第24話 悪魔だろうとぶっ殺して差し上げますわ

のんびりお話ししている時間はありませんでしたわ。

完璧に油断していました。

まだ視覚出来る範囲にはいらっしゃいませんが気配だけは数え切れないほどあります。

恐らく一気に攻める為に距離を取って獲物である私達の馬車を狙っているのでしょう。

いくら結界が張れるからと言ってこれだけのタイガーファングが近付くと御者やお馬さんが怯えてしまい、到着が遅れてしまいますわ。


「第二王子様、現在この馬車半径1キロにタイガーファングの群れに囲まれて居ますわ」

「なんだと?それは面倒だな…結界で対処出来ないレベルなのか?」

「いえ、この馬車には既に結界も不可視化の魔法をかけていますので今襲われても結界にぶつかるだけですので問題は無いと思いますが…この私の不可視化の魔法を探知してしまうとは、もしかしたらタイガーファングだけでは無いのかもしれませんね」

「それはタイガーファングを使って意図的に誰かが狙っていると言いたいのか?」

「ええ、そうですわ」


二つのパターンがあり、タイガーファング自体が私の不可視化を見破る探知魔法かスキルを持っていて私達を狙っているか、

誰かがタイガーファングを操り私達を狙っているか。

前者のパターンは低い。

理由はタイガーファングは魔法を得意としない魔獣で探知魔法をあれだけの量のタイガーファングが覚えているとは思えないし、スキルも同じくですわ。

スキルなら数匹は持っているかも知れませんが今回はおおよそ1000匹ぐらいに囲まれているのですもの流石に全匹持っている事は無いですわ。


でも、明らかに全員スキルを持っているのでは無いかと思ってしまうほど綺麗に馬車は囲まれて居ますわ。

それが操られていると思ってしまう理由です。

馬車をまだ襲わないのはまだボスからの指示が無いから襲わないのではないでしょうか?

野性のタイガーファングならもう既に襲っていてもおかしくなさそうですけれどまだ襲われてないからそう言う事なのかと思います。


まあ、自主的だろうと操られていようとこの数で襲われたら結界があるけど溜まったものではありませんけどね。


さて、どうしたものか。

不可視化を見破られても結界があるのでタイガーファングが1000匹襲ってこようと結界はビクともしないのですが、馬車が血生臭い匂いになって王宮に向かうのは臭いのでとても嫌ですわ。


と言うことは私のやる事は一つですわね。


私は馬車の扉を素早く開けて馬車の上に飛び乗り、魔法の準備を始めましたわ。


「お嬢様!!!何をなさるおつもりですか!?馬車の上は危険ですので降りてください!!!」

「お、おい!!そうだぞ、ルーティー!!危ないから降りて来い!!お前が怪我をしないか心配だ!!」

「二人とも私はだいじょーぶですわー少し魔法をかけるだけですのでー」

「お前の魔法が優れているのは知っているが危ない真似は辞めてくれ!!!結界だけでも回避可能なら無理しなくてもいいじゃ無いか!?タイガーファングが来たら私が対処するからルーティーは無理しないでくれ!!」

「あらー第二王子様ともあろうお方がそんなに日和るとは思いませんでしたわー私は大丈夫ですので残党が出た場合の対処をお願いしますわー」


さぁ、魔法の準備が出来ましたわ。

最近開発したばかりの魔法だから少しドキドキしますが、きっと大丈夫でしょう!!


–トゥルーデス–


私が魔法を唱えた瞬間、周りに居たタイガーファングの大群の叫び声が聞こえ、生命反応が無くなりました。

どうやら成功した様ですわね。

トゥルーデスはその身体に触れる事なく敵を死に至らしめる魔法です。

原理は闇の霧を発生させ、闇の霧で辺りの酸素を取り除きそのまま呼吸出来なくなり敵を殺してしまいます。

元々は真空を作る方法を研究する過程で産まれた魔法ですがなかなかの効果を発揮してくれましたわ。

王宮に着いたら研究ノートに記載しなくては…

魔法を使用して、再び探知魔法を掛けても生体反応が確認出来ませんでしたので恐らく全員やれたでしょう。

再び馬車に戻り、中に居る二人に説明しました。

結界を張り続けていた屋敷から出てしまったので、もしかしたら今後この様に誰かに狙われる事が増えるかも知れませんわね…


例の悪魔にバレてしまいましたかしら?


まぁ…その時は…


「悪魔だろうとぶっ殺して差し上げますわ」



****




此処は打って変わって静かな森の中。

小さな小屋に一人の男性が佇む。


『くっくく…流石はルーティー…こんな事じゃ相手にもしてくれないか…』


『でも、そうこなくちゃ困るよ…』


『あぁ、愛しのルーティー…早く会いたいなぁ…』


『会ったらいっぱいいっぱい…殺し合おうね?』


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