第6話 【僕】 温もり

 あれ、なんだか温かい。


 初めて感じる温かさに気づき、ゆっくりと目を開けた。


あぁぅあここはどこだろう?」


 目を開いてまず飛び込んできたのは、真っ黒な壁に真っ白な椅子や机、どれもこれもとってもきれいで大きかった。


 ガチャッ


 そんなことを思っていると、ドアが開く音がした。

 音のした方を見ると漆黒の髪に、深い藍色の瞳が目を惹く顔立ちの整った15・16歳くらいの青年が立っていた。


 青年「起きたのか。痛いところとかあるか?」


 そう言って、青年は僕の方に近づいてきた。

 とてもやさしい声だった。

 初めてだった。

 こんなにやさしい声で話しかけられたことも、心配されたことも、こんなにきれいな場所に寝ていることも、すべて初めてのことで心臓があるところが温かくなった。


 青年「どうしたんだ⁈」


 急に青年が慌てだした。

 どうしたんだろうか。


 青年「泣いてる。やっぱりどっか痛いのか?見せてごらん。」


 泣いている?

 僕が涙を流していることに焦っているの?

 どうして怒らないのだろうか。

 村の人たちは、僕が泣くと汚いと言ってすっごく怒った。

 いつからだろうか、僕が涙というものを流さなくなったのは…。


うぅうあ、うぅどうして焦っているの?」


 そう聞きたかったが、僕はうまく声が出なかった。

 怒られるかな。


 青年「声が出ないのか?」


 そんな青年の問いかけに僕は首を縦に振った。

 また、僕を怒らなかった。


 青年「字は書ける?」


 次の問いかけには首を横に振った。

 僕が字を書けるはずがないのだ。

 今までそんなものに振れたことがない僕は、少し字が読める程度の学力しかない。


 青年「しょうがない。」


 そう青年が言った。

 やっぱり、僕はまた拒絶されるのだろうか。


 ?【そんなことしないよ。大丈夫。】


 急に頭に声が響いてきた。


あ、あうな、なに⁈」


 青年【ああ、驚かせてすまない。今君の前にいる俺が、念話という魔法を使って脳内に直接声を届けているんだ。】


 そう青年は言った。


【俺のスキルの一つに念と言うものがあってな。念の中に読心術というものもあって、人の考えていることがわかる能力があるんだ。今から使うから君は頭の中で言葉を思い浮かべてくれればいいよ。】


【え、と、助けてくれてありがとう…です。】


 ルイ「ああ、君が元気になってよかった。俺は、放浪冒険者のルイフォール・シーンだ。ルイと呼んでくれると嬉しい。ところで君の名前を教えてくれるか?」


 そう言うと青年、ルイはこちらに笑顔を見せた。


【え、と…僕は忌み子って言うです。】


 僕がルイに名前を教えると、急に怖い顔になった。

 何か悪いことを僕はしてしまったのだろうか。

 そう思っているとルイが声をかけてきた。


 ルイ「君の記憶を少し見させてもらってもいいか?」


 ルイは僕にそう言ってきた。

 そんなこともできるんだと思いながら、ルイに見てもいいことを伝えた。






 ルイが僕を強く抱きしめるまで後数秒……

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