41.第七席・神楽雨竜

 〈ザ・ブレイブ〉のクランホームにて、今年最大級の催しが行われた。

 結成七周年集会にメンバーのほぼ全員が揃い、その後のパーティーには〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉が来ると噂され、活気で溢れていた。


「で? お友達は来るのか?」

「えーと、〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉としては来ないです。顔も世間に知られていませんので、友達枠です」


 〈ザ・ブレイブ〉の団長はパーティーが始まる前に大晴と話している。

 団長は慧に直接会ったことがないので、この機会に呼んでほしかったようだ。


「まあ、良いか」

「ですが〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉第七席の神楽雨竜かぐらうりゅう――私の父を呼んだので、そっちの対応もよろしくお願いしますよ」

「げ! 雨竜さん、やっぱり来るのかー」


(団長と父さんは顔見知りであるのは知っていたが、どんな関係なのだろう?)


「慧君と話せるのなら、まあ……」


 パーティーまで残り時間わずかになって、会場の騒がしさも増していく。





「――ご来賓の皆様、ステージを御覧ください。」


 立食のような形でパーティーに参加していた人たちは、それぞれの話を止め、ステージの方へ視線を向けた。

「この度七周年記念ということで、特別なゲストがこのパーティーに足を運んでくださいました。我が〈ザ・ブレイブ〉のメンバーである神楽大晴の父君、〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉第七席、神楽雨竜かぐらうりゅう様です。盛大な拍手をお願いします。」


 その瞬間、会場が沸いた。

 大声援で会場が揺れるような錯覚に陥いる。


 〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉はそれほどのスターなのだ。


「〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉第七席の神楽雨竜です。〈ザ・ブレイブ〉の皆様、Sランク昇格おめでとうございます。団長の龍之介りゅうのすけとは古い仲で……」


 雨竜の挨拶が行われている間、団長の龍之介りゅうのすけと大晴、慧の三人は離れたところで、顔を合わせていた。


「慧君、今日は来てくれてありがとう」

「いえ、大晴の頼みなので……」


 慧は何故自分が団長にここまで好かれているのか分からず、しっかりとした反応ができなかった。


「いやー、慧君には絶大なる恩があってね……ぜひお会いして、感謝を伝えたかったのだよ」

「何かありましたっけ……?」

「実は一年前、私のパートナーを救っていただいたんですよ。迷宮ダンジョンの罠にかかったパートナーをね」


 当時はただの団員だったその女性は現在団長のパートナーで、結婚も済んでいる。

 その時は、団員一人の救助してもらったという認識だったが、話を聞くに慧君が助けてくれたというので、団長としてではなく一人の男として感謝を伝えたかったようだ。


「ああ、無事で良かったですよ。迷宮ダンジョンの罠は危険なものが多いですからね」


 慧はそういった経験が多かったので、どの女性が団長の言うパートナーなのかは分からなかったが、とりあえず話を合わせる。


「え? 団長、そういう理由だったんですか……俺はてっきり勧誘とかの目的だと思っていました」

「いや、普通に考えて無理だろう。〈調和の象徴ハーモナイズシンボル〉の第一席だぞ」


 大晴自身も慧と久しぶりに会った。

 正直言って、いきなり友人に失礼なことをしないか結構心配していたのだ。


「すみません」


 大晴は勘違いを素直に謝った。

 団長も気にした様子はない。


「慧、久しぶりだけど元気にしていたか?」

「俺は相変わらず日々鍛錬しているよ。大晴も出世して順調のようだな」


 三人は近況報告や世間話をする。

 後に大晴の父親も交えて、四人で食事と会話を楽しむのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る