第36話
被疑者、ハタノミカ、19歳、身長170センチ、やせ型、髪はクロ、腰までの長髪、現在の服装は不明、危険度S級、射殺許可発令中、繰り返す、射殺を許可。
……訂正、即時無力化。
深香の抹殺を意志する命令が中空を電子信号として交錯する。
こういうとき、例えばアクション映画とかだと、全力で危険走行かまして無意味に警らなんかの眼を引いて、しなくていいはずのカーアクションカーチェイスを画つくりの為にさせられたりして。しかし一介のタクドラにはスピンターンどころか4輪ドリフトすら知識はあっても技量は無く、出来ることはひたすらの安全走行運転、それこそ違反キップを切られないよう、一般車と関わらないよう、確実着実に移動する。
信じられない事態が出現していた。
警察が、自衛官が検問を敷き一般車、一般国民の困惑、怨嗟、クラクション、一切ガン無視して抵抗即射殺の構えで取り調べを遂行している。マジか。どこのクーデーター日常の三等国の光景だよ?! 当然にして長蛇の大渋滞。ようやく越えたと思って少し進むとまた検問。あーもう何がなにやらのろのろのろのろ進んで止まって、笹目橋、二時間掛けて荒川を越え、野を越え山越えコンクリートジャングル、ただでさえ酷い週末都内を搔き分けかきわけどうにかこうにか深香から受信した毒デンパ、目的地、代々木公園近くにたどり着いたのはもう翌日早朝深夜。
さて、と辺りを見回すと。
一匹の三毛猫と眼が合った。
三毛は雑踏を機敏にするりと抜け屋根に飛び乗ると、
かりかりと助手席の窓に爪を立てる。
まさか、
まさかな。
呟きながらしかし確信と共に太郎が身を乗り出し歩道側、助手席のドアを少し開いた隙間を勿論と三毛は身を躍らせ助手席にぴたりと舞降りると、ぶるっと身を振るわせ太郎に顔を向けにやりと不敵に笑いそして、深香になった、とうぜんの顔で。
いまさらもう驚かない、却って安心。
出迎えご苦労、と深香は、漆黒の戦闘服様の装い、武装SSの戦車服のレプリカらしいそれ、ご丁寧には軍帽まで被った庇に指を添え色気のある敬礼で足労に謝しざま両手で、うわ尊い貴過ぎるぜこれぜった後で激写額縁永久保存俺のリアル嫁深香なぞ劣情だだまくりのその太郎の顔を抱きかかえそのまま舌を入れて来て、唱える。いつか、出会い間もない思い出の詔、いや少し違うか、太郎の男は怒張し血は滾り身体をねぶり意識は白く、輝き、深香の音声はいよいよ高く澄渡り車内を満たし太郎包み震わせ波が、快、不快、快、高まり、深香と溶け合う、登り詰めてゆくその先に更にまばやく輝く、
此久出伝婆天都宮事以知氐 天都金木乎本打切里
末打斷知氐 千座乃置座爾置足波志氐 天都菅麻乎
本刈斷末刈切里氐 八針爾取辟伎氐
天都祝詞乃太祝詞事乎宣礼
速須佐之男命、
須佐之男命、
素戔男尊、
素戔嗚尊等、
須佐乃袁尊、
神須佐能袁命、
須佐能乎命
建速須佐之男命、
まへる・しゃらる・はし・ばず
へ、と太郎は間抜けを発した。
まへる、いや、それは、
ごん。
がん。
頭に、体内に響く轟音に太郎の意識は潰える。
その実ほんの数刻のようだ。
頭を振って気分を、
無意識動作が起こらない、
身体が重い、
なんだ、これは。
隣、いや、
コマンダーズシートで発する深香の発声を音声信号として太郎は知覚する。
なに、これ、なに、これ。
太郎は手近な監視カメラをクラックして、自身の外観を確認した、その時点でもうお察しだが。
その感覚は、敢えて表現すると、見えない透明な手を街頭の監視カメラに伸ばし、その手が細かい糸に、ファイバーケーブルの様なそれはカメラに侵入ししかも、そのケーブルの先端には無数の眼が存在し、カメラの構造を一瞬で理解、把握するとそのカメラの命令系統を掌握乗っ取り、と……実際にはパケットの制御まで一つ一つ自身の能力、統制下に制御は進行したのであるが、言語化ましてこうしていまさら日本語として書き下すのは気がとおくなる、つまり監視カメラが常時ストレージに伝送している画像、動画情報の1コマをインターセプトして手元に戻り、開いて見た、ということになるふう。
実際に太郎が自覚的に行ったのはまず、じぶんがどうなったのかはまだ不明だが何か見える、自分には眼があるのか、あ、あそこに監視カメラがある最近はどこにでもあるよね、アレで自分自身の姿が確認できればいいんだが、とぼんやりと考えたら自分の身体が勝手に可能な、つまり戦術戦闘支援情報システムにプリセットされた幾つかの電子ツール、コマンドセットのどれかがフルオートラン、アセットサーチ、プロトコルセット、ラン、インターセプト、ダウンロード、エンド、思って実現するまでだいたいマイクロセカンド。
砲塔。
そして、長大な、砲身。
砲塔上部には天を睨む対空機銃銃塔。
足元には幅広の履帯、無限軌道。
重戦車、と表現していいのか。
軽戦車では無かろう、
MBTと呼んでもぴんとこない、
別に虎一の向こうを張るわけでもないがここは重戦車がしっくりする。
今宵、銀河を盃にして。
なにそれしらない。
もう深香と音声会話は必要では無かった、じゃあなんでマヘルなんだよ。
スサノオは外来神、イスラエル伝来の神なのよ、知らない?
しらん、日猶同祖論か。
論じゃなくて事実そうなの!、だから日ノ本の古神に抑えが効くんだから。
建速須佐之男命、つまりマヘルシャラルハシバズ、Maher-shalal-hash-baz、速やかに獲物を奪え。呪でくくるなら当然近い、強い方がいいからでもなんで!。
なんでといって。
太郎は陰謀論乙と切り捨てているが実際、日本国内にユダヤ乃至ユダヤ教の痕跡、シンボルはこれでもかとバラ巻かれている。
先ず伊勢神宮。石灯籠に六芒星、ダビデの星が刻印されている。
君が代は千代に八千代にさざれ石のいわおとなりて苔のむすまで。
10世紀初頭における最初の勅撰和歌集である、古今和歌集、の、読人知らず、の和歌を初出としている。これが、天皇の治世、を奉祝する歌となった。
という通説が真実歴史であるなら、日本の国歌は便所の落書きから選定され今日に至る、という事になる、つまり天皇の権威なぞその程度という事だ。
立ち上がり神を讃えよ、神に選ばれしイスラエルの民よ、喜べ。
残された人々もまた救われよ、神の預言は成就した。
これを全地に知らしめよ。
因みに、ユダヤ、人、とは現在のパレスチナに居住する方々であり、イスラエルに居るのはハザール人である、調べれば判る。
マヘルシャラルハシバズ、獲物を急げ、早く奪え。
旧約聖書、イザヤ書。
イザヤの息子、長男、次男。
長男、シェアル・ヤシュブ、
次男、マヘル・シャラル・ハシ・バズ
それは崩壊の緒言。
建速須佐之男命、速やかな建国を求め助ける神、他。
速須佐之男命、須佐之男命、素戔男尊、素戔嗚尊等、
須佐乃袁尊、神須佐能袁命、須佐能乎命
初めに音ありき、いやまったくよくぞ1神にこれだけの当て字が考案され今日まで伝えられたもの。
しかし、正直どうでもいい話というのは、実際この列島には外来、無数の漂着が存在するのだ、日ユなぞまだ判り易く可愛いものなのだというのは随分先に提示した通りである。
なるほど、神は創られる、人の想念に依って。
これが流出、か。
予期せぬ力を得たものは、次に何を求めるであろう。
家康に過ぎたるものの二つ有り、 唐の頭に本多平八
天下を望むもの、海外に名声と声望を目指すもの
太郎はその場にくるりと踊る、当然、膝下のアスファルトが噛み砕かれ砕石交じりの粉塵が巻き起こり、突如出現した戦車様の異形に向け夢中にシャッターしていた観客を容赦なくその悲鳴ごと薙ぎ払った。
おおこれが超信地旋回、戦車かつ神、どんどん自分がず太くなっていく。満ち滾る闘気の儘に太郎は、体内に深く護り抱える深香に向け宣する、征くか、巫女よ。
マヘル太郎の映像はあらゆる経路から、既に公嗣の手元にも届いていた。
何とはなれここは現代日本、
代々木公園爆誕はぐれ戦車はとっくにバズり現地実況垢フォロワは世界各国殺到トレンド赤丸急上昇、テロか番宣かマジックか魔術か、遠からん者はネットを開け、近からん者は写メって流せ。国籍不明型式不明無人有人不明、そもそもこれは戦車なんでしょうか、いやこれセンパー戦車だろ、オンでオフで議論百出百家争鳴、もし今次の多重検問が無かったら既に報道各局カメラ放列の外周陣地に包囲殲滅されている事だろう。
次長の自首、自供で一応、深香の件も確認されていた。これは以前からの二人での取り決め通りだった。敵対認定されてしまった深香だが国内での無用の混乱を望むものでは無かった、但し必然の混乱は、今回望んで立ち上げている。それこそが本件の主要件でもある。
それにしても戦車とは。
業務で浴びる程の文書に浸かっているせいだろう、公嗣には、余暇にまで文字を眺める習性は無かった。GONZOは好きなので映像化された雪風はチェックしていたしよく動いていたので満足もしていたが、マヘルが同作者のキャラだとは彼女は知らない。何より、イザヤの次男、マヘルシャラルについては業界周辺知識として彼女は当然知っていたがそれが目の前の映像と結びつくことはついぞ無かった。
次長から得られた情報は二つ。
一つは深香が次長をバイパスして全知、アカシックレコードへの接触を試行していた事。但し結果、成果は次長も把握していない。
そして公嗣が推察し希望した通り、深香の動機に害意は存在しない事。
但し、それはあくまで彼女視点の基準であり、大規模神霊無差別テロの敢行により日本国民ごと総て灰塵に帰す、等、コラテラルも厭わず目的に向け突き進むといった危害傾向はない、という限りの制約であり、既に武蔵結界が重度の損害を負っている実情に鑑み、大和及びキクが護持するものに対してこそ、彼女が非常に厳しい姿勢、想定される破壊を伴う攻撃活動の継続、それを見極め対処、対抗措置、防衛そして反撃、これが現在キクに、公嗣に課された任務であった。
幸いというべきか。
秦野深香の身柄確保への協力要請を受け活動していた関係各局が独自の行動に出るという事態は現在発生しておらず、改めて捜索停止の別命他、情報の取り纏めや各局間権限優先度の調整等の雑事に振り回される危険は低いと判断出来た。何とはなれ、代々木の騒動と本件を関連出来るのは本局たるキクくらいのもので、警らが民間の通報を受け現場に急行、受け立ち入り禁止規制の実施と監督をする以上の動きは現状確認されていないし、全く別件と判断されているのが各局情報より確認されていた。そのまま静観の姿勢を維持してくれる限り無用な対応は必要とされない。
とは言え。
混乱しながらも事態を認識していたのは当事者、マヘル太郎と同乗者にして実施者たる深香だけで、キクとてその正体については掴みあぐねていた、ある種の神魔、妖魔の類ではあろうが、何しろ戦車、それも古代神が跨るチャリオットや何か日本霊界に由来がある、無論何かしらの霊的存在である事自体は間違いない、あれが見た眼通りに現代世界の何れかのMBTである、それはあり得ない寧ろそうであれば対処は容易、しかし、アレは、現代を越えた、近未来的な何かを想起させる外観であるがそれは。
しかし今回は彼女が準備した対策がお互い諮り示し合わせた如くにぴたり合致した、なぜかは知らねど。
カモノハシを借り棄てた公嗣はその足で千葉に飛んでいた。成田に緊急着陸した同機から待ち合わせた便で東部方面航空隊、木更津駐屯地に向け降り立つと既に祥充の手配により部隊は出撃準備を完了していた。
神気を贄が集う。
深香を抱え、来た途を返す太郎に群がり拠る。
奉り、祭り、そして神輿。
太郎の意識は拡がる、観得る。
深香、いや、彼の者は我が妻久志伊奈太美等与麻奴良比売命。
そして吾は大和に使役されし封神、
急がない、歩を進める。
波が連れ動き拠る、
登り来りて吠え笑い泣き、
倒れ砕かれ血飛沫歓呼、
伝搬し、溢れ、より呼び集う。
マヘル太郎は自らを襲った殺戮の、力の饗宴、
幻視を振り祓う、
力に呑まれては、溺れては、
なんと危険な、畏怖すべき、
神力か。
遂に報道各局の取材ヘリまで飛来した際限の無い外野の喧騒は打ち捨て、車内奥深くに魂の正妻クシナダ深香を護り抱えたマヘル太郎は行動を、移動を開始していた。公園に乗りいれそのへんを、ぐるりぐるりとめぐり身体能力、準備運動を終えると、あ、あ、あ、と発声練習もこなし、頷きのように砲塔を左右に少し振りそして、はいどいてはいどいて戦車通ります戦車通ります退かねば挽きますオーバーランします命が惜しかったら譲って下さいはいどいてと救急サイレンの百倍はある轟音を無限ループ発信しながら全力、信号も何もかも無視して驀進する。止まりなさい、その暴走、えー、違法改造車止まりなさい、止まれと言っているだろう!! 並走パトにちょいと砲身を振って見せたら慌てて向こうが急ブレーキ急停車多重衝突国家権力ざまあw そしてそこは大したもので、暴れ戦車進路情報報道特番が経路啓開支援、興味は尽きねど命大事、進路前方半円半径1キロ圏内から路上障害は自ら遁走しマヘル太郎に征途を開く。
爆走しながらマヘルはちらりと上空後方を見遣り、あれ、さすがに邪魔だよな、何とかならんと深香に。
そうねと深香はうけおい、ごそごそ身じろぎするとコマンダーズハッチを開き半身を乗り出し、その手が閃いた。
報道各機は色めき立った。
スタジオ、見えますか、観えてますか! 謎戦車から人影が! わわわ?! 。
小さな破裂音と黒煙を吹き報道ヘリの一機が高度を落としていくと残る各機は散り散り逃げ去る。まず式だろうが何をしたかは特に問わない。
その時、本件に関連しまた、全く別の組織が突如活動を開始していた。
東京都千代田区大手町、官公庁街の一角にそれは存在する。
気象庁。
以外な事に、その使命の重大、存在感の大きさに比し、単独官庁では無く国土交通省の外局である、つまり、そのレゾンデートルもまた、自ずから見えて来る。国交省による国土管理の補佐が気象庁の任務となるだろうか。
名乗りは気象、のみだが、気象、地象及び水象の予報及び警報並びに気象通信、が、我々国民が最も親しみまた信頼する、気象庁が提供する機能であろう、天気予報に地震速報、台風情報に火山情報、昨今騒がしい河川警報、何れもお馴染みのこれら他、業務を円滑、高度化ならしめる事を目的とした技術研究開発全般も含まれる。
謎の強行検問に代々木騒動と首都圏に降って沸いた同時多発事態を尻目に、気象庁はひっそりと本来業務に邁進していた、悲鳴を上げながら。
気象庁もまた、本来業務の所掌内に於いて、前代未聞の、説明不可能な、しかも凶事に見舞われていたのだった。
異変は気象衛星センターからの第一報で始まった。
静止気象衛星による宇宙からの気象観測は特に、台風の監視を主目的とする。当該組織の業務は正に、気象衛星の運用管理である。
しかしながら本来、センターから気象庁に直接連絡などという業務は発生し得ない、つまりその内容は。
埼玉県さいたま市直上に、原因不明の気圧の谷間、低気圧が発生し、現在急速に成長している、その規模、既に、大型で強い台風のそれどうするよこれ!!。
どうする、え、どうしよう。
しかし現状なぜか降雨はゼロ、危険皆無。
緊急警報? 発令する?? 。
最新衛星情報による、異常事態の通報であった。
風が、すごい。
マヘル太郎も移動がてら地域ウェザーには目を通していた。太郎が、というより、戦車が自走移動するなら抑えるべき情報であろうという適正ではあれマヘルそのものの、虚構人格が刷り込まれたかの奇妙な感覚だった。
そして全突破信号無視、ほぼほぼ最短快速行軍、荒川渡河が近い。
当局が仕掛けるならここしかない。
今なら太郎も深香にも、警軍が日本の類例にはまず無い非常線を展開していた、その目標が自分たちであったのは自明だった。ここまで手出しが無かった理由は判らないが、そこに停車していたさいたまナンバーのタクシーが! 突然戦車に!! いやほんとだって動画もあるんだぞ?! という事態の進捗には、素性はともかく相手も人間なら拘束後事由は事後にというスキームが可能でもしかしながら本件では、官僚組織の業態硬直性などとイビるまでもなく対応限界レッドオーバーであったのだろう、彼らはどれほど有能でも役人でしかない、職掌を越権しての行動対処など不可能だし何より誰一人望まないのだ。
とはいえ。深香を問答無用で抹殺に動いた、キク、なる組織は、絶対に二人の荒川無害通過、埼玉への帰還など承服しないだろう、今度こそ、総力を尽くして、この機会、平開地形渡河中の戦車という無防備を狙い討ち目的達成を遂げる筈だ、ああその為にこそ、関係各部の対処を禁じたのかもしれないそうだろう。
絶妙の間合いだった。
公嗣がうち跨がり駆ける馬、
Boots&Saddles、空中騎兵。
陸上自衛隊東部方面航空隊所属第4対戦車ヘリコプター隊。
繰り返すが好餌、敵手が戦車であったのは全く想定の範囲外、そりゃそうだ。
機動力に長ける打撃戦力、そりゃヘリでしょ、問題は当然指揮権だが父、祥充が本件の重要性に鑑み、なのか、キクが古今この邦に蓄えた資産、コネ貸し借り貸借総決算棚ざらえをかけているのか、そこはどうにかこうにか、公嗣の緊急着任を隊率いる現場指揮官、一等陸佐は神妙な、無言の敬礼で受け入れた。
軍隊は命令で動く。では、その命令の根拠は何か。そう、文書だ。そして軍隊こそが最も厳格な官僚機構なのだ。故に、職能としての殺人、破壊が機能し得る、これに何の統制も無ければ自走膨張する混沌でしか無く、過去多くの帝國が指揮権他国軍の制御不能により自壊してきた。故に、そう、だから資料編纂などの完全なる空位では無く、文書係長なのだ。ぶっちゃけ院政である。
もちろん彼女にヘリコプター空中殺法の兵理戦術など何一つ備えはない、長機のガンナーズシートを借りそこからお願いするだけ、だ。
隊を構成する総数8機中、状態がいい3機が今回投入されている。
装備機であるAH-1Sは正直、老兵も老兵の旧式機材ではある、何しろ原型機は世界初の攻撃ヘリであり、初実戦は60年代のナム戦。その近代改修型、日本ライセンス生産が本機となる。
今回ずーとgdgdを演じてきた終局でご都合なくらいに揃った好条件だがいい当たりは正面を突く、航空兵器の活躍舞台にして大敵たる、空、が、
急変し牙を剝き猛り狂っていた。
空のもの何でもそうだが殊、へりは悪天候に泣く。
知ってる人は知ってるように航空機というのは推力で飛ぶのでは無い、揚力で、翼で飛ぶ。この揚力は翼断面上下気流の気圧差で発生し、真空ポンプを動かすと大気圧で容器がへしゃげるのと同じ現象で、翼断面上層にある低い気圧が上向きの力を発し揚力となす、これが機体質量を上回る事で翼は、航空機は空中に浮く、以上が航空の原理だ。
対してヘリコプターはこの揚力を翼では無く僅か2、3枚のローターブレードの回転に負い、かつ移動もこれによる。そしてAH-1Sは2枚。稀にオートローテイトの映像など見るとヘリの降下は緩やかなるのを約束されているかの錯誤だが、悪天中、ブレードから気流を引き剝がされるようならヘリは石も同然に地面と熱い接吻を交わす。基本直線飛行の一般機に比べ前後左右、ヘリの運動は自在だ、しかしかくも脆い。
東京埼玉を隔てる大河、荒川。
文字とおりの乱流であり、過去地域住民を度々痛めて来た。
その手前にある中河川、新河岸川に差し掛かりさて、と、
辺りを見渡しマヘル太郎はそれに気づいた、北天より襲来する機影、3点。
なんて手回しがいい、戦闘ヘリか、すごいのを持ってきたな。
アレだろ、ヒューイコブラ、最新鋭のアパッチ相手じゃないだけ少しはラクさせて貰えるのかな、深香。
でもヘリ対戦車のキルレシオって確か1/20とも50とも。
こなせていないが戦車、戦闘兵器に擬した神の眼を持つマヘルの索敵探査が偉遠なのであって、臨編キク空中特別班も新河岸川東岸土手、稜線上に無警戒な姿を晒す、AFV様在来型式該当無し識別不能の外観を持つ、今や世界でもっとも有名なそれ、を、神に対す人類が働きとしては十分天晴な、搭載主兵装有効射程の約倍10kの圏内に認める。
あれを。
あれ、です。
公嗣との短い応答で長機指揮官は即座に発令した、状況開始。
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