第20話本幕/柏手の一=チャンバラの巻/その十二~剣戟娘:断八七志流可の章~

「流星、か。わたしの突きをそれほど風雅に評価してくれたのも、あなたが初めてよ」

 カルシュルナさんはそう言うと少し照れくさそうに、はにかみんだ笑みを浮かべた。

 彼女の言葉については、それは確かにそうだろうなぁとしか思えない。

 三度この身を以て受けているからこそ、そうとしか思えない。

 本当は、とてもじゃないがこんなものじゃないっていうのに。

 僕の貧弱な語彙じゃ、そう例えるのがせいぜいだ。

 あとはひと言、「凄い」としか出てこない。

 もしも僕がフェルだったなら、あの子の持つありとあらゆるありったけの語彙を総動員してカルシュルナさんを称賛したことだろう。

 でも残念ながらというか当然のことながら、僕はフェルじゃない。

 だから今の僕には、これが精一杯。

 僕自身の感嘆と感想は、これでお終い。

 なんとも単純で、お粗末なものだった。

 だけど、それも仕方ないかと割り切って心を仕切り直す。

 だって、死人に口なしは昔からの世の習いなんだから。

 身体に穴が開いても喋り続けていたひとなら、以前に相対したことがあるけれど。

 運良く、と言っていいのかどうか分からない。

 それでも今のところ、死んだひとが喋っている場面をこの目で拝んだ経験は僕にはなかった。

 まあ、そんな他し事あだしごとは脇にさっさとさておいて。

 問題は、彼女のほうだ。

 カルシュルナさんの、あの微笑みだ。

 それがまた、もう何というか、何とも言えない。

 格好よく、凛とした大人の女性の立ち居振る舞い。

 そこにシャボン玉のようにふと芽吹いて散った、少女の無邪気さと幼気さ。

 まるでビターチョコレートのケーキに砂糖とクリームを絶妙のバランスでトッピングしたような、まさに至高の一瞬にして一品。

 ああ、どうしてこのひとは、なんでこんなに

 どこまで僕を、

 じゅるり、と思わず上と下から涎が垂れてしまいそう。

 なんて、そんなことは全部僕の勝手な思い込みだ。

 いけない、いけない。

 こんなことは思っちゃいけない。

 彼女は本物の兵。

 尊敬に値する「敵」なんだから。

 もっとしゃんとしてないと。

 そうでなければ、彼女に失礼だ。

 何よりは絶対駄目だ。

 ここまで思っておきながらな何を今更、という感も否めないがそこには目を瞑るとしよう。

 幸い目を瞑るのも口を噤むのも、この場には僕しかいないしね。

「お世辞じゃあ、ありませんよ。そういうのは苦手なのもので」

「ええ、分かっているわ。だから、せめてものお礼に・・・・・・・・・」

 言いながら、カルシュルナさんの美しい肉体がうねり、筋肉が軋み、一寸の揺らぎもなくあの構えをとる。

、見せてあげるわ。あなたが名付けてくれた、これだけしかない私の自慢の、流星を」

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