3.先天覚醒者と後天覚醒者
西暦2099年現在、科学技術の発展により、人類は隆盛を極めていた。
科学とは――自然科学、社会科学、人文科学の総称であり、様々な分野へと分かれている。
自然科学は宇宙開発やエネルギー問題の解決にまで至り、社会科学は政治や経済の面での飛躍を見せた。人文科学の発展は、国際レベルで差別や格差を減らし、全人類の考え方に大きな統一が起きていた。
人類の進化――と言っても過言ではない。
いったい何がこれを
――
それは24年前の2075年に、電脳世界で行われた
超能力者集団の代表と自称する――アルファ・セイントと名乗った者が、会議中の電脳世界を支配し、一方的に話し始めた――。
そして世界はアルファ・セイントの要求を受け入れた――要求の内容や受け入れた理由の詳細は分からないが……
この事件をきっかけに、超能力者の存在が各国の首脳陣の間で認知され始め、社会に溶け込むようになる。
現状、この組織に対抗できるものはいない。
どの国も逆らうという選択はしなかった。
その結果がこの24年間だ。世界が平和に包まれ、技術の進歩は国をという壁を超え人々を豊かにした。
「――という歴史があるんだよ」
「慧はアルファビリーバーズなのか?」
ある日の昼下がり。
国立防衛大学附属軍事高校の敷地内で、慧と大晴の二人はこんな話をしていた。
「いや、俺は違う。それにアルファビリーバーズは
「慧は?」
「俺は
「んじゃあ、俺もケイビリーバーズを名乗ったほうが良いか?」
嫌そうに顔を顰める慧に、大晴は冗談を言う。
「確かに……俺のやってることは、アルファ・セイントとほぼ同じだと思うがな……」
実際に慧は、大晴たち
「まあ、そんなことより――」
慧はおしゃべりに夢中になっている大晴に喝を入れる。
「いでぇっ!」
「意識がそれているぞ! 修行に集中しろ!」
修行中の二人は友達関係ではなく、師弟関係なのだ。
大晴の肩を手に持った警策で容赦なく叩く。
(……勝手に歴史を話し始めたのは慧だろ!)
まだ文句を言っている大晴。意外と反抗的な弟子だ。
「――喝!」
「痛って!」
こうして午後の時間は過ぎていく。彼らの学校は自由な時間が多い。
最新の技術が備わった訓練施設を使うため、生徒たちは通うのだ。
「なあ……弟子は増やさないのか?」
学校から寮ビル区画への帰宅途中――ショッピングモール区画にて、大晴は疑問を口にした。
どうやら、慧が弟子を増やさない理由が気になったようだ。
「大晴ほどの資質を持つ者がいない。それに増やし過ぎたら、自分の修行ができないだろう」
「いや、慧。お前はもう十分じゃないのか? 超能力の練度、すごく高いじゃないか」
手を頭の後ろに組み、ゆったりと歩きながら聞き返す。
「それは既知の超能力に対して言えることだな。未知の超能力は練度云々の前に使用者がほぼいない。それに自分で作って、超能力の可能性を開拓していくから面白いのさ」
超能力の既知と未知に関しては
超能力とは、開拓していくものだ。この認識は、
前者は既知となった超能力の習得に時間を費やす。それは超能力の習得難易度はとても高く、才能の関係で習得しきれないからだ。
反対に後者は、様々な超能力に適性があるため習得速度が速い。
よって、既知の超能力というレールを敷くのはいつも
「アルファ・セイントも開拓者だぞ。〈精神感応〉などの分野を開拓したんだ。」
既知か未知か、それを知るには方法がある。先天覚醒者専用のネットワークが独自に広がっているのだ。
〈星の記録〉という超能力を発動する。すると、星のデータベースにアクセスすることができる。
様々なものとリンクしているため、発動者の脳内でインターネットに接続したり、書類を改変したり、人の記憶を覗くことも可能だ。
〈星の記録〉の下に形成されているシステムは、すべて掌握できると言っても良い。
ただその危険性から、アルファ・セイントは限られた者にのみ使用方法を明かしている。
慧もその一人だ。
〈星の記録〉に記録されている物事は、既知と分類する。反対に記録されていないものは、未知と分類する。
ちなみに、〈星の記録〉は未知の超能力だ。
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