第7話 人体実験
ぐったりとベッドに倒れ込む。
スレイ達4人は、解剖はされないままだったが、テストを繰り返されたり、血液を採られたりしていた。
「大丈夫か、セイ」
そのままの姿勢で、何とか声だけ出して訊く。
セイは物理攻撃に強いというのがわかったため、どのくらいの攻撃に耐えられるのか調べようと、殴られたり切り付けられたり火を近付けられたりしていた。
「ああ。今の所、俺の方がまだ強いみたいだ。爆破とかはされたら流石に負けそうな気がするけどな」
セイは力なく言って笑う。
「そういうスレイはどうなんだよ」
スレイは、血液が変化することがわかった。スレイの血液を垂らし、スレイが燃えろと念じれば燃えるのだ。それで、燃える以外にも何ができるのかとテストを繰り返しているところだ。
おかげで、ただでさえ血液検査で血液を抜かれるのに、貧血でフラフラする。
「頭痛い……」
スレイは嘆息した。
「ボクは、耳がおかしいよ」
レミは、目と耳が異常によくなった。向かい合った人間の心音までもが聞こえる。
そのせいで、レミはひたすら、どこまで聞こえるか、という実験をしていた。
「エイミーは大丈夫かな」
レミが気遣う。
エイミーは人型で生き残ったが、どこが変化したのかまだよくわかっていない。なので、あれこれと試されているところだった。
ただ、エイミーは限りなく16歳に近い15歳だった事もあり、成長が止まっていたのではないかという疑いも残っていると話しているのを、レミが聞いている。
部屋はあの石の部屋の上にあり、この建物が、実験施設と被検体の部屋になっているようだとわかっていた。右隣の建物はここで働く人達の部屋や食堂などがあるようだと、出入りする様子から窺えた。向かい側の建物は、表向きの仕事部屋や礼拝堂になっているようだ。
そして左隣には大きな焼却炉と塔のようなものがある。何度か階下から出た荷車が荷台の何かを焼却炉に入れているのと、焼却炉から出した何かを塔に入れているのを見た事があるが、はっきりと見えた事は無い。
だが、最初聞こえていた唸り声や叫び声、吠えるような声などが段々と少なくなってきている事と、無関係ではないと、誰もがわかっていた。
やがてエイミーが修道士に引きずられるようにして戻って来た。
男女別の部屋にするなどという配慮もされていない。まあ、それどころじゃなくなると、わかっていたとでも言いたいのだろうか。
エイミーはベッドに放り出されるようにして倒れ込み、彼らは部屋を出て行った。
そして、錠の落ちる冷たい音がし、足音が離れて行ってから、エイミーが口を開いた。
「理性や知性を無くしたグループの人が、生きたまま解剖されたみたい」
「え……」
スレイ、セイ、レミが凍り付き、そして、レミは洗面台に這うようにして行き、もどしはじめた。
スレイとセイは、ベッドの上に起き上がった。
「そろそろ、実行に移そうぜ」
「そうだな。早い方がいいし、今夜は帝都で女神の降誕祭があるから、法王もいないし、修道士の数も減る。今日がチャンスだ」
レミも戻ってくる。
「うん。それに、ぼやぼやしてたら、隠してる能力もバレちゃうよ」
スレイもセイもレミも、脱走に備えて、能力を全部は申告していないでいた。
「エイミー、いいか?」
「うん」
そして4人は、その時を待った。
大きな宗教行事である女神の生誕祭では、子供の成長や人々の安全を願って、焼き菓子を食べる風習がある。一応スレイ達にも、夕食にその焼き菓子が付いて来て、スレイ達は何の皮肉かと笑った。
が、菓子自体は甘くて日持ちのするもので、それをこっそりとハンカチに包んで取っておいた。
そして、チャンスを待つ。
定期的に巡回があるし、夜更かしや残業の修道士もいる。その上で、午前3時から3時半あたりが、最も起きている人が少なくなるらしいという観察結果を得ていた。
2時の巡回がおざなりになされる。どうせ被検体達は、日中の検査で疲れ果てて眠り込んでいるし、部屋にも建物にも鍵がかかっている。そう思っているから、決まった時間に一応見回るだけ、という感じになる。
レミが静かに身を起こし、それを見て、スレイ、セイ、エミリーも身を起こした。
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