3章 神の祝福

35.新人類と新世界の姿

「くひひ!」

「ひゃはっ!」


 二人の男はぐったりとしている女を見て、下卑た笑い声を出す。


「おい! やめろ! 『ブシュッ!』――カヒュッ……」


 その女性を守ろうと下郎共に剣を向けていた戦士風の男性は、気配を消していた長身の男に後ろから喉を掻っ切られ死亡する。


「お前ら……女には手を出すなよ……傷つけない契約だ」

「えー、リーダー。ちょっとぐらい良いじゃねっすかー」

「バカ野郎! 女は依頼者のものだ……でも、売れそうな装備は剥ぎ取っていいぞ」

「うひひ! じゃあ、しっかり丁寧に脱がせてやりましょ〜」


 彼らは、盗み、誘拐、殺人、人身売買などを取り扱う犯罪組織の構成員だ。



「しっかしリーダー、神の祝福ゴッド・ブレスさまさまっすね!」

「ああ、この七年間、たんまり稼いだからなぁ」



 七年前、中国の奪還に成功したNESは世界中の称賛を受けた。

 少しずつ世界は復興して、元の地球に戻るかと思われた矢先、世界中の生命は頭に響く声を聞く。


 ――生命の限界バイオリミットを超越しました

 ――魂の構造が変化します

 ――システム起動……完了しました


 これが全ての人々の脳内で再生された音声だ。

 この声を聞いただけでは何も変化は起きなかったが、次の声を聞いた人は新たな力を得た。


 ――神の祝福ゴッド・ブレス適用可能な魂です

 ――承認しますか?


 これを承認した人々は凄まじい身体能力を獲得し、エニグマと対等に渡り合えるようになった。

 それを悪用して人を害する者たちが現れ始め、警察や軍人ですら対応しきれずに、一度世界は無法世界へ姿を変える。


 しかし、NESと各国の協定により、彼らの抑止力となる存在――NES最高戦力の十席――を立て、法の整備と対能力者制圧部隊の結成などを早急に行った。

 結果、表立っての犯罪は減り、犯罪者は厳しく罰せられるようになる。


 神の祝福ゴッド・ブレスを受けるには、エニグマと戦う意志を持てば良い。

 善人も悪人も関係なく力を得ることができるのだ。


 それはステータスと呼ばれ、数値化された強さは、犯罪や差別の新しい要因になった。


 この神の祝福ゴッド・ブレスは慧たち想力覚醒者アポストル六人が出会った神の仕業だ。

 神にとって人間同士の争いに興味はなく、エニグマと戦うための戦力を地球に置くことのほうが重要なのだ。

 だから、エニグマと戦う意志を持つものには等しく力を与えた。


 神の祝福ゴッド・ブレスを受けたものは、ステータスを表示できるようになり、エニグマとの戦闘によって戦闘力が上がる仕組みになっている。


 現在では個人の戦闘力を評価して、警察や軍人、戦闘団体などの募集とランク付けを行っている。


 ステータスを得た覚醒者または能力者と呼ばれる者たちの中でも、強さに差があるからだ。


「リーダー。なんでわざわざ迷宮ダンジョンに潜って攫うんすか?」

「……偽装しやすいからだ」


 今の世界では各地にあるゲートから、迷宮ダンジョンというエニグマの生息地に潜り、戦闘力を鍛え、エニグマに関する仕事を行うのが主流だ。

 そこでは、エニグマに殺されてしまうことも珍しくないため、犯罪の隠蔽によく使われる。


 死体はエニグマに食われるので残らないし、迷宮ダンジョン内は監視が無い。

 迷宮ダンジョンは犯罪の温床なのだ。


 だが、迷宮ダンジョンは犯罪者だけでなく、むしろNESの対エニグマクランの団員の方が多い。

 彼らが戦闘力を鍛えるため、迷宮ダンジョンを利用するのだ。


 そのため、完全に危険というわけではない。

 それでも、迷宮ダンジョン内で会った他人に心を許してはならない――という掟ができるほどだ。


「それにしても、ウザい能力者がいたもんですね〜。リーダーの能力がなければ結構厳しい依頼でしたよ〜」

「たしかに、俺も思ったっす!」

「多分、索敵特化の能力者だろう……俺の隠密は見破れなかったみたいだがな」

「さすがっすね!」


 彼らは話しながらも手は休めない。

 いつ他の探索に来た団員に出くわすかも分からないのだ。

 見られる前に撤収することが重要だ。


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 名前:エド

 性別:男

 年齢:34


 戦闘力:368


 器:【隠密:Lv.3】【センス:Lv.1】

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 名前:ハドソン

 性別:男

 年齢:28


 戦闘力:211


 器:【知覚強化:Lv.1】

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 名前:ヒューゴ

 性別:男

 年齢:26


 戦闘力:199


 器:【筋力強化:Lv.1】

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