27.集いし希望

「しかし広い、広すぎる。かれこれ三十分は一直線に飛んでいるが、沼地が終わることは無いし、シュタールが見つけた次の階層入口とやらも無い」


 シュタールはすでに、初めの山岳地帯を抜けて、次の階層へと進んでいたようだ。

 山岳に巣食うワイバーンの群れを討伐し、探索した巣穴にあった深い穴が、次の階層入口となっていたようだ。

 詳細は〈星の記録〉に画像付きで情報が上げられていて、それをワイズが教えてくれた。

 他のことに集中していてもワイズのおかげで、知らせを逃すことはない。


「やっぱり、ワイズを創って正解だったな」


 現在、ルートを記録するために現世と接続していたワイズは、慧の呟きを耳にする。

 創造主に認められ、さらに褒められたことで、密かに舞い上がるのだった。





「え? もう皆合流したって?」


 慧はそれから沼地を抜け、順調に階層を進めていた。

 今は次の階層への入口を見つけたところだ。

 沼地の階層以降はそこまで時間がかからなかったが、第一階層で他の人より時間を食ってしまったようだ。


『ますたー。みんな第六階層にいるみたいだよ〜』

「ん〜。今自分が何階層か分からないから、とりあえず進もうか」

『うん。じょうほうこうかん? してまってるって〜』


 相変わらず舌足らずな子供が、話す声が脳内に聞こえてくる。

 この道中で慧はワイズに愛着が湧いてきていた。

 話しかけ、褒めることで、もっと頑張ろうとしているところが、とても可愛らしい。

 ワイズも積極的に会話をしようとしてくるので、暇になることはなかった。


 階層の判断がつかなくなってしまったのは、慧が転移魔法陣によってどこかへ転移してしまったからだ。

 そこから階層の判断がつかなくなり、手当たりしだいに進みまくる、という方法を取っていた。

 出現する敵も弱いものしか出現しなかったので、結構雑に探索し、階層を進んできた。





「――だから、ここは違うのではないか?」

「――いや、やはり、この先だろう」

「――まあ、全員で行けばなんとかなるだろ?」

「――あまり侮らない方が良いと思いますが……」

「――私もそう思うけどねー」


 先に集合していた五人の想力覚醒者アポストルたちが、大きな扉の前で話し合っていた。

 門の奥からは異様な雰囲気が漂ってきている。

 その奥にいるのだろう――元凶が。


 そんな中、アルファが最初に慧が来たことに気がついた。


「ケイちゃん、少し遅かったねぇ。何かあったの?」

「ああ、大したことじゃないんだが……」

「はは! 迷ってたんじゃないのか?」


 アルファが心配する側で、シュタールがからかってくる。


「いや……第一階層の沼地が思ったより厄介でな。次階層の入口が縦穴じゃなかったんだよ。一時間ぐらい進んでいたら地形が変わってきて、黒い森に着いて、そこにいた巨大トレントを倒したら、魔法陣が足元に出現してどこかに転移させられたんだ。これでも結構急いだんだぞ?」

「まあまあ、ケイが無事ならばもう良いだろう……」


 オドゥオールは心配性すぎるアルファと、からかうシュタールをたしなめる。


 それから――各自情報共有を済ませ、戦闘準備を終えた。

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