第3話 看護と私

実は私、看護師してました。


何故看護師を志したのかというと、親に「手に職を」と言われたからです。


今、こうやって文章を書いているように、私の夢は小説家でした。

文章を書いて生活する人になりたかった。

でも、その夢は両親には言えませんでした。

大学進学の際にずっと関心のあった心理学を学びたいと相談したところ、「心理学を学んで何をするんだ?」と問われました。その頃読んでいた小説の影響でホテルウーマンに憧れて、「ホテルで働こうと思う」と両親に伝えたところ、却下されました。その時に言われたのが「手に職を持て」です。「資格をとって置け」とも言われました。

その時の私は人間の心理が学べることと人に接する仕事に就くことを目的に進学先を考えました。出した結論が看護師だったのです。


このエピソードだけで、私が生粋のアダルトチルドレンだという事が分かりますね。

親に反対されたから、親に反対されるかもしれないから、そんな理由で本当に自分のしたいことを歪めていました。

実は看護師も最初反対されましたが、人間のことを全般的に学べ人としっかりと接することができる看護師は私の譲歩の精一杯でした。反対していたのは母だけだったこともあり、看護師を目指すことを貫きました。


看護の勉強をする中で、看護師は私の天職だと思えるようになりました。

一歩間違うと人の命に関わる仕事です。

当時流行っていた「ナースのお仕事」の朝倉いずみを地で行くようなドジな私でしたが、患者さんのために努力したことは必ず患者さんの笑顔と感謝の言葉で返ってきました。人のために尽くすことが生きがいだった私にとって、これほど素晴らしい職場はなかったです。


1話、2話を読んでくれている人は分かると思いますが、この「人に尽くす」ことこそ、アダルトチルドレンの症状と言えます。

誰かを助けるのが自分の使命と思っていましたが、今ならはっきりと分かります。

私は父と母を祖父から守りたかった。

父と母を助けたかった。

助けたかったけど私には父と母を助けることができなかったから、「誰か」を助けることを使命と感じたわけです。患者さんは両親の変わりだったわけです。


今は看護師をまたしたいとは思えません。

もしかしたら、アダルトチルドレンを完全に克服した暁にはまた看護師として働きたいと思うかもしれません。

でも、今の段階では、私は私自身を助けられていないから、人のことまで助けることはできないと思っています。


ただ、あの頃の私は患者さんたちの「ありがとう」の一言にどれだけ救われたか分かりません。

看護師の仕事をしていたころ、体はボロボロでした。

アダルトチルドレンで感情にも蓋をしていました。

それでも、患者さんの「ありがとう」の一言が私の心を癒してくれていました。

沢山の出会いに、感謝を。

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