第21話

時は、10月21日の午前10時頃であった。


場所は、家の広間にて…


アタシは、白のブラウスとネイビーのジーンズ姿で赤茶色のバッグを持って家から出ようとしていた。


この時、義母がアタシの行く手をはばんだ。


義母は、つらそうな声でアタシに『どこへ行くのよ?』と言うた。


ほやけん、アタシは思い切りブチ切れた。


「のいてよ!!のいてよといよんのが聞こえないの!?」

「とし子さん、どこへ行くのよぉ~」

「はぐいたらしいシュウトメね!!のいてよと言うたらのいてよ!!」

「きょうは、小松崎さんの家に遊びに行くのよ…」

「ますますはぐいたらしいシュウトメね!!あんたらはひとさまの家になんで遊びに行くのよ!?」

「だから、ごはんを食べに行くのよ…」

「義母さま!!アタシはこれからユニクロへ行くのよ!!きょう入る予定のコが『彼氏が(レストランの)予約入れたから休ませてください…』と言うて勝手に休んだのよ!!ほやけん、急きょ来てくださいと電話で言われたのよ!!」

「だったら、アタシが電話してあげるから…」

「なんでいらんことするのよ!?」

「他にお願いできる人はいませんかとお願いするのよ…」

「ぶっ殺してやる!!」


(ドカッ!!)


アタシは、右足で義母を激しくけつって倒した。


その後、アタシは赤茶色のバッグを持って外へ出た。


アタシにけつられた義母は、つらそうな表情でつぶやいた。


きょうは、家族みんなで小松崎さんの家に遊びに行くのよ…


小松崎さんの奥さまが手料理を作って待っているのよ…


小松崎さんが新築の家を建てた時にお世話になったハウジング会社のことなどを聞くのよ…


とし子さんと麗斗に新築の家を持ってほしいから小松崎さんの家に遊びに行くのよ…


それからしばらくして、義父と義妹が広間に入った。


義父は、義母になにがあったのかと聞いた。


「どうしたんだ?」


義母は、つらそうな声で義父に言うた。


「とし子さんが、勝手にどこかへ行った…」


義父は、困った声で言うた。


「困ったなぁ…これから小松崎くんの家に遊びに行くのに…」


そこへ、ダンナがパジャマ姿で広間に入った。


義母は、ダンナに早く支度しなさいと言うた。


「麗斗。」

「なんぞぉ~」

「麗斗、これから小松崎さんの家に遊びに行くのよ…」

「その前に、話さなければならないことがあるんだよぉ~」


ダンナの言葉に対して、義父はつらそうな声で言うた。


「それだったら、あとにしてくれるかなぁ~」


ダンナは、怒った声で義父に言うた。


「今じゃないと話ができんのや!!」

「なんじゃあいよんぞ!!」

「おとーさんやめて!!」


義母は、義父を止めたあとつらそうな声でダンナに言うた。


「麗斗、きょうは小松崎さんの家に遊びに行くのよ!!」

「だから、小松崎さんの家になんで遊びに行くんだよ!?」

「ごはんを食べに行くのよ!!…とし子さんと麗斗に新築の家を建ててほしいから遊びに行くのよ!!」

「だから、なんで小松崎さんの家に遊びに行くんだよ!?」

「小松崎さんが家を建てた時にお世話になったハウジング会社などを聞くのよ…それを聞かないと困るのは麗斗なのよ!!」

「だから、オレはそのことで話がしたいんだよ!!」


義父は、ダンナにこう言うた。


「どういうことだ?麗斗、分かるように説明してくれ。」


ダンナは、義父母に説明した。


「オレ、来年1月1日付けで余戸の支店に転勤になった。」

「転勤…」

「ああ。」

「それで、どうなるんだ?」

「課長から親離れしろと命令された。」

「親離れしろと命令された?」

「だから、余戸の支店から歩いて20分以内の地域に移り住めと命令された!!」

「そんな…」

「住まいは、課長が用意してくださるマンスリーアパートへ移る…ただそれだけ…だから、新築の家は建てない…もういいだろ…」

「分かったわ…それじゃあ、新築の家を持つのはやめた方がいいわね…」


義母の言葉に対して、義父はあきらめ声で言うた。


「そうだな…40代後半で新築の家を建てた…それで35年のローンを組んだ…ローンが完済する時期は80代になる…それではしんどいだろうなぁ~他にも、家の修繕などでコストがかかるし…」


その時であった。


(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)


この時、ダイヤル式の黒電話のベルがけたたましく鳴り響いた。


電話は、義妹が出た。


小松崎さんの奥さまから電話がかかってきた。


「菊本でございます…ああ、小松崎さんのお宅ですね…」


このあと、義妹の表情が青ざめた。


「えっ?ゴハイリョネガイマス?…もしもし、ゴハイリョってなんでしょうか?…辞書で調べなさいって?」


(ガチャーン!!ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー…)


小松崎さんの奥さまは『ゴハイリョと言う言葉の意味を辞書で調べなさい!!』と義妹に怒鳴りつけたあと、ガチャーンと電話を切った。


なんで…


なんで辞書でゴハイリョを調べなきゃいけないの?


義妹は、ますますコンワクした。


義父は、困った声で義妹に言うた。


「小松崎くんの家から電話があったのか?」

「うん…奥さまが『辞書ひいて調べなさいよ!!』と言うて、ガチャーンと電話切った…」

「辞書ひいて調べなさいよって?」


義妹は、し烈な声で義父を怒鳴りつけた。


「おとーさんは人にハイリョする気持ちがないのかしら!?おとーさんがしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく小松崎さんに『遊びに行ってもいい?』と頼んだことが原因で小松崎さんが怒っているのよ!!」

「それはだなぁ~」

「うちら過疎が小松崎さんの家の新築祝いのパーティーに行ったのがいかんのよ!!おとーさんはサイテーね!!そんなに小松崎さんの新築の家がいいのであれば、この家から出て行ってよ!!」


義妹は、義父を怒鳴りつけたあと自分の部屋に逃げ込んだ。


義父は、つらそうな表情でつぶやいた。


ワシは…


きちんと人にハイリョしているんだよ…


小松崎くんの家にリョウショウは取ったのに…


なんで、怒られなきゃいかんのだ…


結局、家族たちは小松崎さんの家に遊びに行くことができなかった。

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