第45話 小説を書くようになったきっかけ(1)
私は小説を書く以前は作詞を学んでいました。
作詞作業の傍ら、時には仮のメロディーに言葉を乗せ、プロの作詞家さんとも色々交流を深めていました。
小さい頃から文を綴ることが好きだった私は音楽も好きであり、自分の作った作品が音楽になったら楽しいだろうなと思っていました。
初めは楽器を学んでみようと思っていましたが、近所に練習できる場所がないことから断念し、偶然、チラシで見かけた作詞講座というものに心が牽かれました。
その内容は受講料を払いながら、作詞専門の書籍に毎月自分の作品を投稿して、ライバル達と腕を競い合うという内容でした。
しかもその書籍はプロの音楽家さんが音楽のネタ探しなどで目を通している書籍でもあり、そこから作詞家としてデビューできるという夢のような企画でした。
これを機会に私もやってみよう。
そう望んで送られてきた専用の原稿用紙に想いを馳せる日々。
毎月、最低でも一作投稿という約束ごとを胸に秘めて作品を描いていきました。
作詞でも約束ごと、決まりがあります。
一つのメロディーには限られた字数制限があり、しかも息継ぎのタイミングに合わせて、歌詞を載せないといけない部分。
そして、音楽家さんの要望に合わせたテーマに仕上げること。
作詞だからと自由には出来ないんです。
私はそのルールを理解しながら次々と作詞を生み出しました。
楽しいが半分、苦しみが半分以上でした。
文章製作に魅力を感じ、自分で良かれと思ってやっていた作業に初めて苦痛を感じたのです。
どんな楽しいことでも辛さも抱えながらやっていかないということ。
どんなことでもそれで生活するとなると、今までの常識が通用しないこと。
これまで自分の自由な解釈でやって来た行為が裏目に出ました。
例え、好きなことでもその道のプロになるということは大変なことだと思い知らされました……。
それから月日は流れ、初めての秀作の作品。
初めてとれた賞であり、私の心は嬉しさで弾んでいました。
その日は少しだけ贅沢をして美味しいご飯をいただきました。
……ですが、評価はそれ止まりでした。
私の作品は秀作以上には上がらなかったのです。
私は悩み苦しみながら作詞を書き続けましたが良作に恵まれることはなく、三年という作詞活動にピリオドを打ちました。
今、思えば、作詞を続けていたらデビューのチャンスが合ったかも知れません。
でも作詞をしながらも私の片隅はある掲載により、心が揺れ動いていました。
歴代の作詞を綴った小説の発売、その本を読んで書いたレビュー。
私の即席で書いたレビューは瞬く間に作詞の雑誌に掲載され、好評の烙印を推されたのです。
あの時、思いました。
同じ物書きなら小説を書いた方が良いのではと。
こうして私の小説という物書きとしての人生が始まろうとしていたのです。
物語は始まったばかりです……。
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