29.悪夢との戦闘(1)
そこは夜の闇に包まれていた――いや、宇宙のような暗黒だ。
上下左右全てが暗黒で、平衡感覚がおかしくなってくる。
その中心と思われる場所には、さらに黒い影があった。
大きな岩石や魔法、魔力流がゆっくり回転している。
「まるで、小さな宇宙だ」
そんな呟きと共に、浮いている岩石を足場にして進み出す。
未だエニグマに動きはない。
エニグマの親玉と思われるものに向かって、シュタールが足場の岩石の一部を斬って蹴り飛ばした。
しかし――エニグマの手前で結界に阻まれてしまう。
マザーゲートにあった結界ととても似ている現象だ。
「結界が張ってあるようだから壊すしか無いわね……私とケイとオドゥオールは一斉攻撃で結界を破る準備を、スキアーとシュタールとツーユーは結界を破った瞬間攻撃をしてくれるかしら?」
アルファが指示を出すと、一斉に準備を開始した。
正直言って何も現状把握できる要素も無ければ、知る人物もいない。
完全手探りの状態だが、失敗しないよう全員が全力を尽くすのだ。
そのように考え、最高威力の技の発動準備を開始する。
〈胡蝶の夢〉〈千魔の太刀〉
慧が胡蝶の夢で作成した新たなアバターのダークロードは、攻撃力に特化した姿だ。
ドラゴニュートは戦闘で器用に立ち回ることができるが、ダークロードはとてもピーキーな能力を持っている。
器用性を捨て、只々一撃必殺を求めた結果、使える場面がかなり限られてしまった。
ダークロードに備わった能力のうち、抜群の破壊力を持つ千魔の太刀。
これは人間には長すぎる刃に慧の魂力と遠心力を以て、途轍もない切れ味で斬り伏せることができる。
ただ、大きすぎる太刀は移動に制限がかかってしまうのだ。
俊敏性を捨て、攻撃性を追求した能力だ。
〈
アルファは左右で異なった瞳系の超能力を発動する。
そのオッドアイの眼差しは視点の先――結界部分で交差する。
左目の王眼によって、右目の滅眼の効果が増すのだ。
異なる神聖幾何学模様を左右の瞳に浮かべたアルファは、壊れるまで結界を見つめ続ける。
〈精霊王憑依〉〈
天より暖かな光がオドゥオールへと降り注ぐ。
荘厳な光が収まった後、そこには神聖さを感じさせる民族衣装を身に纏い、意匠を凝らしたアクセサリーを身に着けたオドゥオールがいた。
芸術性が高いだけでなく、戦闘用に様々な増幅効果を持っている。
更には背中の光翼が発する暖かなオーラは、暗い空間で異彩を放っていた。
ダークロードの王者のようなマントと暗いオーラが、まるで物語に登場する魔王のような慧。
姿は人間のままだが、その眼力には神聖な幾何学模様を浮かべ、すべてを見通しているかのような開眼者のアルファ。
異国の王族のような服装に光り輝く翼を持ち、精霊王という自然の権化を憑依させたオドゥオール。
三人の攻撃は、暗闇の先で未だ結界の殻に籠もっているエニグマにを叩き起こした。
エニグマの結界に攻撃が当たった瞬間僅かに拮抗したが、攻撃の威力に耐えきれず、結界は割れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます