第57話 小学校の給食時間に流行っていたイベント
あれは小学生の頃だった。
私のいた学校は給食制度があり……って、ちょっと何を勘違いしている?
休職ではない、給食だー。
だあー、だあー、だあー!(山びこ)
まあ、そこの椅子に座って私の話を聞いてくれ。
──その給食で早食い競争というものが流行っていた。
首謀者は給食大好き、早食い男。
背はそれほどなかったが、横に大きくお腹が伸びており、俗に言う肥満体型。
『食は地球を救う』をワードかの二十四時間テレビでも大活躍している男子だった。
パズルゲームのスーパーぷよぷよが強いったらありゃしない。
そりゃ、二十四時間も同じ内容のテレビゲームしていれば誰だって強くもなるさ。
しかし、いつ寝てたんだろうな。
ゲームライターあるあるの椅子寝かな。
パイプ椅子同士を引っ付けて、それに寝転がっておやすみなさい、すやーみたいな。
疲れはとれないみたいだけど。
──それでもって、その男子は挑戦者を探していて、偶然にも私と目があった。
「オマエ、カレーモ、シチューモ、ノミモノッテシッテイタカ?」
こうして私はその宇宙人言葉の男子に目をつけられ、一週間限定で強引に競技に参加する羽目になった。
──給食がみんなの机に行き渡り、担任と生徒の声で『いただきます』の声が上がる。
みんな、食の恵みに感謝して。
今思えば泣ける話じゃないか、寅さん。
そう私が食べ始めた瞬間、相手は白ご飯に牛乳を注ぎこんだ。
いや、白米にぶちこんだといった方が正しい表現か。
その男子は牛乳の混じったご飯をサラサラと胃袋に流し込んでいく。
おい、この牛乳生ぬるいんだけど、お客さんマジっすか?
僕が動揺しながら、食事をしていると男子は次々っとおかずを平らげ、あっという間に完食してしまった。
その時間、1分20秒。
男子は『オッシャー!』というかけ声と同時に僕の方を振り向き、勝者の貫禄に浸っていた。
『よく噛んで食べなよ』と今の私がその場所に行けたらそう伝えたい。
今どき、大食い番組でも咀嚼をしないとアウトだからね。
それから次の日もその次の日も男子からの挑戦は続いた。
王者の尊厳、いや、猿の威嚇のつもりだったのだろう。
一週間という間柄で男子はひたすら飲んで飲みまくった。
(いや、噛めよ)
私は一勝もできなかった。
その男子は早食い王の名の元に、日々チャレンジャーを探し、給食時間を楽しんでいた。
──あれから数十年が過ぎ、その彼と再会した。
私は出会って間もなく、『早食いの調子はどう?』と尋ねてみたところ、
『おいおい、冗談はよせよ。
食事って味わって食べるものなんだぜ』と笑っていた。
あの頃はみんな若かった。
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