39.輝星の箱舟

「お呼びですか? 団長」

「おう、大晴、来たか。まあ座れ」


 大きな窓の外は蒼く、街が眼下に広がっているのが見える。

 奥の方にはアンティークな執務机のセットがあり、椅子に腰掛けている人物が大晴に話しかけた。


 ここは〈ザ・ブレイブ〉のクランホーム。

 団員が集まるビルだ。


 〈ザ・ブレイブ〉はNES所属のクランでは最大級の規模を誇る。

 その財力と影響力は、そこらの団や企業では足元にも及ばない。


 ブレイブタワーの上階にある団長室に大晴は呼び出されていた。


「この前、ダンジョンで犯罪者と戦闘を行っただろう?」

「はい」


 大晴たち三人が戦闘をした男たちのことで、話があるみたいだ。

 凶悪な犯罪者の裏には、それ相応の犯罪組織がついているものだ。


「その時の犯罪者の指輪を調べた結果――〈輝星の箱舟アーク・オブ・ブライト・スター〉の物だと判明した」

「それって……」

「ああ、世界を股にかける犯罪シンジケートだ。強盗、殺人、誘拐、拷問、人身売買、麻薬売買、兵器売買、資源強奪、なんでもやってる」

「もしかして、目をつけられたりしましたかね……」

「大丈夫、大丈夫。俺が昔、幹部級の人物をぶっ殺したことあるから、すでに目はつけられてると思うよ」


 大晴は心配そうに聞き返すが、団長はもっとヤバそうなことを笑いながら言ってくる。

 過去にそんな組織と敵対しながらも、生きていることに驚きだ。


 本当に大丈夫か? と大晴は思うが、団長の強さを慧の次くらいに信じているので、ひとまず安心する。


「ただ、あいつらの組織は巨大だ。いろんな場面でちょっかいを掛けられるかもしれない。そのことを頭に留めておいた方が良い……まあ、俺たちに喧嘩を売るような愚かな組織ではないはずだから、あんまり心配しすぎんな」


 最後は頼れる大人、という雰囲気で大晴に警戒するように伝えた。


「そうだ! 今度、団結成七周年記念集会とSランク団昇格のパーティーがあるから、お友達呼んで来てよ」


 このお友達とは慧のことだ。

 慧はたった六人で中国に巣食っていた悪夢ナイトメアを討伐した英雄の一人だ。


 伝説に残るような功績とその強さから、神聖視されることも珍しくはない。

 彼ら六人は超越S級能力者として、最強の座に君臨している。


 そんな慧の友人である大晴に遠回しに、会わせろと言ってくる。

 団長はとても頼りになる人でクランを大事にしているのだ。

 クランの発展のためなら、どんな手段も厭わない。


 彼の手腕によって〈ザ・ブレイブ〉は成長できたと言って良い。

 お世話になっている人の頼みだ。

 大晴はどうやって慧を誘うか、考えるのだった。

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