32.理想郷ヴァルハラ
慧は自身の精神世界へと没入し、ワイズと共に新しい能力の構築を始める。
慧は精神世界の法則を変え、時間の流れを加速させた。
――精神世界の時間の流れが加速し続ける。
肉体と精神は完全に分離し、肉体は現世に閉ざされたまま、精神年齢だけが加算されていく。
精神時間の加速度は無限大に発散し、現世の経過時間をゼロに収束させた。
これは慧の主観で起きていることなので、アルファたちには一瞬の出来事に感じるだろう。
何度も何度もワイズとの実験を繰り返し、精神世界の時間を加速させていた慧の魂力が半分を切った頃、ついに完成した。
魂力は精神に依存する。
精神が摩耗すればするほど、魂力の補充に時間がかかるようになり、その精神が生涯生成する魂力量は特別な理由がない限り変動しない。
慧は
慧とワイズにとっては人生が何度も輪廻するほどの時間――アルファたちにとっては一瞬のことだった。
「すぅ……はぁ……」
呼吸と同時に慧の髪の毛の色が一部抜け落ちていく。
精神世界を加速させていたストレスが、肉体に影響を
〈
――闇に覆われた
まるで黒一色のキャンパスに白い絵の具を一滴垂らしたようだ。
本来なら黒に塗りつぶされてしまう白だが、ジワジワと慧の白い世界が広がっていく。
『ますたー。順調です〜。
「ぐっ!」
『ますたー!
「まだだ!」
『115%……130%……150%!』
「うおぉぉぉ! があぁぁぁ! ――!」
慧の最後の踏ん張りに【夢幻世界】の方が耐えきれず――世界が白に染まった……
その瞬間ただの白い世界だった慧の〈
六人は自分の姿がその巨大な瞳に映っても、もはや先程のような悪寒は感じなくなっていた。
宮殿の王座につく慧と周囲に付き従う狼とワタリガラス、そして戦と饗宴をする戦士たちを、
すでに慧の世界へ引きずり込まれてしまった
加えて一度認識してしまった幻は、世界を構成する素となり、相手の思い込みすら世界の一部となる。
ヴァルハラ――地球の知識をデータとして知っていた
その認識が収束し、〈
もちろん王座に座るのは北欧神話の主神オーディンではなく慧だ。
しかし〈
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