第2話
人類の歴史は戦争の歴史だ。
この事実を嫌悪はすれ否定出来るものは居ない。
そして人類最古のサービス業は暴力の、或いは性欲のレンタル。
傭兵と、娼婦。
煩悩、七つの大罪、
食欲性欲、あれやこれや。
別に軍がどう、という事ではない、
何より人間集団である軍隊という組織を維持運営機能させる為の方策として、喰わせ、寝かせ、抱かせ、満たしてやるそれで殺させる、それだけの事だ。軍隊という組織が基本自己完結型である事からこの丸抱えが発生するのであり、企業はこれを家庭という別組織にアウトソーシングして社畜を飼う。
大陸では大砲、国境線を引き直す為の道具、というような事情だが、この列島は少しばかり様相を異にする。今記した通りに列島、孤島というローケーションが故にである。
渡洋着上陸侵攻作戦は難しい、困難を極める。有名なのは第二次世界大戦、欧州西部戦線後期に敢行された俗称D-day、史上最大の作戦、プライベートライアン冒頭に描かれたノルマンディ上陸作戦だろうが或る意味あれが唯一著名な成功事例みたいなもので、大成功故有名だが無名の失敗事例、第一次世界大戦に海軍大臣チャーチルが立案して見事盛大にずっこけた世界最初の三軍統合ガリポリ作戦なんて好きな戦車はフィンランド軍冬戦争仕様の三突とのたまうようなミーハー軍事オタクだって名前くらいしか聞かないだろう、世界帝国モンゴルが二度もけ躓いた足元の小石、元寇だって我々が当事者で無ければ判らない事だ。
とかように外敵からは保護され、蠱毒の如くひたすら内戦を愉しんできた。地球や宇宙からすれば総ての戦争が人類の内戦、ってこれはジ・インベーダーか、チェスと将棋は似て非なるモノ、討ち取ったハズが寝返り、昨日の敵は今日の朋。
政府イコール軍事政権、政権交代即戦争、言葉は温いぞ弓矢にて候へ、首にせねば戦は収まらんのじゃ!、離散集合勝ち負けは兵家の習い。開府倒幕また開府。
そして庶民にとっては娯楽であった。ディズニー逃げて!。リアル戦争映画大人気、西勝て東勝て、どっちが勝とうがどうせ年貢は取られるのだ、この悪癖は明治以降も続き、日清の大勝などニッポン金メダル!よく頑張った感動した!てなもんで、なので日露の辛勝、実質戦略的大勝利には不満大爆発、誰も庇わず寧ろマスゴミなど今日と同じ尻馬で現代の自衛隊弄りなど可愛い軍への大バッシング、軍人だって人の子、二二六を経て軍靴の響き、政府の不拡大方針に不満を鳴らし軍の独走に快哉を送ったのは世論とマスゴミ、戦争反対を叫んでいたのは他ならぬ政府で、真珠湾強襲は世論が望んだ事だ、今は誰も言わないが。
そしてめでたく敗戦、今日に至る。
自衛隊ほど毀誉褒貶、その評価、理解が困難である組織、存在は無いだろう。
WEBを開くと絶賛の嵐、曰く人類史上最強の志願制軍隊、曰く、米軍将校が愚痴って、あいつらはクレイジーだ、空自とだけは戦いたくない奴ら直ぐkill callしてきやがるファック!、北米遠征演習部隊を現地が講評、優秀だが選抜部隊を編成するのはナンセンス、いえ、通常編成なんでサーセンw。
一方、彼らを人殺し集団だ、いや憲法違反だ、センソウハンターイ自衛隊解散!と声高に批判批難する声もまた、根強い。
此の世に真の公正中立、は実在し得ない、ここがそう、と規定した瞬間から揺らぎ始める、これは宇宙則の一つ、量子論的には必然で、確率でしか記述し得ないことより、そうなる。
君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか叱咤ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。
痴人の戯言であろう。
まず政治の放棄、耐えて貰いたい?。
軍人の職務は死ぬ事だ、故に国家はその死に最上の栄誉を賜る。これが最低限の国家が果たす責務であり、上記発言には国家の本質も軍隊の必要も何一つ理解が無い、恐らく発言者は少しばかり漢字を覚えイキっていたリア少、小学5年生くらいではあるまいか、この智性の欠格には怖気がする。
君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ
自衛隊員は国民では無いのだ、ほんとうにこいつはいったいなにをいっているんだ??。
自衛隊は耐えて来た、耐えている。
Rules of Engagement:
Rules of engagement (ROE), military directives meant to describe the circumstances under which ground, naval, and air forces will enter into and continue combat with opposing forces. Formally, rules of engagement refer to the orders issued by a competent military authority that delineate when, where, how, and against whom military force may be used, and they have implications for what actions soldiers may take on their own authority and what directives may be issued by a commanding officer. Rules of engagement are part of a general recognition that procedures and standards are essential to the conduct and effectiveness of civilized warfare.
政治の無策、怠慢であろう。
つまりは有権者の、我々全員の尻ぬぐいを今この瞬間も押し付けているのだ。
日中の旧中は辞めておきなされ、ああ、どうしても逝かねばならぬか。
南浦和で中山道から折れるじゃろ、浦和駅前じゃ、ここで最初の渋滞。
浦和橋を渡れば北浦和東口、信号が多い、また大渋滞。
与野駅前は些かましかの。
新都心の次、老舗高島屋を左手に大宮駅東口前、またも大渋滞。
何とか進み東上線をアンダーパスするとようやくほれ、
あれが自衛隊通り、左折して中央病院のアンダーパスで、
中山道を渡る、何でわざわざ旧中を、ああ端から走るのか、ご苦労。
上尾街道、櫛引バス通り、それから無名の通称、自衛隊脇通りを過ぎれば、
お疲れ様、陸上自衛隊大宮駐屯地正門前に御到着じゃ。
彼、将補たる陸上自衛隊大宮駐屯地基地司令は正直、途方に暮れていた。
しかしそれは、本国、Office of Naval Intelligence、ONI、アメリカ合衆国海軍情報部からの要請を受け、市ヶ谷を経由し結局は現地まで出向かされた、在日米軍、第七艦隊、第74任務部隊、第7潜水艦群、横須賀海軍基地所属の司令部要員、少尉、も。
おそらく、同様だろう。
山のものは山のもの、海のものは海のもの、当初は当然にハナシは海自へ廻ったようだが現場は埼玉のオカなんだろう、アソコは海は無いじゃないか、武蔵の地勢なぞ尋ねられてどうしようがあるねと当然の返しをされ結局ゴネ戻され、現場周辺を管轄する大宮に持ち込まれる事で落ち着いた、が。
落ち着いたのは市ヶ谷のハナシで、こちらとしてもこんな筋では。
ああいや、筋論を通してしまえば事は外務マターであるのは明白だ。
例え在日米軍であっても、と、いうよりであれば猶更、主権国家の国軍が同盟国に便宜供与を打診するというのだ、然るべき窓口を通して申請するのが筋というものだ親しき中にも礼儀あり、両国間の関係を健全に維持する為にも必要なコストであると言える、が。
殊、本件に在ってはあああ。
成程糞真面目に外務省を通すとするじゃろ、
レクがあるな、
外務省は困るわな、当事者能力を問われるじゃろ、
何処に頼るかの、文科省辺りか、
文科省とてこんなんどうしようもないわな、
国内では結局、宮内庁の出番となるかの、
とはいえ宮内庁とて、公式には何も口出し出来んわな、
当然、ゼロ回答じゃ、
となると本件はどうなるかの、
事は外交問題じゃ、
そして外務は対応不可能ときた、
内閣の判断を仰ぐ羽目になるかの、
関係者一同面目丸つぶれじゃな、
行政版不幸の手紙といったところか。
とまあ、そうした筋論の成れの果て、
官僚デスマを見切って取った出来物がおった、
危機は回避された、
そういう事じゃな。
宜しくお願いします、と、彼女は、握手では無く深々と首を垂れるジャパニーズスタイルで席を辞した。
無事に下駄を預け終えた安堵を隠すことも無い満面の笑顔と共に。
卓上の分厚いレポートをぱらぱらと親指で弾きながら、司令はひとり大きく長い息を吐く。
事情は分かった。
付箋だらけのそれ、mapと殴り書きされた箇所を開く。
地球に、赤、青、緑の三色で等高線が書き込まれた図が上下に二つ。
Fig5 a) b)
a)国際標準地球磁場モデル2015年度図、日本列島は青、ロシア連邦北極海沿岸を谷底とする、緩い盆地の端に位置している。
b)日本、関東平野を中心とした拡大図、最新情報。
ONIがIAGA、国際地球電磁気学会の活動とは別に、独自で入手したそれには、三色のまだら模様による地磁気の攪乱が標記されていた。
はい訳ワカメなもの素直に挙手。
ひのふの……mjk。
せんすいかん、の脅威から説かねばならんかの、
さすがにそれは知っておろう、おらんか??。
世界両大戦で海洋大英帝国を瀬戸際まで追い詰めた、
大陸国家ドイツのウルフパック、群狼作戦。
日本とてガトー級に干殺されたのじゃぞ、
原爆?んなもんただのハデな花火じゃ、航空優勢のオマケじゃな。
島嶼国家にとって海洋連絡線を絶たれる以上の脅威があるもんかね。
邦丸ごと飢え凍えるのじゃぞ。
潜水艦は水の下に居るの、
潜水したら上、洋上からは見えんの、まんまじゃが。
海の忍者と呼ばれるの。
潜水艦が出るの、
船が沈められるの、
もう大騒ぎじゃ。
そやつは今も其処におるや、おらんか??。
おる、ならば狩り出して沈めねば安心出来ん事になる。
もしおらなんだとも、こちらには判らんでな、
全輸送、海洋兵站に対潜護衛が必要になるでな、
これは、しんどいぞ。
おる、かもしれん、これだけで敵に無用のコストを強いる、
これこそが、潜水艦の潜在的脅威こそが、
潜水艦の戦略的価値というものよの。
昨今では戦略級原潜などと、核弾頭大陸間弾道弾を積んどる物騒なのもおるの、これも良い使い方よの。
だいぶハナシがこなれたかの。
かように厄介な潜水艦を、是非発見せねばならんとて、
人は知恵を絞った。
潜水艦は、まあ鉄の塊だの、
この鉄の、磁気を捜索発見する、
これが、近年の海の上から潜水艦を見つける一般手法だの、
しかして、地球は強大な磁石だの、
だから、予め、捜索対象の磁気から地球の分は除いておかんとの、
補正値を算出するのに各地の地球磁場の観測値が必要だの、
まあ、最終的には地図の形になるの、
が、学者が数年おきにのんびり更新するものは軍人の蛮用には耐えんでな、
軍人は軍人で自分で使う道具を持ちたがるものよ、
どうじゃ、ハナシがようやく見えてきたか?
ではでは、続きを眺めてみようかの。
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