第4話 いつになったら平穏は来るのでしょうか?
バタバタバタバタ…
またもや廊下から大きな音が鳴り響きました。
今度は先程よりも少し低く重たい音なので恐らく男性で…先程の事から考えるとお父様でしょうね。
私の安らぎの時間は来ないのでしょうか?
本当に今日は煩わしい事ばかり起きる一日ですわ…ため息しか出ません…
私が大きなため息を付くと部屋で暖かそうなコートを脱ぎながら私専属のメイド ユーリが「煩わしいのであれば扉の鍵を締めましょうか?」と尋ねてきた。
……いつの間にコートを着ていたのかしら?
考える事を辞めましょう…
「お願いするわ」そう伝えると速やかに扉の鍵をしめてくれた。
ユーリは昔から私のお世話をしている為、何事にも準備万端で対応するなかなか業の深いメイドですわ。
いつも私が魔法を使うタイミングで最善策を立てて回避する危機感知能力はとても優秀。
勿論、メイドとしての能力も優秀ですが、彼女の場合、他の能力もとても優秀なのです。
たまに此方が気持ち悪いと思ってしまう程優秀過ぎます。
「お褒め頂き光栄でございます。」
…………私なにも話して無いわよ?
私の心の中を勝手に覗かないで頂けるかしら?
「一介のメイドである私はルーティーお嬢様の心の中など読めません。」
え、また何も口に出してないわよ?
本当に怖いから辞めてくださるかしら?
長年一緒にいるせいもあるけど、彼女は生まれが暗殺者を排出する家庭で小さい頃から数多の暗殺術や相手の機微を読み取り懐に入るプロであります。
そして、何より彼女には【心眼】のスキルがありますので他人の心の中を読み取る事が出来ます。
偶には自重して頂きたいものですわ。
「反射的に読み取ってしまうものですので自重するのは難しいかと思われます。」
「もう分かったわ…扉を閉め」
「もう既に締めさせて頂いています。」
「あら、ありがとうございますわ。」
本当に怖いメイドを雇ってしまいましたわ。
選んだの私ですけどね。
暗殺者一家が撲滅されてしまい、奴隷として売られてしまった所を私が彼女を一目見て気に入り、購入しました。
今までいろんな暴漢や人攫いに狙われましたが彼女が居るお陰で私は今生きていると言っても過言では無いと思います。
裏ではマイスタン家の殺戮兵器と呼ばれているそうです。
あながち間違いでも無いので否定はしませんが、殺戮兵器ほど心の無い者でもありません。
主人である私を最優先に考えて、私を誰よりも大切にして愛してくれていると自負しております。
感謝しておりますのよ?
顔には出ていませんが耳が真っ赤になっているのできっとまた勝手に私の心を読み取って照れていますのね。
私の可愛らしい自慢のメイドですわ。
コンコンコンコンコンコン!!!!
扉を叩く音がノンストップで響き渡る。
折角いい気分でユーリの思い出話に浸っていたと言うのに台無しですわ。
「ルーティー!!!ルーティー!!!扉を開けなさい!!!居るのは分かっているのだからね!!!ルードヴィッヒ殿と婚約破棄を承認したのは事実か!?返事を聞かせなさい!!!」
とてつも無く五月蝿いですわね…
耳を抑えても聞こえるほどの五月蠅さに嫌気がさします。
私がまた大きなため息を吐くとユーリが話し出す。
「ルーティーお嬢様。扉を閉めても旦那様の扉をノックする騒音は消す事は出来ませんし、が如何しましょうか?」
「困りましたわね…三人もお馬鹿さんを相手にするのは疲れます…どうせ夕食になると顔合わせなきゃ行けないのですから今会う必要は無いのですが?」
「それでしたら、置き手紙だけ残し、転移魔法で商会に移動しては如何でしょうか?そう言えば副会頭が何かトラブルが有ったと先程ぽっぽーを使って連絡が届きました。」
商会とは私の趣味の品を取り扱う専門の商会『ルーチェ商会』の事を言います。
先程、少し話に出てきましたが私は趣味があり、いろんなこの世界に無い物を開発する事が生き甲斐で、新たに開発した物をいろんな人に広める為にルーチェ商会を設立しました。
気になる方もいらっしゃると思いますが、ぽっぽーとは副会頭の持つスキル【魔召喚】を使って召喚した鳩の魔物の事を言います。
ぽっぽーは見た目は鳩なのですが何分魔物ですので憲兵にバレると少し厄介なので街にいる時は出来るだけ人間を使って連絡のやり取りをする様にしていますが、緊急時のみ送る許可を出しています。
つまり、相当重大な時にしか使わない様に言っていたでしょうか?
それって結構大変な事じゃ無い!!
私は急いで御父様に置き手紙を書き、転移魔法で商会に向かった。
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