第114話あんた、反省ばかりしてても私を楽しませることはできないよ(言われなくてもあなたのためにしてるわけじゃありません)

 とはいえ、いつまでもこうしてはいられない。

 わたしがなにもしなければ、きっとなにもかわらない。

 ただ待っているだけじゃ、ずっとこのままかわらない。

 

 わたしがなにかしなければ、このはかえられない。

 ただでさえ嫌なのに。

 初めて遭ったひととふたりきり。

 だっていうのにそれに加えて。

 手札のわからない相手と一対一。

 そしてよりにもよってその相手が。

 なのをしたいかわかっていても、怪物がヤる気満々。

 もう、これ以上も以下もないくらい最悪だ。

 いまさら思い返しても遅いけど、全部最初が肝心だった。

 最初が一番大切だったのに。

 この最悪の状況を避けられる、そのための手段はいくつかあったはずなのに。

 最善なのは、もう最初っからこのひととは出逢わないこと。

 このひとと出逢わなければ、いまごろわたしは家に帰って晩ごはんを食べていた。

 そうなっていればどれだけよかったことか。

 けれどそうはならずに、いまこんな無惨なことになっている。

 それはわたしが失敗したから。

 ホントだったら次善としては、このひとに声をかけられたとき逃げるべきだった。

 そこでわたしはしくじった。

 自分に驕りがあったのはわたしのほうだ。

 このひとを侮っていたのはわたしだった。

 魔法少女になったからって。

 ちょっと何回かお仕事がうまくできたからって。

 絶対に、忘れちゃいけないことがあったのに。

 この世界は

 その油断と慢心とこころのスキが、わたしを

 、振り向いてしまった。

 そこにいたのはどんな怪異も妖怪変化も裸足で逃げだす、とびっきりのけもので怪物。

 それにわたしは呑まれてしまった。

 呑みこまれて、失ってしまった。

 最悪のなかに残っていた最後の手段。

 

 ホントは虫唾がはしって反吐がでるほど嫌だけど、背に腹はかえられない。

 けどそんなことは言ってられない。

 わたしのどんな気持ちでも、わたし自身にはかえられない。

 わたしがいき伸びるためだったら、そんなものは

 助けを求めているのが、きっと誰かが助けにきてくれるだろう。

 あとは野となれ山となれ。

 そうして助けにきてくれたを巻き込んで、盾にでも囮にでもすればいい。

 そのあとわたしの知ったことじゃない。

 自分のためにはなんでも使って、とことんまで遣い潰して、どんなふうにでも利用しなさい。

 自分自身を守るためときには、そうするように教わった。

 なのに、わたしはその教えを活かせなかった。

 ホントに最悪な状況になったとき、やるべきことができなかった。

 一番最初に遭ったそのときに。

 後ろから声をかけられたあのときに。

 

 その最悪のなかの最低な最後の手段はあっけなく潰された。

 そしてこのひとに先手をとられてしまったそのときから。

 わたしは後手にまわって

 このひとがわたしに初めましてとくちにするずっとまえ、始めからわたしは詰んでいた。

 だからといってこのままじゃなにも始まらない。

 このひとから動く様子は全然ない。

 だからわたしから動かないと、この最悪はずっとここに固定されたままだ。

 だっていまこの場には、

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