第6話 選別

 スレイ達は、いくつかのグループに分けられ、部屋に入れられた。

 動物のような姿になった者。

 人の姿かそれに近いが、知能を失った者。

 人の姿を保っているが、理性を失った者。

 人の姿、知性、理性を保った者。

 一番少ないのは4番目で、スレイ、セイ、レミを含めて4人しかいなかった。

 次に少ないのは2番目と3番目で、10人。

 多いのは動物のようになったもので、23人。しかし、共食いや修道士に制圧されたりで、数を減らしている。

 最も多いのは、死んでしまった者達だった。

「なあ。何だったんだ、あれは」

 セイが虚空を睨みつけながらポツンと呟くように言った。

「俺達、特別奉仕員だろ?何にどうやって奉仕させるつもりなんだよ?」

 レミは怯えたように、体を震わせた。

「まあ、子供を集めて来るための方便だろうね。言われなかった?今後、還俗できないし、家族とも連絡は取れないって」

 スレイが言うと、セイがガバッと体をスレイの方へ向けた。

「まさか!?」

「わかってたんだろうな、こうなる事が」

 それを聞いて、レミが泣き出した。

 もう1人いる同じグループのエイミーという女の子も、泣き出す。

「ガラスの向こうから見てたやつがいただろう?あいつらが、首謀者か責任者だろう」

「何がしたいんだよ!?」

「それは僕にも……」

 それに、エイミーがしゃくりあげながら言う。

「私、聞いたわ。夢うつつだった時に。何か、やっぱり成長期の子供にしか影響しないとか、成功例が少なすぎるからもっと効率よくできなければとか、成功した被検体と失敗した被検体を解剖して比べてみればとか、石からの距離は関係ないようだとか」

 それに、各々が考え、青くなった。

「解剖?被検体って、俺らの事か?」

「だろうな。どう考えても」

「ひいっ!イ、嫌だよ、ボク、解剖なんて!」

「私だって嫌よ!」

 与えられ、閉じ込められている小部屋で、成功例と言われているスレイ達は震えた。

「原因はあの石か」

 スレイは、青い石を思い出した。ついでに、夢の中に出て来た男も思い出した。

 が、

(変な夢だったな。まあ、変な体験と見た事のない石を見た事で、こんな夢になったんだろうな)

と解釈した。

 前世や生まれ変わりを信じる人もいるが、前世も異世界も、スレイにはよくわからない。信じるも信じないも、考える根拠が無さすぎて、判断がつかない。

「見下ろしてた人、3人いたよね」

 レミが言った。

「ああ。1人は法王だったな」

 セイが憎々し気に言う。

「どこが法王だ。クソッたれ」

「もう1人の高そうな服の人、皇帝陛下よ。私、帝位に就いた時のパレード、帝都にいたから見たの。間違いないわ」

 エイミーが、どこかを睨みつけるようにして言う。

「皇帝陛下!?」

 流石に、スレイもセイもレミも驚いた。

「皇帝陛下までがこれに加担しているのか?陛下と法王ともう1人――実験の実務責任者かな――が組んで秘密裏に行わないといけない実験って何だろう」

 スレイが考え込むが、セイが押し殺した声で言った。

「そんなもん、後だ、スレイ。まずはここから逃げ出さないと、ヤバいんじゃねえか」

「あ、解剖」

 レミが言い、エイミーがビクッと体を揺らした。

(ここから逃げ出しても、国や教会が首謀者なら、どこか安全な場所なんてあるのか?)

 スレイはそう考えたが、それを言っても皆が怯えるだけだと思い、黙っておいた。

「大人しく従うふりをして、見張りの位置とか、逃げ出す隙とかを探ろう」

 それに、セイ、レミ、エイミーがしっかりと頷いた。


 しかし、事態はコクコクと進んで行った。



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