第33話

 それは面白い、いや、非常に興味深い。


 次長の思念が途切れた。


 思念交歓は通例、1秒に満たない。

 脳細胞を介さない、

 魂の直通情報均整作用であるからだ。

 

 そこには意志の介在すらない、

 完全なる自動動作、

 そも意志を形成する猶予無く完了する。


 途切れた、のでは無かった。


 深香は思わず額を抑えた。

 凄まじい、情報の奔流に彼女の脳は沸騰し、アナフィラキーの如き不随意運動にその身をはね躍らせる。

 

 二人の対面セッションはカバーであり陽動で、本命は体脱、深香からの幽体離脱での接触だった。第19条、思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。それでも深香は結界浸透の手段として動物霊の迷彩を纏っている、とうぜん、木食の手配によって。いくら堅牢といってフィルタリングにリピータジャミングをかませば結界は対象を無害航過させる、術者による戦時索敵探査ならともかく平常霊的無人監視などその程度のものだ。


 深香は霊圧でボディに叩き返され情報負荷と強制切断の反動で穴という孔から出血し垂れ流し叫び散らしのたうった、ジャックインしていたクラッカーが当局の追撃を振り切ってベイルアウトした直後のような有様だ。



 次長は全知をクラウドな自らで飼い馴らしている。其処に外部からアクセスを試みるというのは控え目にも無理無謀、しかし深香は当人の同意の基敢行した。思念交歓時に深香の魂はそれ、に結線、はしている。CPUも走るプロトコルも異なるが取り敢えず物理的に直結させた二基のハードウェア、しかしながら両者のスペック格差は銀河規模の量子コンピュータとハンドアセンブリでダイオードを発光させる試験基盤ぐらいある、その2者間で、銀河ネットワークから学生の初等教材に向けて有為なデータのダウンロードを試行するというのだから大したものだ度胸だけは。



 アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントは、もはや開戦の理由など誰も知らない戦争を100年も続けていた……なんでボトムズやねん!、深香はセルフ突っ込み。



 世界の認識とは知識の鋳型への嵌め込み工程に拠って達成される流れ作業である。知らないモノは知らないし認識出来ない、変容が発生し、認識可能な自身の知識データベースが検索され、適合され、知覚される。

 全知から雪崩れ込む知識、データの奔流の中で、手が触れ得るもの、フィルタリングやソートの猶予などなく、100本ノック、万本、億兆京垓、ちょっと跳んで恒河沙那由他無量大数、∞。



 オリオン。

 シリウス。

 

 プレアデス。

 

 


 あなたの今までの時間は、あなたの魂と神とが、あなたが生まれてくる前に交わした約束を果たすときのためにありました。

 今、あなたの魂は大きく成長し、神との約束を果たす時期が来ました。神との約束とは、人を救う道を進むという約束です。


 霊界より指導に当たる大軍の中には、ありとあらゆる必要性に応じた霊が用意されている。筋の通れる論証の過程を経なければ得心のできぬ者には、霊媒を通じて働きかける声の主の客観的実在を立証し、秩序と連続性の要素をもつ証明を提供し、動かぬ証拠の上に不動の確信を徐々に確立していく。更に、そうした霊的真理の初歩段階を卒業し、物的感覚を超越せる、より深き神秘への突入を欲する者には、神の深き真理に通暁せる高級霊を派遣し、神性の秘奥と人間の宿命について啓示を垂れさせる。斯くの如く人間には、その程度に応じた霊と相応しき情報とが提供される。これまでも神は、その目的に応じて手段を用意されてきたのである。今一度繰り返しておく。曾ての福音の如き見せかけのみの啓示とは異なる。地上人類へ向けての高級界からの本格的な働きかけであり、啓示であると同時に宗教でもあり、救済でもある。

 常に分別を働かせねばならぬ。その渦中に置かれた者にとっては、冷静なる分別を働かせることは容易ではあるまい。が、その後において、今汝を取り囲む厳しき事情を振り返った時には、容易に得心がいくことであろう




 貴方はこれから述べられることについて、しばらくの間一切口外することを許されない。何故なら、それらについて知る者は僅かでしかないからだ。そして、それについて知る者はある意味において選ばれた者である。貴方にとっての選ばれた者という意味は、もう適切な意味として受け取られている。よって、ここでは率直な表現を用いることにしよう。

 これまで、回りくどい表現になっていたのは、あなた方が言葉の本質を理解していないがため、出来るだけその意味の本質的なものを理解できるようにする説明が必要であったためだ。

 貴方方は、言葉が柔軟なものだと理解し始めている。それは、多くを含みながら、ある部分のみにしか目を向けさせない場合もある。これから私の伝える物語を、あなた方は想像力を用いてあなた方の中で思い浮かべなさい。

 あなた方自身の中で回想するのだ。

勿論、それは今現在の貴方方がするものである。

だが、回想することにより、あなた方の深層までもぐりこんでいる傷をもつものに語りかけることができる。

これからは、表現を明確にしていく。

ここで用いる言葉や表現は、今現在の貴方方を中心にして用いられるものである。それは、これまでの霊信も同様であり、より理解や認識を得やすくさせるためである。

かつてある大陸を中心とし、地球に繁栄した文明があった。……

地球、には生命は存在しなかった。貴方方にとって衝撃を与えるものであり疑いを生じさせるものを私はこれから伝えていく。



 貴方方は純粋に、物語、として今は読みなさい。


 地球は、創られたものである。


 ここで、この表現を用いるのは、地球も生命の一つであるからだ。 


 あなた方の世界では、この事実を理解するには多くの年月を要する。

 

 ある惑星で、今現在、地球に存在する、命あるものすべてが存在した。

 それらは、一つの惑星ではなく多くの惑星にそれぞれの世界を持ち存在していた。そして、今では地球に存在しないものたちも、それらの惑星に存在していた。


 ここで説明しておくべきことが一つある。 

 それぞれの惑星での時間の流れは全く異なるものである。

 よって、ここで他の惑星に対しての現状を説明するにあたり、「今現在の他の惑星」として主語を用いる場合、それは真実に反するものである。

 それを踏まえた上で語りを読みなさい。



 今、それらの他の惑星には「過去地球に存在していたが絶滅した」とされる種は存在する。もとは地球ではなく、その地で生まれたものたちである。回帰したのだと理解しなさい。あなた方の世界で今日語られる「地球外生命からの接触」は事実であるものと、そうではないものとがある。それらの接触も、計画の一部であると理解しなさい。その惑星の名や、そこから移住したものたちの築き上げた文明の名をあなた方は知りたがる。 

 

 だが、ここでは伝えることが困難である。

 なぜならば、言葉が異なるからだ。


 今日、アトランティス大陸、と呼ばれるものは、当時呼ばれていたものとは全く異なる。だがその文明で多くのものが話す言語を正確にリーディングした者はいない。


 あなた方が想像しやすくするため、その文明をアトランティス文明、とここでは呼ぼう。アトランティス文明は、その惑星から移住したものをはじめとし、他の惑星から生命が安定し存在する環境、をつくるための協力者、そして多くの惑星から強制的に地球へと連れられたものたちが存在した。

 ここでは、人類、に焦点を当てよう。

 動物・植物に対する説明は、その必然により語られるものだと踏まえなさい。

その惑星が滅んだ原因は、その惑星の寿命、が原因ではない。

 その惑星では、惑星という生命からのエネルギーを他のエネルギーへと転換、させることが可能であった。


 そして、そのものと同じ姿を持つが別の魂であるものたちがアトランティス大陸でその行為を継続させ始めた。その惑星でも、そのものと同じ姿をし別の魂を持つものは存在した。だが、はじめと終わりはそのものに担われた役割であった。なぜなら、その技術を提案し始めたのはそのものであり、その惑星への償いとして生命エネルギーを与えたのもそのものであるからだ。だが、そのものと同じ姿をしたものはアトランティス大陸へと移住した。それにより、その行為は継続されるものとなった。アトランティス大陸に、その惑星で繁栄した文明のすべてがそのまま移された。だが、時間の流れがその惑星と地球は異なるため人は、短命、となった。もともとは、人は今の人類、という姿ではなかった。それらの惑星で生存していくにあたって必要なあらゆる外見的、内面的特徴をそれぞれ持っていた。それらの多くのものがアトランティス大陸に存在した、そう想像しなさい。


 アトランティス大陸では、多神崇拝が行われていた。

 各惑星により信仰は異なり、信仰対象がないものたちもいたため、そういった意味ではまとまりは見られなかった。植物を崇拝するものたち、石と水を崇拝するものたち、動物を崇拝するものたち、人を崇拝するものたち、そして惑星を崇拝するものたち、宇宙を崇拝するものたち、あらゆる信仰対象がそこにはあった。

 ある一定の流れは破滅へと向かい、そこにはあなた方は存在しなかった。

 そのとき、その惑星と同じ手段を用いていたにもかかわらず、その技術によるデメリット、を知るものはなく、その惑星で起こったものの多くは忘却のかなたへと消えてしまっていた。惑星信仰をするものたちは、惑星との語り手、を選び、そのものにその内容を伝え、惑星を慰める役目が与えられていた。


 そのものの生命エネルギーを転換し、それは行われていた。

 

 それは、他の信仰でも同じであり、それぞれの対象との「語り手」が選ばれそういった役目が与えられた。戦乱が広まり、それぞれの信仰を持つものたちは団結するものと対抗するものとに分かれた。

 惑星を信仰するものたちは、石と水を信仰するものと団結を図った。

 そして、植物を信仰するものは追いやられた。なぜなら、彼らは、争うことを拒みその流れに任せた、からだ。地球で滅びを迎えたとしても、他の惑星もしくは地球で別の世という旅を進めていくことを理解していたからだ。

 今では滅びを迎えた種を従え、動物を信仰するものたちはどのものとも団結はしなかった。宇宙を信仰するものたちは、啓示を受け別の惑星へと移住した。そのものたちは、これまで多くの啓示を地球に残るものに与えてきた。


 争いが絶えない中、地球の生命エネルギーは衰弱していった。

 そして、多くの命が失われそのものたちの意識、そして地球の意識が増大していった。それは全ての一部であり、闇であり、あなた方が見つめることを避けるものであり、恐れるものである。

 それを言葉で表現することはできない。

 だが、感じることはできるだろう。

 ある話し合いが行われた。

 度重なる自然災害により、地球の状態を改善させなければならないという意見が一致した。

 それはすべてのものにより行われた。

 そして、そこで提案された方法は、その惑星で行われていたものを地球にも行うというものであった。



 その計画は失敗に終わった。



 ここで私があなた方に今の段階で伝えられるものはこれまでとなる。




 それはOS。

 

 世界の理、機序、神々の計画。

 

 

 アクセスプロトコル。

 

 

 しかしOSであるだけにそれらは深香の顕在意識に昇って来る事は無く、世界認識の基本ツールとして今生は永久に潜沈する役目。

 

 

 深香の問い。

 

 

 父が、秦野が求めたのは、何だったのか。

 

 

 縄文の、ムーの血が、それ、だったのか。

 

 

 ムーとアトランティスの確執。

 ギルガメスとバララント、オリオンとシリウス、西洋と東洋、ヤマトと日ノ本。光と闇、他力と自力、愛以外の選択。

 

 

 あーそういう主語がおおきいハナシはいいから!!。

 

 

 私に!。


 符術を!!。


 授けなさい!!!。


 三日三晩ぐるぐるの後深香はようやく起き上がり、熱いシャワーと冷水を交互に浴び身を清め、スーパードライ350を一気に喉を潤しぷっはーと一息付くと、はじめて凝視している木食と瞳を合わせた。

 

 今は三毛。

 

 始終を木食は静観していた。

 手伝わない。

 これは自力で越えて貰わねば深香の為にもならない、

 秦野奉公でもそうして来た、

 加勢の土岐来るまでは常に。


 深香は母が刻んだ自身の肢体を見下ろした。

 

 惜しむものは無い、

 ただ、征くのみ、

 我が心魂の導くが儘に。



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