第38話インテルメッツォ-38 矜持/教示
「いいえぇ、滅相も御座いません。そうした意図など、微塵もありませんよぉ。それこそが、
少女は恥じ入り
それと同時に男に対して傍若無人も甚だしい宣言を、恥ずかしげもなく堂々と布告する。
その、ある種の威厳さえ漂う少女の風情。
しかし魔王の鷹揚な姿は小揺るぎすらすることなく、その心は
その眼差しは余裕に満ち、まるで背伸びするを幼子の繰り言の如く少女の言葉に聞き入っている。
愉悦に染まった微笑に、口の端を歪めながら。
そう相対するのがふたりにとっての暗黙の礼儀であるかのように、男は少女に対して傲岸不遜を以て応えと為す。
そうして、ふたりは距離は近づいてゆく。
あるいは、離れた心を縮めてゆく。
最早這いずるように不快な音は聞こえない。
鋼を打ち付けるが如き硬く重い禍つ響きが、低く静かに
一歩一足大きく鳴り耳に届く鐘の音が、少女に魔王の到来を刻々と告げていた。
「構わんさ。そのような瑣末事、お前が気に病む必要など全くない。人間の想いなど、過去の記憶など、所詮はその程度のもの過ぎんのだからな。そんなものは、心に刺さった棘でしかない。痛みと共にその存在を思い出す。ただ、それだけだ」
それはひとの想いには、思い出すだけで痛みを伴うということに他ならない。
「然るに元来罪というなら、お前はこんなものとは比較にならぬ程の罪業をとうに犯しているではないか」
ふたりの間に横たわる溝を埋めるように、男は少女へ語り掛ける。
「はて? わたし、他に何か悪いことをしましたっけ?」
少女は本当に解らないように、目を
「誰かに
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