第61話 メガデスは永遠に色あせない

 メガデスというスラッシュメタルバンドがいる。

 アメリカでBIG4と呼ばれる大物バンドの一つだ。

 BIG4では一番遅い加入だが、活動は三十五年を迎えても精力的に活動をし、最新アルバムも次々とリリースしている。


 今だからこそ、幅広い年齢層に大人気のこのバンドだが、実は過去に凄まじい出来事を繰り返していた。


 しかも問題を起こしていたのはバンドリーダーのデイヴ・ムステイン(ファンの間では大佐と呼ぶ)だった。


 いつも酒に酔い、暴動をして、気に入らない相手とはとことん喧嘩する。


 彼は昔から精神が不安定な面もあり、酒の他に薬物にも手を出していた。


 そんな影の部分があった彼だったが、光も見えていた。

 

 10代の頃から親元を出て、ギターを片手に自作の作詞を歌い上げたその突飛とっぴ出た才能には、あの大物バンドのメタリカも目に付けていた。

 しかし、メンバーに採用されたのは良かったが、メタリカの中でも問題を起こし、急遽解雇に。

 そのメタリカに復讐しようとバンドを立ち上げたのがメガデスである。


 当時のメガデスはとにかく激しかった。

 速すぎて狂った演奏スピードと複雑的なギターリフに攻撃性のある歌詞をさらけ出し、いかにしてメタリカを越える作品を作れるか、その憎悪心が浮き彫りにされていた。


 だが、所詮しょせんは大御所に叶わず、ドラッグやアルコール依存問題、バンドでの人間関係、音楽性のキャッチーさ、日本武道館演奏中止、大佐自身が腕が麻痺してギターが弾けなくなるという色々な問題を抱え、解散までになり、一時期は闇のバンドとなった。


 でも物語はそこで終わりではなかった。


 メガデスは様々な困難を潜り抜け、再び黄金期のようなスラッシュメタルになりながら、ついにグラミー賞まで手に掴んだのだ。


 ──さて、メガデスの一番の魅力と言えば、バンドリーダーでもあり、作詞、作曲、ボーカルも務めるムステイン大佐だろう。

 彼がいないとバンドの曲が作れないし、何よりボーカルもできないし、ルックスもカッコいい。


 ギターを高度な技術で弾きながらスネ夫のように歌い、ソロの演奏も巧みで頼もしいリーダー。

 サウンドにも先読みのセンスがあり、いつ聴いても何年過ぎても音楽が古くさくなく、色あせることもないし、天才的な音楽構成で似たようなサウンドもほぼない。


 また、恋愛系の歌詞中心ではなく、地球環境、公害問題、人の悦楽や傲慢を描いた内容は様々な人の心を魅了した。

 メガデスは陰と陽の二つの天秤をバランスよく揃えた最高のスラッシュメタルバンドでもある。


 難点と言えば、研ぎ澄まされた音楽なので長時間聴くと疲れるくらいだろうか。


 ──近年、あのメタリカが自分らはスラッシュメタルではないと公言した。

 長年の思惑から解消された大佐はこれをどう受け止めたかは知らないが、今日も元気に音楽活動をしていることは幸いだ。


 平和を売るのさ。

 でも誰が買うんだい?

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