。大塚駅のドアから吐き出される大勢の女学生の群れ。その後を何となくついて、校門までふらふらと着いた。中に入れるはずも無く、校門の見える公園のベンチに腰を下ろした。粉雪が舞ってきた。目を閉じた。そして、目を開けば、校門から同じ制服を着た女学生が下校していく。そのまま、しばらくして我に帰って、ノロノロと地下鉄の駅まで歩いて、池袋まで地下鉄に乗って、そのまま、家に帰って行った。

 次の日も同じ時間に同じ位置に立った。右を見る。同じようにポニーテールが朝日に輝いている。振り向こうともせず、何もなかったように電車を待っている。いつものようにギギッーと黄色い電車が止まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る