24.奪還作戦開始
世間の動きとは別に、慧たち
慧も戦場で遅れを取らないよう、〈胡蝶の夢〉で精神世界に作成した自身のアバターや武装を最終確認していく。
「ふう……あまり精神世界を圧迫しないアバターや武装は、その分効果が落ちる。反対に容量が大きすぎると精神力が弱体化してただの木偶になってしまう。ここの調整がなかなか難しかったが、工夫して最高の状態で準備が完了できたな」
壊れてしまった魔剣グラムは無事に修理できた。
前回と同じく多すぎるの魂力には耐えられないが、それならと別の方法も用意した。
世界中のどこを探しても精神から具現化された武器を直せる鍛冶職人は存在しない。
そのため自分で直す必要があった。
だから貴重な精神力を削って、製鉄と鍛冶の神である
慧の想像で作成したアバターであるため、神のような鍛冶を行えるわけではない。
完全に劣化バージョンだ。
現在は、精神世界で具現化した素材を元に修理することが限界だ。
それでも魔剣グラムなら直すことができたので、再び武器として扱えるようになった。
「――ふむ。皆、準備ができたようだな」
慧は〈星の記録〉でアルファやスキアー、シュタール、オドゥオールの位置を確認する。
『あ、あー。聞こえてる? こちらアルファ。全員準備はオッケーかい?』
「こちら、慧。準備完了です」
『――了解。オドゥオールとスキアーの超能力は発動にもう少し時間が必要みたい。少し待ってて……ではその間に最終確認をしましょう。ツーユー意外のメンバーは私の合図で一斉に攻撃をして。マザーゲートの結界を一気に破壊するわ。ツーユーが一人では破壊不可能だと言っていたから、この結界は五人全員で最高火力で壊しましょう』
『オドゥオール準備完了だ』
『皆様、お待たせしました。スキアー、準備完了です』
『よし、星時計で一分後攻撃を開始する』
その言葉で全員が適度な緊張感を持ち、戦闘開始の合図を待った。
『10秒前。――5、4、3、2、1、開始!』
「〈
アルファの瞳に神聖幾何学模様が浮かび上がる。
「〈
スキアーの周囲に真紅の液体が集まっていく。
「〈樹霊憑依〉〈無為自然〉」
オドゥオールは精霊を憑依させ、自然の権能を行使する。
「〈武器召喚〉〈
シュタールはシンプルな形状の直剣を召喚し、剣技を繰り出す。
「〈胡蝶の夢〉〈
慧は作成していたアバターに換装して暗黒の球体を結界に押し付ける。
マザーゲートの結界が五人の一斉攻撃によって大きく揺れた。
徐々に罅割れていく結界の内部からは、エニグマたちの悲鳴のようなものが聞こえる。
ついに耐えきれなくなった結界は、聴覚をひどく刺激する大きな金属的な音を立てて壊れた。
マザーゲートの外側にいた低位のエニグマたちはパニックに陥る。
慌てふためくエニグマはお互いに傷つけ合い、踏まれ、少なくない数が死んだ。
この混乱に乗じて、慧たち
マザーゲート外にいるエニグマは、NESの超能力者たちや軍が処理する予定だ。
大いなる存在に守られていたはずの彼ら――エニグマの聖域は、あっという間に戦場と化した。
蜂の巣をつついたような騒ぎで四方八方に散っていく。
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