第15話 三人旅

 サンが

【近くにあるはず】

と言うので丹念に探してみると、木の根元のコケの中に埋もれるようにして落ちていた。その青い石を地面の上に置き、そこにスレイは血を垂らし、爆破した。

「この石、植物には影響しないんだな」

 言いながら、傷口にさっと水をかけると、水を拭き取る。それだけで、そこにあるはずの傷口は跡形もなくなる。

「動物だけ。しかも子供だけだもんな」

 セイが首を傾げると、レミが継ぐ。

「それも、ほとんどは死んじゃうみたいだしね」

 つくづく、よくわからない石だ。

 が、この時スレイの頭の中に、その考えが浮かんだ。

(胸腺に何らかの作用を及ぼすものかも知れない。胸腺がまだ大きい子供には作用し、小さくなった、大人には作用しない。

 それと、作用するとき、その作用に肉体の強度が付いて行けないもっと体が未発達な者は、死ぬのかも知れないな)

 そして、気付く。

(胸腺?それは何だ?)

 知らない知識を不意に突然思い出す事があるこの感覚は、未だに慣れない。前世がサンがいた所とも違う異世界で、その時の記憶がよみがえっているのではとサンは言うが、どうせ思い出すなら、キチンと、内容全てがわかるように思い出せればいいのに、とスレイは思う。

「今日はどこかこの辺で、泊まれる所を探そうぜ」

「そうだな。近くの町は、熱心な信者の多い町だって聞くからな」

「さっき、廃屋が見えたよ。蜘蛛の巣とか払えば、泊まれるんじゃない?」

 それで3人は、山の中を移動し始めた。


「ここか」

「見事な廃屋だな」

「お化けが出そうだよぉ」

 元は貴族の別荘かなんかだったのだろうか。そこそこ大きな石造りの建物と、納屋か厩舎のような建物があり、それらをグルリと柵で囲ってある。しかしその柵は壊れて穴だらけになっており、金属の門扉も、錆び付き、外れて転がっていた。

 泥棒が入り放題だが、ここに入る泥棒もいないだろう。

「行くか」

「お邪魔しまあす」

 薄暗くなりかけた中、3人はその廃屋に足を踏み入れた。

 野宿にすっかり慣れた3人だが、屋根のある所はやはりいい。地面が平だと寝やすいし、体も楽だ。

 入ってすぐは広い玄関で、奥に食堂や応接室らしき部屋があった。応接室のソファはボロボロだったが、冷たく硬い床よりも、寝心地が良さそうだ。

 食堂には大きなテーブルとイスがあったが、それだけだ。隣にはキッチンがあり、水がめはともかく、かまどは火を付けても良さそうで、薪が残っていた。これは助かると思いながら、他を見に行く。

 2階は同じような部屋がいくつか並んでいたが、壊れて開いたままの窓から入り込んだ鳥や動物が巣を作っていたので、ボロボロのベッドやソファはあったが、2階のものは諦めた方が良さそうだった。

 スレイ達は応接間で寝る事にして、キッチンで火をおこし、ここへ来る前に狩って来たイニシシの子を捌いて焼く事にした。

 同じ山の中でも、例え廃墟であろうとも、地面の上に野宿するのとは何か気分が違う。

 スレイもセイもレミも、どこか安心したようなものを感じながら、応接室で毛布にくるまって眠りについたのだった。




 

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