第37話インテルメッツォ-37 必定/必要

「ほほうぉ、それはまた何ともご立派なお言葉でいらっしゃいすねぇ。そしてこれはまた随分と多く、ではなく大きく出たものですねぇ。それ程までに御大層な自信は、一体何処から湧いてくるのでしょうかぁ? ああ、これが俗に言う、男性の自信と己自身の大きさは等しいというものなのでしょうかぁ。だとしたら、あなたは相当なものをお持ちになっておられますねぇ。まさしく天を衝くとはこのことですよぉ。けれど使い処がないことだけが玉に、あとは竿に傷と言うべきでしょうかぁ。わたしには想像することしか出来ませんが、途轍もなく痛そうですねぇ。思わずお腹の下が痒くなってしまいます。それにしてもですねぇ、自分で殺した相手を死して尚愛し続けるなんていうのものは、とてもわたしの好みなのですよねぇ。そういう救いようのなさが、実に良いですよねぇ。しかし大丈夫なのですかぁ? そんな大言を嘯いてうそぶいてしまってもぉ? そこらの蝋燭以下の軽い扱いで、安直に安売りしてしまってもぉ? 勿論たとえお幾らであろうとも、喜んで買わせて頂く所存であることに変わりはありませんがぁ。ですからそれが何を意味しているか、言われずともご理解なさっているとは存じますが、万が一に備えた念の為にお伝えしておきますねぇ。あなたがお売りになった、まさにご自身の血で真っ赤に染まったお言葉を買い付けるのは、赤の他人でも誰でもなければ他でもない、この、わたしなのですよぉ? 大きすぎて収まりきらないあなたのお言葉を実現するまでに、どれだけの問題と困難が障害が存在しているのか。先程も申し上げましたように、当然ながら全て解った上でのご発言なのでしょうねぇ? まあ、わたしが何を言いたいのか掻い摘んでかいつまんで全部まとめてしまえば、たった一言で言葉にして現すことが出来るのですけどねぇ。要はですねぇ、。そうわたしは、あなたに向かってお訊きしたいのですよぉ?」

 己の言葉を真っ向から否定されても、少女は些かも動じはしない。

 不快も、不平も、不満も、そのような風情は露ほども見せることはない。

 翻ってひるがえって少女は己の喜びを隠すことなく、寧ろ男の応えを歓迎するように楽しげな口調で語りかける。

 ゆっくりと、だが着実に伸びてくる魔王の影が、自分のもとへと届くまで待ちきれないとでもいうように。

「出来るさ、。今の俺ならば、な」

 一切の気負いも衒いてらいもなく、魔王は平然とそう言い切った。

 少女の言葉に気圧される様子など微塵もなく、そこには畏怖も怯懦も見えはしない。

「くふふ、それはそれは頼もしいことですねぇ。して、そのお心は? 如何な根拠を以てそのお言葉はあるのでしょうかぁ?」

 少女の問いに対する答えは簡潔にして明瞭。

 童に道理を説くが如き親身なる口調を以てして、極めて自然に魔王は己の極めた必然を叩きつけた。

「そんなものは必要ない。ただ俺がやると言っているのだ。それが結果となるのは当然というものだろう。それとも真逆まさかお前には、これ以上の理由が必要なのか?」

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