第63話 高瀬一矢という音楽家から生まれた次世代の音楽
この世には知られざる人物、高瀬一矢という物凄い音楽家がいる。
日本の音楽環境から退き、海外の音楽にのめり込んでいた彼は元はパンクバンドをしていて、ひょんなきっかけからダンスミュージックを作るようになるのだ。
あの音楽会社、ファクトリーレコードの発足だ。
当時はカラオケ音源を主に制作していたが、会社は赤字続きで膨大な借金を抱えていた。
そんな時、金儲けのためにPCゲーム(パソコンゲーム)の主題歌を作ってみないかとメンバーに誘われた。
美少女ゲームの作曲屋だからという理由でI've(アイブ)というブランドを立ち上げ、その藁につかんでみたのだ。
後に泣きゲーと噂されたKanonというゲームで黒字経営になり、その後に提供したアニソンでも大ヒットを重ねて、日本武道館公演も果たし、高瀬一矢を初めとしたI'veの音楽制作集団はありとあらゆる曲を作り続けてきた。
そして今年の年末、活動開始から20周年を迎えたI'veがこれまでにないレアな曲ばかりを詰め込んだベストチョイスなゲーソンBOXアルバムのEvoxを発売した。
待ち望んだ原曲ばかりの音楽の詰め合わせは新旧のファンの耳を大いに唸らせた。
I'veの音楽戦略はマニアックだ。
ゲームの特典として音楽CDを抱き合わせで売ったり、コミケというイベント限定でアレンジCDを売ったり、最近はゲームではなく、オリジナルの曲作りも手掛けているが、一般の音楽ショップでは流通していない物もある。
普通には聴けない大人な音楽の一種なのだ。
そんなI'veの魅力とは何か。
イントロなどで流れるピアノのメロディと、安定感のある四つ打ちに、海外の音楽界で主流のトランスをきらびやかに混ぜ合わせ、ずば抜けた歌い手のボーカルとJPOPくさいハモりを入れる。
そのI've Soundという独自のサウンド性を秘めた音楽は時にロックに電波にアニソンと走り、20年間一度も活動を止めずに現役を続けてきた。
高瀬一矢。
北海道のI'veスタジオで活動をしている彼が東京に顔を出すと妙に神格化され崇められる始末。
照れ屋の彼の作る曲は他のメンバーとは違った異色なサウンド。
彼は単なる打ち込みではなく、細かいサウンドの破片を散りばめた名曲ばかりを生み出してきた。
今回、このBOXを聴いてみて、様々な経験を重ねて積み上げたI'veとしての音の歴史というものをひしひしと感じる。
実際、私はPCゲームはやったことがない。
ゲームを経験済みの人達からはエロティックなブランドとも言われている。
そこでマニアックなイメージを未だに持たれているのも事実だ。
その誤解を解くために開かれたI'veにしなければと高瀬さんは言っていた。
そもそもこんな天才メロディメーカーな方が悩んでいるのだ。
音楽家という者も常に大変である。
I'veはこれからもどのような道を行くかは分からない。
でも来年には久々のコンピアルバムを販売することを発表している。
このゲーソンBOXを引っ提げて、I'veはこれからも走り続けるに違いない。
私も一ファンとして見守っていくしかないのだ。
I'veよ、音楽シーンの伝説を塗り替えろと……。
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