第2話
「んで?次どうすんの?」
「わかんね。」
そんなわけで俺は、同期とラーメンを食いながらの進路相談をしていた。
「このラーメンうまいな。」
「おう、最高だろ。」
お前の手柄ではないが、それにしてもうまい。
「ここのラーメン、麺の硬さ選べないんだよ。店長が混み具合とか提供にかかる時間把握して、最高の能状態で出す自信があるんだって。」
「へぇ、なるほど。」
スープは濃い鶏肉ポタージュだが、丁寧にエグみを除きつつ、溶けた骨の味すら心地よいし、そのスープに絡む中部と麺は、柔らかすぎれば重く、硬すぎれば麺と絡まないだろう。たしかにその自信に違わぬ、名店の味だ。
「自分がはっきり自信を持って、良いものを提供すれば、顧客は見抜いてついてくるって、俺はここのラーメンに教えてもらったんだ。」
この同期は意識が高い。俺には無理だ。
「ごちそうさん、わりぃな、お前も病み上がりなのに。」
こいつは最近、病気から復帰したばかりだ、働きすぎで肺に穴があいて、半月ほど療養していたらしい。
「これから無職になるやつから金取れねぇよ。まぁ、餞別だ。」
そう言って奴は俺に奢ってくれた。
「さすが、管理薬剤師に内定してるやつは言うことが違うなぁ。」
「手当で2万しか増えねぇけどな。」
「ひえー、やっぱこの会社での出世はハズレくじだな。」
「まぁ、それでももうちょい気張ってみるさ。いい経験だよ。」
「そうか、まぁ、俺の分まで頑張ってくれ。」
精力的に働いて、肺に穴をあけても、安値で雑務を押し付けられることが「出世」でも薬剤師という仕事にモチベーションを持てる彼を、俺は素直に尊敬する。
俺にはマネできない。
程なく俺は地元に帰った。
幸い、丸2年間正社員で薬剤師を続けたので、そこそこ金銭には余裕があった。
ゆっくり引っ越しをして、さてこれからどうしようか、と思い求人サイトを巡る。
「どこもピンとこねぇなぁ。」
なになに、個人経営のパート薬剤師、いまどき薬歴が電子化されず紙に書くスタイルで時給2000円。大手ドラッグストアチェーンはどこも時給2500円くらい。
お次は正社員年収600万円保証で、年間処方せん枚数12000枚、これ何人でさばいてるんだ?
薬剤師の数は年々増えて、今は大体32万人、結構いるし、レアリティなんてタカが知れてるみたいだが、まだまだ薬剤師免許を持っているだけで、給与は良い。
「それでバカに顔面殴られてりゃ世話ねぇよなぁ。」
二度とそういう目に合わない為に、就職先は吟味したい。
そんな感じでちょっとずつ貯金を崩しながら、物のない狭いアパートでスマホを眺めてダラダラして、腹が減ったらカップ麺を食うだけの生活に飽きた頃、同窓会の連絡が来た。
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