第18話 秘密と疑問

 ジーナもその町の近くで子供の3人組がいたとの情報を得て、町にいた。それで、エランと鉢合わせし、廃墟での襲撃と逃走を知った。

 そして、回収されたリリの死体を見、驚愕の念を抑えられなかった。

「何だ、これは?」

 顔はヒトの少女だが、下半身がトカゲのようになっており、途中でプツンと切れていた。そして体表はウロコで覆われ、掌は吸盤状になっている。

 そして胸部、腹部は切り傷とも思えないような傷でグチャグチャになっていた。

 エランは無表情のまま、リリを眺め下した。

「被検体、らしい」

「被検体?もっと詳しく話せ」

「これ以上は私も知らん」

 そう言って、視線を外す。

 リリは袋に入れられて馬車に積まれ、ジーナはエランに詰め寄った。

「大体、あの3人を追う理由は何だ。手配書に書いてないじゃないか。

 まさか」

 リリへと目を向ける。

「わからん。探して、できるだけ生きたまま連れて来いと命令を受けただけだ」

「何をしてるんだ、教会は?被検体という事は、あれは、人為的なものという事だろ。トカゲの体の人間を作るだなんて、どうかしてる。

 探し回ってる3人というのも、ああいうやつなのか?それで、もっと凶暴な化け物じみたやつらなのか?」

「知らん。本当に聞いていないんだ」

「命令書一枚の俺とは違って、口頭で命令を受けたんだろうが。それに、あのトカゲの化け物を預けられたんだろう?疑問に思わなかったわけがないだろうが」

 エランはジーナをジロリと一瞥すると、

「命令に従う。ただそれだけだ」

と言う。

「ケッ」

 ジーナは鼻を鳴らしたが、エランは無表情をジーナから引き剥がしただけだった。

(どうも最近おかしい。探ってみるか)

 ジーナはそう考え、町へ引き上げる馬車に乗り込んだ。


 スレイ達はその付近を離れ、獲った鳥や獣を売りながら別の町へと移動していた。

「どうしてバレたんだろう」

「あの、犬みたいなあれかな」

「でも、ガンツさんは言ってないと私は思うよ?」

 レミに、スレイが言う。

「ああ、ガンツさんが言わなくても、犬の変異体は目撃されただろ。それでやつらが調べに行って、こういう3人組を見かけなかったかって訊いたら、宿の人とか店の人とか、普通に喋るだろう?」

 セイも頷く。

「なるほどな。そうやって、追って来たのかもな」

 レミは増々深くフードを被った。

「堂々としてればいいよ。ビクビクしてたら、余計に目立って、記憶に残るんじゃないかと思うから」

「そうだぜ、レミ。能天気に歌でも歌えよ!」

「んもう、能天気はないでしょ?失礼な」

 プクッと頬を膨らませる。

「おお、それそれ!」

 セイが指差し、たまらずスレイが吹き出した。

 それでセイも笑い出し、つられてレミも笑い出した。

 あの廃墟を逃げ出してから、初めての笑顔だった。


 報告を聞いたロドルフは、考え込んだ。

「逃げたか。どうやって逃げ出したのか。

 そもそもこの傷は、何でつけたものだ?素手か?いや、これの表皮は硬かった。とてもそれは無理だろう。それに、なかなか床に降りないこれを、どうやって?

 まさかあやつら、能力を全部申告せずに、隠していたのか?」

 ロドルフはハッとしたように言うと、笑い出した。

「ははは!そんな知能までちゃんとあるとは!

 増々、解剖したいぞ」

 舌なめずりしてうっとりするその様は、どこから見ても変質者で、とても国を代表するような頭脳の持ち主には見えなかった。




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