第18話わたし、魔法少女を愉しんじゃおうと思います(やることやれば構いませんよね)

 わたしはわたし。

 わたしの名前は満映他こいしみちばたこいし|。

 他の誰でもなく、他の誰かであるはずもない。

 のわたしだけ。

 自分だけのわたし自身。

 わたしはそれを、決して見失うことはない。

 わたしはをれを、絶対忘れることはない。

 だから。

 わたしは自分の思うがままに。

 わたしが自身の感じるままに。

 ただ、わたしがそうであるように。

 そのまま、わたしのやりたいように。

 間違った悪しきものとして。

 あるがままに、わたしのままのやり方で、魔法少女をやればいい。

 こんな、わたしという魔法少女を。

 そんな、わたしだけの、魔法少女を。

 わたしらしい、わたしとして。

 そして。

 間違うことなく。

 正しいことをして。

 ちゃんとした、魔法少女になればいい。

 魔法少女として、わたしらしく。

 だったら。

 せっかく、なれたんだから。

 どうにか、やれるんだから。

「だったら、、別にいいよね?」

「好きなようにしていいよ、やることさえやってくれれば。魔法少女としての仕事をね。それならボクのほうに、文句なんてあるわけないよ」

 文句以外は、何でも好きなように言うくせに。

 でも、それなら丁度だね。

 いい言葉だよね、お互い様。

「じゃあ、好きなようにやらせてもらうね。魔法少女のお仕事を」

 それこそが、わたしのやりたいことだから。

 わたしはそういうことをする、魔法少女なんだから。

 わたしはそういう、魔法少女、なんだから。

 わたしがいままでどういうことをしてきたか、それはあいつらもわかってる。

 穴の真ん中に積まれたが何なのか、それを見れば、すぐわかる。

 わたしがこれからどうするつもりか、それもあいつらはわかってる。

 もう残り少なくなったあいつらが、チラチラ視線を送りあっているのを見れば、すぐわかる。

 それでも、お互い距離を開けたままでいる。

 だけど、お互い目の届くところに必ずいる。

 だからといって、手を届かせる気はまったくない。

 手を伸ばす気も、手を結ぶ気もまったくない。

 それはここまで見てきたから、もうわかってる。

 そのさんざんな結果のありさまが、あの、ゴミの山なんだから。

 それなのに、どうしてあいつらは、

 お友だちが、にされるのを、見ていたはずなのに。

 自分たちも、にされるのが、わかってるはずなのに。

 あのゴミの山に、仲間入りするだけなのに。

 お友だちと一緒に。

 それなのに。

 なんでこんなにも、やる気がないんだろう。

 どうしてここまで、生きようとしないんだろう。

 ここで諦めたら、人生終了するだけなのに。

 諦めちゃえば、人生終了、できるけど。

 死んじゃうけど。だって、わたしが殺しちゃうから。

 そこまで思ってから、ふと、全然違うことがわたしの頭をよぎった。

 もしかして、ここがあいつらの終点なんじゃないか。

 なんでこの世界に来たのか、どうやって来たのか、何のために来たのか知らないけど、これ以上行くところがないんじゃいか。

 あいつらがから逃げださないのは、もうとっくに逃げてるからだと、現実から逃げてるからだと思ってた。

 現実から逃げ続けてるからだと、思ってた。

 でも、それだけじゃなく、にあいつらにはもう、がないんじゃないか。

 逃げて逃げて逃げ続けて、その最後の行きついた行き止まりが、いうんじゃないだろうな。

 ここがわたしたちの世界があいつらにとって、だと、いうんじゃないだろうな。

「で、どうなの?」

 わたしは答えが返ってくる前に、質問だけを訊いてみる。

 思ってるだけで答えが返ってくるなんて、そう考えればかなり便利なんだけど。

 それでも言葉にしないとね。ほとんど全部端折ったけど。

 それに、だんだんこの緑の目との、会話の呼吸がわかってきた。

 だから、どういうふうに答えるかも、何となくわかった。

「うん、ほとんどキミの思った通りで間違いないよ。他にもいくつも例外や特殊な案件もあるけれど。今キミの目の前にいる、今迄キミが殺してきた、これからキミが殺そうとしている、キミの言うところの、〈エゴグラム・クオリアみている世界が違うもの〉は、まさにその典型だね。自分たちの世界が嫌になって、この世界に逃げてきたんだ。そして

 やっぱりの答え方だった。

 でも、そんなことより大事なことを、なんかさらっと言わなかった。

「えごぐらむ・くおりあ? それがあいつらのホントの呼び方なの?」

「まあ、一応ね。を、ボクらは便宜上そう呼称してるから」

「っで、その自分たちの世界から逃げてきたっていうエゴグラム・クオリアが、あいつらなの?」

「さっきも言ったけど、個体によって様々なケースがあるから一概には言えないよ。でもあいつらは確かに〈エスケープ・クラス逃げ落ちたもの〉だね。。だって」

「だって?」

「弱いから」

 そのひと言で全部が説明ができたみたいに、そのひとつだけが全部の原因みたいに、、緑の目は揺らぐことなく落ち着いて、そして珍しく簡潔に言葉にした。

「それで、そんなやつらが来たの?」

 なんで、そんなやつらがわたしたちの世界に来たの。

「それも個体によって理由も動機もだけど、の場合は、この世界なら好きなことができると、勝手なことをしてもいいと、と、思ったからじゃないかな。自分の世界で出来なかったことの全てを」

「へーそう、

 わたしは右手を握りしめ、左手でエグイアスを担ぎ直す。

 だとしたら。

 それが、ホントだとしたら。

 

 おまえたちを殺す理由が、殺さなきゃいけない理由が、殺していい理由が、何より殺したい理由がまたひとつ、増えたんだから。

 愉しむ理由が増えたんだから。

 おまえたちが、自由になってこの世界で、好き勝手にするっていうのなら。

 わたしも、おまえたちを思うままに、やりたいようにやってもいいってことだよね?

 これで丁度、ってことで、いいんだよね?

 だから文句なんて、言わないよね?

 言っても二度目はないからね。

 そんな、わたしがバチンと、やるだけだから。

 そんなことを言ったやつも、どんなことを言ったかも、全部まとめてこの世界から、なかったことに、してやるだけだ殺し尽くして、やるだけだ

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