第11話 覚悟

日曜日も同じ感じで一日が終わった。

平日は昼間は学校でしごかれ夜は筋トレやらで体はボロボロ。そして夜寝ている間は限界まで架空の千鶴さんと殺し合い。

土日はひたすら千鶴さんにぼこぼこにされ、そして寝ている間は架空のちz....

こんな感じで月曜日から日曜日までが過ぎていった...。

そして、三週間が過ぎ、作戦決行日前の最後の会議を明日に控える金曜日まで来てしまった。

その間に俺は千鶴さん相手にだいぶ善戦することができるようになっていた。

しかし前と比べてといったところなので不安しかないのだが。

それは当然のことなのだろう。

そこまでの動きになるのなんて一か月では短すぎるというものだ。

不安なのは凪も同じようで話を聞いてみると、ほとんど上達できなかったらしい。


千鶴さんとの最後の特訓が終わって三人で夕飯を食べていた。

俺と凪は思うように上達しなかったので、いつにもまして重苦しい雰囲気だが。

俺たちの食事が終わるのを待てなかったのだろう。 

千鶴さんが箸をおいて、まじめ表情になって話し始めた。

「二人には言ってこなかったが、あえて今言おうと思う。

 明後日には少なくない数の人が死ぬ。

 こちらも殺さないと殺されてしまうということを、ちゃんと覚えておいてくれ。」

何故このタイミングで..と思ったが、今しかなかったのだろう。

その後誰も言葉を発することなく夕飯が終わり風呂に入った。

その日はいつもより静かに終わった。


そして翌日朝の九時ごろに目が覚めた。

凪によると最後の会議は昼ごろかららしい。

千鶴さんはもう本部にむかってようで姿が見えなかった。

俺は凪と二人で朝食を作り、無言で朝食を食べた。

会議が始まるまで少し時間があるので、どうしようかと思っていたら凪がある提案をしてきた。

「ちょっとよりみちしながら本部にむかわない?」

俺に断る理由なんてなかったので、賛成であった。


凪についていって着いた場所は前に凪と買い物をして、荷物持ちをさせられたところだった。

今は土曜日ということもあって人がそれなりの数歩いていてにぎわっている。

あの時はとなりに凪がいて自分の大好きな銀髪があったので幸せだったのだが、今はそんな心境じゃない。

よく考えてみれば一か月の間に色々あったものだと思う。

そして明後日には...人が死ぬ戦いが起きてしまう。

一度考え始めてしまうと今まで考えまいとしていたことを意識してしまう。

そんな俺と同じなのだろう、凪も少し物憂げな表情をしていた。

そしてその表情のまま凪は自分の本心を語り始めた

「いつかこうなることは覚悟していたのだけれどね、いざこうなっちゃうと怖いものは怖いわね。

 本当はシノと一緒に逃げたいって思ってるの。だって死ぬのは怖いもの。

 でも、逃げるわけにはいかないのもわかってる。

 敵との戦力差は私たちですら必要なぐらいの差があると。

 多分昨日千鶴さんがあんなことを言っていたのは私たちの考えをわかっていたからかもしれないわね。

 そして多分あれが最後通告だったんだと思う。」

俺も薄々感じてはいた。

この戦いはそれだけ危険なものだと。

「昨日寝る前に考えていたの。

 考えて考えて考えた結果、逃げないことにした。

 私は戦うわ。それが私の答え。」

きづいたら凪の表情は覚悟を決めた意志の強さを感じるものになっていた。

「俺も寝る前に考えて考えて考えたさ。

 確かに怖いのは事実だよ

 でもいくら考えても逃げるなんて選択肢を取ることはできなかった。

 理由はまだはっきりしないけど、ここまで来て逃げるわけにはいかないってのが俺の本心だ。

 だから、俺も戦うよ。」

俺も凪に負けじと自分の本心を伝えた。

俺たちの横にあるショウウィンドウに映っている二人の表情は

昨日までの不安に押しつぶされたような表情と違って引き締まったものになっていた。

そのあと少し服屋とか雑貨屋に入って時間をつぶして俺たちは本部に向かった


いつも通り受付さんの前を通ってエレベーターに乗り、先週使った会議室に向かった。

扉を開けると俺たち以外の全員がそろっていた。

俺たちが入ってきたのを見て千鶴さんが少し安心したような表情になっていた。

俺たちはそそくさと空いている席に着いた。

鑓原さんがそれを見て、話し始めた。

「無事全員そろったようだし始めようか、最後の作戦会議を。

 一応言っておくんだけど今回の内容はメモとかとったり他の人にいったりしないでね。

 まぁみんながそこまで危機管理能力ないとは思わないんだけど、万が一もあるからね。よろしく頼むよ。」

今更感がある気がするが、そこまで徹底しているのだろうか。

「じゃあさっそく本題に入ろうか。

 作戦の決行日は明日だ。

 明日の12時ごろからバスを使って大阪へ向かう。 

 僕が手配しておくから安心してもらっていいよ。

 六時間ぐらいかかるからよ酔いが心配なら酔い止め持ってきておいてね~

 軽食もこっちで用意しておくからそれも覚えておいてね。」

なんでそんな長時間かかる乗り物で...と考えているといつぞやの忍者さんが急に鑓原さんの背後に現れた。

「敵の本拠地についてなんだけど、風魔君に一か月の間に調べてもらったんだ。

 敵の詳しい能力に関しては相変わらずわからないままだったけど、正確な位置と動きがわかったんだ。

 じゃ、風魔君そこらへんよろしく。」

そういうと忍者さんが説明を始めた。

「拙者が調べたところによるとちょうど今日から三日間、例の三つのギルドの主力メンバーがそこに集まるらしいでござる。

 何の目的かはわからないのでござるが絶好の機会であるのには違いないでござる。

 そしてその場所というのは大阪にある豊中市という場所にあるビルの一つなのでござるが...

当日拙者が案内するので詳しい説明は省くでござるよ。

 拙者からは以上でござる。」

説明が終わった途端、急に姿が消えた。

「風魔君は一族の掟で人の前に姿をあまり長い時間だしてはいけないんだ。

 そういうことだから、あまり悪く思わないで上げてほしい。」

忍者さんそういう理由だったのか...一族の掟とかまじかっこいいな。

「ともかく説明のあった通り明日が絶好の機会なんだ。

 その絶好の機会に一網打尽にしよう。

 少なくない数の護衛はいると予想されるから、各ギルドから集めた人員を使って陽動を行おうと思うんだ。

 何か騒ぎがあれば主力メンバーも当然何人か来るだろうから、クロさんと僕で対応をする。

 そしてこちらの主力メンバーである鶴ちゃんと梨花ちゃん、そして四之宮君と凪ちゃんの四人で敵本拠地に潜入

 四人で一人ずつ主力メンバーを暗殺していき、最終目標を班目とする。

 僕とクロさんも陽動が終わり次第中に合流する感じだ。

 卑怯な作戦に聞こえるかもしれないけど、彼我の戦力差を考えるとそんなことも言ってられなくてね。

 どうかな、この作戦に反対の人はいるかな?」

確かに鑓原さんの言う通り卑怯な作戦にきこえてしまうが、そんなこと言っている場合じゃないことをこの場の全員が理解しているため

誰も反対する人はいなかった。

「じゃあそんな感じで忘れないように頼むよ。

 あと、夜更かしはしないようにね~。」

そういうと鑓原さんは部屋から出て行ってしまった。

...流石に色々軽すぎやしないか。

時間にして2時間かかっていなかったので、思ったよりあっさり終わってしまった感じが拭えない。

この後どうしたものかと思いながら凪と会議室から出ると後ろから声をかけられた。

「二人とも覚悟はできたようでよかったよ。」

振り向くと千鶴さんが手をひらひら振っていた。

「あんなことをいった手前言いづらいんだけど、きてくれてよかったよ。

 明日はお互い死なないように頑張ろう。」

そういって俺たちの方を軽くたたいて去っていった。

とりあえず帰ろうと本部からでようとしていたのだが真純さんに呼び止められた。

「二人ともちょっといいかしら。

 夜に鑓原さんからメールが来るとおもうんだけど、ちゃんと家で見るようにしてくださいね。」

それだけ言うと真純さんはどこかへ行ってしまった。

そのあと俺と凪は腹が減っていたこともあり、適当にラーメン屋さんに入って少し遅めの昼飯を食べた。

そしていつも通り買い物とかをして夕方ごろに家に帰った。

今日の会議の内容を凪と確認しながら夕飯を作って、二人で食べた。

夕飯を食べ終わったのは七時ごろだった。

食べ終わっていつも通り何か筋トレをしようとしていると、俺のスマホに着信が来た。

凪も同じようで、多分これが真純さんの言っていた鑓原さんからのメールのようだった。

凪と一緒にメールをみたのだが、そこにはこう書かれていた。

「作戦変更。

 詳しい話は文面だと伝わりずらいから明日千鶴ちゃんと梨花ちゃんに説明任せてあるから聞いといてね。

 今日まで行われていたこととかの説明も全部するつもりだから、心配しないで大丈夫だよ。

 とりあえず明日の朝12時成田発の飛行機に乗って乗ってもらう予定だから、絶対に送れないように頼むよ。

 僕は明日ちょっと野暮用があるからいけないんだけどみんなで頑張ってね~。

 自分の力を信じて、頼むよ。」

って、書いてあった。

あの人明日来ないとかどういうことなんだよ....凪も同じことを考えているようで微妙な表情だ。

でも真純さんは少なくともこの件についてしってそうだし、あの人が止めていないのなら何か理由があるのだろう。

そうおもっているのは凪も同じようで

「あの人あほだけど馬鹿じゃないし、真純さんとか千鶴さんが止めてないなら大丈夫よ。きっと。」

ともかく朝早くなってしまったのでさっさと寝てしまった方がいいだろう。

そんな感じで風呂にはいってとっとと寝ることにした。


翌朝七時におきていつも通り朝飯を食べた。

時間に遅刻してしまうと取り返しのつかないことになりそうなので、9時半に家を出た。

休日ということで人の数が多くて、電車に乗ったりバスに乗ったりするときかなり面倒だった。

なんやかんやで11時過ぎに成田空港につくことができた。

荷物の検査とか手続きを済ませて誰かいないかと探していると、すぐに見つかった。

黒髪眼帯のお姉さんとマッチョのオネェの組み合わせは流石に目立つ。

あちらもこちらを見つけたようで目があった。

近くに行くとソファで寝転がっている梨花さんもいた。

向こうに行って作戦変更について聞こうとしたのだが、その前に千鶴さんが話し始めた。

「飛行機が来るまでまだ時間があるからね、君たちに本当の作戦を話すよ。

そして鑓原がいままで何をしてきたのかもな。」

水面下では俺と凪が想像だにしなかった争いが繰り広げられていたのだっ

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