第17話 初めての仲間殺しと逃走
レミはスウッと息を吸い込むと、
「あああーっ」
と声を出した。
レミの能力は、耳がいいだけではない。平衡感覚を狂わせる超音波を出せるのだ。
「うお!?」
スレイとセイもよろめいたが、すぐに耳を押さえる。
リリはボタリと天井から落下し、床の上でのたうった。
それに近付いたスレイとセイだが、どこをどう刺すか迷い、スレイは血をぶちまけた。
「ごめん。爆破」
リリがボンと爆ぜた。
レミが膝を付きかけた時、外から気配がした。
「やっぱり。追っ手だ。リリは奴らに命令されてここに先に攻撃を仕掛けて来たんだ」
「逃げるぞ!」
「ごめんね、リリ」
3人は素早く荷物を背負い、とうに使われなくなっていたカラカラの排水溝を通って外に走り出て行った。
エランは被検体が戻りもせず、中から物音もしないのに、どうするか考えた。
が、すぐに部下に命令を下す。
「総員突入。被検体を捕獲」
それで10名ほどが一斉に、その廃墟に突入して行く。
奥の食堂だったあたりに先頭の痕が残り、そこに、リリの死体が横たわっていた。
「いません!」
キッチンや応接室を覗いた部下が報告すると、2階へ駆けあがって行った部下らも、すぐに、
「見当たりません!」
と報告する。
「探せ!どこかに隠れているか、逃げ道がある筈だ!」
言って、排水管の存在に思い至り、バスルームを見た。
そこは動物の巣になっており、枯れ木などで覆われている。
キッチンはどうかと思えば、流し台が割れて排水溝が剥き出しになっていた。
「ここか」
しかし覗いて、唸った。数メートル先で崩れており、ここから逃げ出すのは不可能と思われたからだ。
「一体、どこに……」
エランは周囲を見回し、考え込んだ。
(まだほかに、知らされていない事があるのか?まさか探している3人もこの化け物みたいな奴らで、何かヒトとは違う力があるのでは……?)
排水溝は川に続いており、3人はザブザブと川に入って川の中を移動してから、岸に這いあがった。
吐き気がするが、スレイはそれが、排水溝に残っていた臭いのせいなのか、緊張したまま走って逃げたせいなのか、別の原因なのか、わからなかった。
いや、わかっていたが、思い出したくなかった。
「行こうぜ」
セイが息を整え、そう言う。
「ああ」
スレイは口をゆすいで、立ち上がった。
「うん」
レミは涙をこっそりと拭いて、立ち上がった。
絶対に、許さない。
改めて、3人共そう心に誓ったのだった。
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