18.心魂再構築
「よし! 精神汚染は結構優秀な能力かもしれないぞ」
相手の自我を乗っ取るほどの強力な精神汚染は時間がかかってしまう。
ならば、一瞬で効果が出る場所を探せばいい――そう考えた。
翼の神経系の中心と繋がる精神、そのごく一部を汚染して制御を滅茶苦茶にした。
すると翼をはためかせようとしても、関係のない挙動を示す。
簡単に言うと脳が「歩け」と下半身の筋肉に命令しても、足が動かないといったことが起きるのだ。
ドラゴンが地面へ向かって落ちている。
慧との距離がどんどん近づいていき、ドラゴンの全容がはっきりと見えてきた。
「――QVAsQVAs」
こちらを睨めつけるように見ながら、鳴き声とともに新たな魔法陣を展開した。
先程よりも小さな魔法陣は魔術を発動し、ドラゴンの体に浮力を与える。
「翼を動かさなくても飛べんのかよ……」
ドラゴンはまるで「仕切り直しだ!」とでも言うように、雄叫びを上げる。
慧とドラゴンの接近戦が始まった。
ドラゴンの突進を寸前で避ける。
慧は認識をずらしたり、空中での移動を挟んだり、トリッキーな動きで攻撃を躱していた。
対してドラゴンは翼の制御ができないため、超高速で直進してくるのみだ。
地面やビルの残骸にぶつかっても何ともない様子で、次々に向かってくる。
ドラゴンには慧が有効打を与えられないことを見抜かれていた。
執拗に攻撃を繰り返してくるドラゴンを躱しながら、慧は倒す方法を考える。
(こいつ……精神汚染が効きづらくなったな。接近戦に移ってから、何度か魔術の発動を許してしまった。その中に精神汚染から身を守る魔術があったのか?)
「ちっ! またかよ!」
「Qoqoqoqo!BCXK!INZy!」
〈
最初に放ったあの赤黒い光線は拡散バージョンもあるようだ。
攻撃の軌道を逸らすことに成功しても、すべてを避けきることができずに、体に風穴が開く。
しかし慧はその衝撃は受けても、痛みを感じる前に再生して復活する。
死ぬ直前、保険でかけていた心魂再構築が発動しているのだ。
これは、瀕死の状態になった瞬間に心魂を再構築するという能力だ。
禁呪や禁忌法術、犠牲魔法といった分野に存在するものと似ている。
想力に覚醒したおかげで超能力の制限を突破し、実現できた能力。
しかし、この能力は戦闘中に再び発動するのは難易度が高い。
この戦闘が始まる前、丸一日かけて準備していた二回分の心魂再構築は今ので最後だ。
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