第5話
--ファーラ視点--
笑顔で彼を送り出し、部屋に一人取り残される。沈黙が包む部屋を一度見渡し、私は重大なことに気づく。
「…ちょっとまって、私これめちゃくちゃ暇なんじゃ…」
確か昨日、司は今日遅くなるって言ってたような…だとしたら、私は彼が帰ってくるまでいったい何をして時間をつぶせばいいのか。
「…しまった…何も考えてなかったわ…」
明るく彼を送り出しはしたものの、これなら無理やり引き留めるべきだったかも…
私は途方に暮れながら、仕方がないので部屋の中を目的もなくうろうろする。
「うーん…まずはやっぱりこれよね」
私は一目散に彼の机を目指し、その前に立つ。人の机を勝手に開けるなんてご法度だろうけど、契約者のことを深く知るためだ。これは仕方のないことだ。
「いひ、いひひひひ」
自分でもわかるくらい気持ち悪い笑顔と声を発しながら、机の引き出しに手をかける。手前に引くと、早速中のものがあらわになる。一段目に入っていたのは、どうやらアルバムらしい。私はそれを手に取り、パラパラと中身を確認していく。そこにはここ数年の彼の写真が丁寧にスクラップしてあった。私は一枚一枚、嘗め回すように彼の写真を見ていく。
「げへ、ぎひひひ」
写真の顔を見ているだけで、体が熱くなるのを感じる。まだ別れて少ししかたっていないのに、彼を抱きしめたい衝動に駆られて仕方がない。
じっくりと写真を眺め、最後のページにたどり着いたとき、頭が少し冷静に戻る。
--お誕生日おめでとう! ミミより--
どうやらこの冊子は、このミミという女からの贈り物のようだ。顔も知らない女だけれど、自分の眉が八の字にひん曲がっているのが分かる。司の写真をたくさん持っているこの女、いったい司の何なの…帰ってきたら問い詰めてやることとしよう。
もっともっと写真集を堪能したいところではあるけれど、引き出しはまだある。私は二段目に手を移し、中身に目をやる。
そこにはノートや教科書の類が収められていた。彼が大学で使っているものだろう。私は一番上のノートを手に取り、内容に目をやる。
…正直書かれている内容はさっぱりだけれど、彼の字を見ると少しドキドキする。いよいよ重症かもしれないな、私も。
さてと、次が最後の三段目だ。ここに、私の求めるものがあればいいのだけれど。私は心の中でそう念じながら、三段目に手をかけ、中を見た。
「あら、あらあらあらぁ♡」
心の中で私の求めていたものが、そこにはあった。私は死神だから神様なんてあてにはしていないけれど、今は心の底から感謝をささげてやりたいくらいだ。
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