第98話わたし、魔法少女になりました そのごじゅうご(わたしの意志ではそんなこと思ってません)

 わたしは、どこか間違ったことをしているの?

「そうだよ」

 わたしって、なにかおかしなことをしているの?

「うん、そうだね」

 わたしがミドリに想ったことは、そんないけないことだったの?

「だから、さっきからそうだって言ってるじゃない? けどよかったね、おめでとう。これで二度目だね。まあ一回やったら二度も三度もかわんないよ。だからあんまり気にしないほうがいいよ、。だけど、ヘンだよね。普通のひとなら最初におかしいって気づくよね? まともなひとなら間違ってるってわかるよね? 、こんなおかしな間違い繰り返したりしないよね? おんなじことを、何度もやったりしないよね? でもそれをやっちゃうのがわたしだもんね? それができちゃうのがわたしだもんね? だったらもう、どうしようもないよね? むしろさすがはわたしだって、自分で自分をほめてもいいくらいだよ。。だったらわたしくらいは、わたしのことをほめてあげるよ。どこにいっても、誰とかかわっても、なにがあっても関係ない。ただ自分のしたいことだけをできる限りやりたいだけやる。どこまでもかわることなくどんなふうにもかわれない。そうやって、どんなことでもおんなじ結果をやり直す。そんなこと、。だからわたしは、おんなじことをわたしに言うよ。。やっぱり、

 そんなわけないでしょ。

 結局なにが言いたいの。

 こんな毒にも薬にもならない無駄なことをしゃべっておいて。

 

 言葉の最初にけなしておいて最後の最後にそんなこと言われても、反応に困るだけなんだからね。

 だいたい自分で自分をほめるだなんて、そんなの虚しいだけじゃない。

 そもそもわたしにわたしのことを言われても、全然ちっとも嬉しくない。

 だって、おんなじことじゃない。

 それにわたしはいつからこんなにおしゃべりになったんだ。

 わたしの目は緑色じゃないんだぞ。

「そんなの自分でわかってるくせに。どうしていまさらわたしに訊くの? わたしはかわらないしかわれない。だからわたしはずっと前からこんなだったでしょ? ただとっても内弁慶だっただけ。だってひとと話すのはおっかないもんね。なにを言えばいいのかわからないし、なにを言われるかもわからないんだから。それでもなにかを言われたときに、わかっるけどね。だから余計に? だから自分のあたまのなかだけで、自分のこころのなかでだけ、言いたいことを言っていたんでしょう? だからなにを言われても、嬉しく感じないんでしょう? だってわたし、ひとからほめられたことなかったもんね。でもそんなの当たり前だよ。をほめてくれるひとなんて、この世界にいるわけないもんね。それを思い出してくれただけでも、わたしがしゃべってた意味はあるよ。それにそんなこと言うのなら、毒も薬もおんなじものじゃない。まあどっちもわたしにはきかないけどね。あ、そういえばだけはわたしのことをほめてくれたっけ。そういう意味でもやっぱりアレはひつようだよ。だから、ね?」

 だからだからとしつこいな。

 そんなに間違ってることなのか。

 わたしはミドリをこころから大切だと思ってる。ホントに大事な存在だと思ってる。

 そんなにおかしいことなのか。

 わたしにミドリが必要なのはあたまではわかってる。いなくなるとホントに困るのはわかってる。

 それ以外にもいろいろあるけど。

 それがそんなにいけないことなのか。

 ひとりの相手にいくつも想いを向けるのは。

 いまわたしのしていることは、? 

「悪くはないよ」

「でも、それはダメだよ」

 ダメって、なにがダメなんだ。

、それはダメなんだよ」

 ……別に、わたしはそんなこと思ってない。

「そんなわけないでしょ」

「ひとから愛されることはしあわせだと思ってるくせに、そんなこと思ってないなんてあるわけないよね?」

 それと、これとは……。

「誰だってしあわせになりたいもんね? もちろんわたしだってそうだよね? ?」

 だったら、だったらなんでわたしはダメなのさ。

「だって、ひとは好きじゃないから」

「ひとが好きなのは真面目な想い、本気の想い。何より。ひとりの相手をただひたむきに、でただいちずに想い続ける。そういうのがひとは好きなんだよ。だから、わたしはダメなの。そんなだから誰にもほめてもらえなかったんだよ。だって

 それは、ちが……。

「それにね」

「それにひとりの相手にいくつも想いを向けてその全部に応えてもらうとするなんて、ムシがよすぎる話だと思わない?」

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