25話

「さてと。」

水谷は俺から木槌を奪い取ると、監視カメラのハードディスクを叩き壊した。

これで俺達の暴行の証拠は無い。

「まぁ、この町なら、こんなもんどうとでもなるけど、一応な。」

そう言って青山に向き直る。

「通報してポリと一緒にここの後片付けするのと、俺らにここを譲ってトンズラ、どっちにする?」

青山は少し考えた後、心底疲れたというようにため息を吐いた。

「この町から安全に出られるのか?」

「保証しよう。」

頭から血を流しながら、水谷は満面の笑みで答えた。

「薬局開設者として、ここの利益の3割をもらう、それでよければ、今日からここは清田君のモノだ。」

「はぁ?いない奴に3割も回して経営出来るわけねぇだろ?1割だよ。」

「じゃあ2割!」

「それ15%に落ち着くパターンですし、早く逃げたほうが良いですよ?」

長くなりそうだし、なんとなく目覚めかけてるチンピラがいるような気がして、俺は二人に割って入った。

水谷が紙切れを差し出す。

「手ぶらでここに行って「飯沼町の水谷の紹介だ」と言えば、アジトも足も引っ越しも手配してもらえるから、好きなとこ選びな。」

青山は少し考えた後

「印鑑はその中にある。通帳は来月分の在庫の支払いが済んだら、あんたらの口座に切り替えろ。」

受付カウンターのすぐ下を指差し、紙切れを受け取った。

「15%だからな!」

ついでに俺達を指差す。

「おう、分かったから早く行きな。」

水谷はそれに、ヒラヒラと手を降って応えた。

「さて、そろそろ警察が来そうだ。清田も一回消えといてくれよ、明日、いや、明後日には連絡するから、東山の家で待機しててくれ。いつかみてぇにさ。」

「わかった。」

言われて俺も、そそくさと退散する。


時間がいくらか遅くなったが、平然とカエデで酒を飲み、そのまま東山の家に転がり込んだ。

「今日なんか凄かったね。」

ホテルでの別れ際のあずさからの評価だった。人の頭を砕いた後は、流石に俺も、変なアドレナリンが出るらしい。


家に帰ったふりをして、あずさと別れた後、朝から数本、映画館で映画を観たり、観ながら寝たりしながら時間を潰し、どうにも手持ち無沙汰になった夕方頃、俺は再び東山母娘の部屋に向った。


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