第5話 まだ言ってたのかあのオッサン

転移魔法で私はルーチェ商会の2階にある執務室に転移しました。

自分で言うのも難ですがシンプルで作業効率を上げる為の部屋の作りはしましたが所々に私のお気に入りの調度品で飾られた部屋は品があり、心を落ち着かせるのには丁度いい部屋になっています。

一部を除いては…

まぁ、そこは置いといてください…

あの腐海も私に取っては大切な研究スペースですので…

研究は私の生き甲斐だからあのゾーンは無くてはならない大切なスペースなのです…



そこから一階の店舗部分に向かいました。

そこには涙目の副会頭と店員たちが話し合っていました。

「皆様ご機嫌様、何かトラブルがありましたか?」

「ルーティー様!?お待ちしておりました!!」


なんなのでしょうか?

私の周りはお馬鹿さんだらけなのかしら?

ルーチェ商会の副会長を任せているウィルソンが涙目で私に抱き付かんばかりの勢いで擦り寄ってきました。

勿論、殿方と抱き合うなんて未婚の乙女には御法度ですので華麗に避けました。

それに殿方とぶつかるなんて痛い事するのは嫌ですわ。

ウィルソンは避けられた為に激しくコケて床に顔を打ち付けていました。

あらあら、痛そうねー可哀想にー(棒読み)

でも、蔑む顔や冷ややかな目線を与えてはいけません。

喜ぶだけですから。


副会長のウィルソンは、言動はただのお馬鹿な変態ですが仕事は出来る殿方ですの。

ただ少し気弱でちょっと天然でドMな眼鏡っ子なのです。

たまにわざと鈍臭いミスをして私を困らせる事をしますがこの様な周りが大慌てするようなミスをする様な殿方では無いのですが、本日は何をやらかしたのでしょうか?

聞いてみないと分かりませんので静かに返答を待つ事にしました。


「本日マイスタン商会の会頭が此方に来たと思ったらまた『お前の所で販売している【マヨネーズ】のレシピを我が商会に無料で譲れ!!この店の会頭はウチの息子の嫁だぞ!!ワシは義父に当たるのだぞ!!その権限がある!!』と喚いて来ました…流石に権利の話になると僕ではお話出来ないので会頭に確認してからお返事させて下さい。とお伝えしたのですがしつこくて…あまりにもしつこかったので思わず憲兵隊に連絡してしまいまして…ルーティー様にご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません…」


まだ言ってたのかあのオッサン…おっと暴言失礼しましたわ。

あのお義父様はいろいろ勘違いされており、ルーチェ商会はスパニッシュ公爵家の持ち物と思っており、ルードヴィッヒ様が婿入りしたら全てが自分の物になるとでも思っていらっしゃるご様子。

まだ結婚もしていないですし、何よりルーチェ商会は私個人が副業で稼いだお金で出資して作った商会なのでスパニッシュ公爵家は一切絡んでおらず、私個人の商会です。

なのでスパニッシュ公爵家に婿入りしようが【ルーチェ商会】は一生手に入りません。

それなのに勘違いしているので、いつも『自分の物になるのだから好きにして良い』と勘違いして、横暴な態度を取ってくるのです。

その都度、憲兵隊にお世話になっているから憲兵隊にはいつも申し訳ない気持ちでいっぱいです。

お義父様のタチが悪いのは私が居ない日を狙って来るから余計にタチが悪い。

正面切ったら断られるのが分かっててわざわざ立ち場の弱い従業員だけの時間を狙うのです。

まぁ、従業員達はしっかり教育がなっていますので『マイスタン公爵と夫人又は愚妹が来たら直ぐに憲兵隊呼ぶ準備をしてください。』とお願いしているので大きなトラブルにはまだなっていません。

愚妹は私が商会をしている事は知りませんがもしバレたら絶対にめんどくさい事になる事が目に見えて分かりますので当然の処置です。


因みにマヨネーズとは私が開発したルーチェ商会オリジナル調味料の事を言い、現在他国にまでも人気なのです。

最近では女王陛下御用達の品として国中に知れ渡り、この商会でも品薄になっている程人気商品です。

また私のお店が儲かっているのが気に食わないのか、人気商品が出ればその利益を寄越せとせっついて来るのです。

勿論、企業秘密のレシピをあげた事などありませんが、いつもめんどくさいので親族割引で少しだけお安く仕入れさしてあげてるだけでも感謝して欲しい位ですわ。


本当に迷惑な親子だ事…


まぁ、私は婚約破棄されましたし、この商会は私が個人的に建てた商会なので実家にも関係無いので親族割引も無しにする旨を御手紙にしたためて送るとしましょうか。

またやって来るだろうが店員達には『知らぬ存ぜぬ、会頭に確認します』で対応して頂きましょうか。


実際レシピの版権は王国に提出しているのでこの商会の版権は全て私の物ですので勝手に持ち出しする事は出来ません。

2階の執務室には権利書やレシピ原本などが閉まっていますが普段は魔法で結界を張っているから泥棒や暗殺者すら入れません。


従業員自身は私が雇用している人に対しては信用していますが一度従業員の知り合いを雇用した時、情報が流失しかけた事もあり、念の為に従業員には全員契約魔法をかけさせて頂き『この商会に関わる物全てを口外してはならない。口外しようとした場合、その場で魔法が発動し、その場で気絶し全ての商会の情報は全て無くなる。』様にしていますので今の所情報流失はされていません。


何故こんな厳重に情報管理されているかと言うと…私には秘密がありますの。


私は前世の記憶を持ってこの世に産まれてしまった…所謂『異世界人』と呼ばれる存在です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る