21.斥力結界イージス・オクタグラム

「うわぁ。これはどうにかしないとダメだな」

「――おーい」


 遠くから統一された戦闘服を着た集団がこちらへ向かってきていた。


「私はNES日本支部東京軍第六小隊隊長、帯刀海斗たてわきかいとだ。あなたは?」

「俺は近衛慧。一応NES所属だ」

「もしや、NESの上層部は超能力者の集団だと聞いたことがあるが、そこの人か? それで先程のエニグマは? 凄まじい戦闘だったみたいだが……」


 そう言って帯刀隊長は辺りの戦闘の余波で崩れたビルを見た。

 ビルの倒壊により粉塵が巻き上がって視界が悪い。

 それに所々、真円の型でくり抜かれたような大小様々な穴が開いている。


「この穴は?」

「それはあの巨大ドラゴンのエニグマの魔法で開いたものだ」


(やはりか……信じられないほど高威力な攻撃だ。魔法……まるでレーザーで削り取ったみたいだ)


「俺はそろそろ行きます。帯刀さん、NESの報告には、見たこと全て伝えてもらって結構です。俺の方からも報告は入れますが、複数箇所から報告はあったほうが良いでしょうし……」

「分かりました。慧君、君はしばらくこの辺りにいるのかい?」

「ええ、少し……」

「そうか。あと二時間後にNESが〈斥力結界:イージス・オクタグラム〉を起動する。この辺りは結界の斥力によって吹き飛んでしまうから、それまでには離れたほうが良い」

「あ、そうだったんですか。分かりました。ありがとうございます」


(〈斥力結界:イージス・オクタグラム〉……たしか何十年か前に隕石群の襲来を防いだものだったか?)


 挨拶をして彼らは分かれる。

 慧は崩れ去ったエニグマがいた近くで何かを始め、帯刀隊長の小隊は撤収作業を開始した。


 すでに周囲からはエニグマの気配はない。

 慧とドラゴンの戦闘に巻き込まれたものもいれば、危険を察知して逃げ出したものもいる。

 早々に隊員たちは撤収していき、辺りには慧だけが残った。



 ――重要施設保護結界設置・イージス作戦成功――

 ――悪夢の眷属級・大型エニグマドラゴン『【戦闘力:2700】オーバー』討伐完了――

 ――戦死者5名、負傷者122名――

 ――商業区ビル群倒壊、兵器損傷……など被害甚大――

 ――2099/6/11/18:47――


 ――NES日本支部東京軍報告書抜粋――

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