第8話 美人が無理して演じるツンデレは即落ちですが?
休日の楽しみは終わらない。
俺はスポーツなどで遊んで昨日のうちに、
今度は二人が知っているお店に連れて行ってくれるらしく、俺は流されるままに目的地へと向かった。
住宅街の奥、土地勘がまだそこまでないので初めてみる古びた外観を横目にスマホの地図を注視しながら二人を探した。
街の
「すまん。少し迷った」
「昨日は私達が遅れたので、お互い様ですね」
「
出会い頭になんて言い草してくれるのだろう。
今日の神代さんは服装がドッキングオフショルダーのシャツにチュールスカートと、ややクールなコーデなのに、早速ギャップを作っている。
感情豊かだよな、神代さん。
「俺、何か悪いことしたか?」
「してないですよ。
「自分でしないのは言い返されるのが怖いからかな。かわいいじゃないか」
栗野が冷静に神代さんの言動理由を説明してくれた。
すると、神代さんはまるで裏切られたかのような顔をし出した。
「香夜ちゃんどうして裏切るの? さっきまで今日は安本くんに厳しくいこうって話しあってたじゃない」
そんな計画立てていたのか、今まで侮っていたが、神代さんには
「うーん、特に理由もないのに可哀想だと思いまして……」
「
反省させるために、やや強めに言ったら泣きそうな顔を浮かべていた。
女の子の泣き顔は俺だって何も出来なくなってしまうので、流石に
「今日の服装は神代さんらしい感じなのに、ご自慢のイメージはもう崩れているんだよなぁ」
「
「よしよし、もみもみ」
「なんで揉むのぉー」
「なかよしすれば、なかよしですよ」
いや、単なるスキンシップと解釈してくれるなら、俺もふとした瞬間に触る事ができるようになるので、正直栗野には期待しかなかった。
今すぐ栗野の胸を触っても怒られないだろうけど、道端で許されるのは同性同士までだろう。
「というか、神代さんはブラしてきてないのか? 見ている限り凄く柔らかそうなんだけど」
「後で揉ませてあげるんだから、余計なことは言わないで!」
「仕方ないなぁ」
俺は、言質を取った事に満足して一旦引いた。
……やったぜ!
「まあなんだ。攻めるのなら、俺が
「あれ、今日の服装はお気に召しませんでしたか?」
栗野はそう言って、ひらひらとしたミドル丈のプリーツスカートの端を指で摘んでウインクして見せた……モデルになったつもりかな? 似合いすぎだし、様になりすぎだろ。
「二人とも99点だよ。後で帽子買おうか。絶対に似合うよ」
「言い方が
「そうかもな。イヤなら断ってくれていいぞ」
「別に。安本くん以外に見てもらおうだなんて思ってないし……」
その声は若干小さくて聴こえにくかった。
「何だって?」
「イヤじゃないから大丈夫だって言ったの! 安本君的には、帽子込みで100点満点なんでしょ?」
「ああ。客観的に見たらそのままでも十分満点だけど、その方が更に
「じゃあ、後で買いに行こ? 香夜ちゃんもいいよね」
「ええ。楽しみです!」
今からウキウキな気分だったが、今の話をしよう。
「それで、後々の話は今置いておいて、今日は二人が連れて行きたい場所があるんだろ?」
「私達が、というより
「それは何処なんだ?」
「漫画喫茶店です!」
そういえば二人とも少女漫画が好きなんだっけ……俺はあまり漫画読まないから、この機会に読んでみるのもアリだな。
俺と神代さんは場所を知っている栗野に案内され、すぐ近くにあった建物へと入って行った。
気にしてはいけない気がしたが、建物の名前が『ナラティブ・ホーム』なのは、何か卑猥に感じてしまった。
それなのに階段を上がる途中、言い出しかける奴がいた。
「ねえ、この建物名……三つ文字取り出したらラブ……」
「神代さんって、いつからアホの子になったんだよ」
言い切る前に浮かれて階段を転びそうになったが、台詞も行動もみっともない。
流石に今の発言は
てか、俺の前で神代さんがそんなイメージに
学年の男子全員に土下座して謝ってほしい……ちょっと見てみたいな。
「ちっ、違うよ。みんな、このくらいは言うよ? ねえ、香夜ちゃん」
「言いませんよ? ムッツリさん」
以前、栗野は
まあ、リスペクトから友愛に変わることはありうる事か。
「香夜ちゃん、今日冷たくない? この場合、
「いや、俺そんな事考えていたけど、実際に口に出してないし……」
「ほら、考えていたって! 私はムッツリじゃないよ」
「そうですね。もう私達二人にはオープンでしたね」
「そうだけど! そうなんだけど、納得いかない!」
最後には
「ふふっ、冗談が過ぎました。ごめんなさい、
「ははっ、ごめんな、神代さん」
丁度、漫画喫茶店のある階に着いたので、話を中断して個室へと案内してもらう。
喫茶店内はアジャイルオフィスのようなインテリアスタイルで、広々としていたが、奥にカラオケボックスに似た個室があった。
セッティングしたのは
大きめのソファーがあったので、俺が
「やめてよね、さっきの。
それが胸を揉んでいい合図だと気付いたので、即座に柔らかさを楽しむ。
やっぱりブラは外してきていたらしい。
「ああ、他の男子にはダメだからな」
「また独占欲……
神代さんは『欲深さん』という表現を気に入ったのか、少し嬉しそうにそう言った。
ただでさえ、学年一の美人と呼ばれているのだから、そのギャップは更に人気を集めてしまうに違いない。
でも、心理的リアクタンス……人間の
流石にカリギュラ効果に
「私もその独占欲に入りますか?」
「当たり前に入るな」
「えへへ。じゃあ、私も気をつけますね」
こっちも、ひと揉みして……うん、最高だ。
「うーん。でも、別に隠す必要もないのか……それが二人のありのままなんだしな」
「何の話?」
「学校にいる間と随分違うけど、俺が
「えー、私は全然気にしないけどなー」
「私も同じくですよ」
二人とも何らかのストレスがあるのではないか……と心配していたが、
「で? 安本くんの結論はどっち? やっぱり独占したいの?」
「二人の意思を
「ズルいなー、ホント」
リアクタンスからの解放は俺を優しいと勘違いしたのだろうか。
神代さんは
しかし、この状況凄いな……中世の王様になった気分だ。
まあ、まだ胸を直接拝んだわけでもないし、思い上がっているのかもしれない。
逆に考えれば、まだまだそれだけの楽しみが残っていると解釈する事もできるな。
「ふふっ、気持ちいいですか?」
「
「気持ちよくなかったら、こんな関係やめていますよ」
「マジか。テクニック覚えないとか……」
「冗談です。そんなに頑張らなくても大丈夫ですよ」
「そうよ。十分凄いから……」
神代さんは相変わらず目を瞑って快楽に集中していたのに、珍しく揉まれながら言葉を発した。
「でも今日は、これからもっと凄くなりますよ」
すると、栗野が俺の手を
「いや、待て。それはダメだろ」
「ふふっ、焦っちゃって……安本くんもかわいい反応するんですね」
服を脱いだそこには、確かにまだ布があった。
俺はまんまと栗野の言う通り焦りを見せてしまって、恥ずかしい気持ちになった。
それでも、男として冷静な態度をなんとか取り繕う。
「驚いた。感触的に1枚だけだと思ったのに……」
「薄いキャミソールですからね。
「やっぱり、恥ずかしいんだけど……ほぼ何も着ていないのと同じじゃない?」
「ほぼ、なのでセーフです。安本くん、脱がせてあげましょう」
「イヤ! 流石に自分で脱げるから!」
俺が脱がしても許されそうだったが、神代さんはさっさと自分で脱いでしまった。
服を横に置くと、モジモジしている。
今日は朝から頑張って俺に
俺は準備万全な二人の胸をそれぞれ触る。
シルク越しにいつもとは比べものにならない柔らかさを感じ、近すぎる距離で二人の幸せそうな笑顔を見た。
「なかよし最高ですね」
「なんで、安本くんの手だとこんなに違うんだろう」
「
「だって、おかしいもん!」
以前、見られている事に興奮しているのだと、
栗野と違って
「繭ちゃんも、なかよし大好きなだけですよ」
「それは……認めるけど。なんか、このまま安本くんの
「怖い……か」
「あ、
神代さんは、俺に好意があるのだろうか……真実はわからないけれど、虜という単語から、そうなってしまった後に俺が離れてしまう事を恐れている気がした。
「それは、俺が彼女を作ったら……とか、そんな可能性を想像したのか?」
「え? 安本くん、彼女作る気あるんですか?」
「栗野、今その話は置いておこう。神代さんの話を聞きたい」
栗野には申し訳ないけど、その問いには答えられない。
俺は正直……彼女なんて作らないでこのままの関係を続けられたらいいんじゃないかと考えている。
「安本くんって、女たらしなのに、本当私たちのこと深く考えてくれるよね。ねえ、
「でも、安本くんなら彼女作ってもなかよししてくれますよ? スキンシップ程度で浮気だなんて思いますか?」
「許さない女の子はいると思うぞ……」
スキンシップする部位が部位だからな……それもノリノリでやっていたら気持ち悪いと思われるかもしれない。
「なら、彼女さんに
しかし、栗野は自分なりのポジティブ思考で解決方法を見出していた。
栗野は、本当に強い女の子なんだと思う。
「そっか……うん。そうしよっか。ごめんね、なんか。お
今の事を忘れたいのか、再び服を取り払ってキャミソール1枚の上半身になる。
脱衣の瞬間は何度見ても興奮するな。
お詫びの印をいただけるなら、俺からも求めてみよう。
「じゃあ、目を瞑るの禁止な?」
「んー!」
その後、なんだかんだ従ってくれて、目をパッチリと見開いたまま、胸を揉ませてもらった。
恥じらいを色んな表情で
「私から言ったけど、本気出しすぎだよ、もう」
俺が手を離すと、にやけ面を浮かべながらソファーに寝転がった。
服を着ないから、誘っているとしか見えない。
俺は理性を保つために逃げ出したかった。
「栗野、おすすめの漫画とか紹介してくれないか? 早速行こう」
「はい、わかりました」
「ちょっと、おいていかないで~」
「悪い。すぐ戻るから」
「しょうがないなぁ」
俺が真剣に悪いと思っていることが伝わったのか、神代さんは納得してくれた。
こうして、残りの時間は漫画を楽しんだ。
途中、読み耽っている二人の胸を触ったが、じゃれる程度の反応で許してくれるようになった。
お陰様で、長いストーリーの漫画は内容が全く頭に入らず困ってしまったけど、仕方ない事だ。
漫画喫茶店を後に、俺達は
俺は節約している分自由に使えるお金が多かったので、ちゃんとしたブランド店で、帽子を選んだ。
「本当にいいの? 記念日でもないのに」
「俺の方が
記念日とかには渡しやすいけれど、そうし続けると他の日に何も渡せなくなりそうだから、これでいい。
ただ、俺の気持ちが伝われば十分すぎる。
「とてもセンスが良いですね。大事にします」
そして、白いハットが似合う
その顔を見たかったので、良かった。
「そうだ、写真撮ろうぜ。記念日じゃない記念写真」
「なんか断りにくいし、それくらいなら……」
「それなら、ちゃんと撮りたいですね」
俺はスマホのカメラでも良かったのだが、近くのゲーセンを知っているという栗野に案内され、
初めて
だって、女の子二人と滅茶苦茶近距離でくっついたし……良い匂いがしたから、仕方ないじゃないか。
「はい、
「そうそう!
何も言われなければノーダメージなのに、このままでは俺はずっと
俺は勇気を出して、提案してみた。
「もう一回撮らないか?」
「え、強気ですね……何をしようとしているんですか?」
「どうせ、悪い事企んでいるんだよ」
「まあ、なんだ……なかよししている姿を写真にしておこうとな……」
俺が堂々と言うと、二人は明らかにそわそわし出した。
想像にはしていただろうに、委縮した俺が積極的な事はしないと思ったのだろうか。
もう、俺達の
「私は……いいですよ。なんか、スリルを感じます」
「今更抵抗するのもおかしな話だし、怒られることでもないよね……でも、どうやって撮るの?」
「後ろから二人を抱くようにして揉む……とか?」
「んー、一応条件があるんだけど……イヤとかじゃないし、安本くんに抵抗するわけじゃなくて……」
また俺か栗野が有無を言わせないように誘導してくることを恐れているらしい。
そこまで切実なお願いなら、聞かないといけないな。
「その、撮った写真……私と香夜ちゃんだけで、安本くんは無しってことにはいかない?」
「安本くんを信頼できないということですか?」
「そうじゃなくて、その写真を見ながら安本くんも色々してしまうんじゃないかなって想像するだけで、学校でも恥ずかしくなっちゃうから……」
その気持ちに納得してしまった。
二人は、そんな写真見ながら独りで色々しそうにないけど、男子はそうしそうだよな。
いや、俺も万が一そんな事をしてしまえば罪悪感で二人の顔を見られなくなってしまったかもしれないし、俺にとっても悪いとは
そもそも、美少女二人の胸を揉んだ写真という時点で
「わかった。じゃあ2枚だけか」
「ありがとう。多分、安本くんがダメって言ったら断れなかったから、気持ちを汲んでくれて嬉しい」
「付き合っている訳じゃないんだから、流石に断れよ。俺は神代さんが変な男に捕まらないか心配だ」
「安本くんは変な男じゃないの?」
「は? 普通にショックを受けた。もういい、撮るぞ!」
俺は女の子に優しい方……だと思うのだけど、
まあ、普通の男子はこんなに女の子とイチャイチャしたりしないし、変ではあるのだろうね。
急かした俺が筐体の中に入ると、神代さんは自分から身体をくっつけてきた。
「あはっ、急にみっともなくなるんだ。かわいいぞ!」
「調子に乗りやがって。今に神代さんの方がみとっともない顔の写真が撮れるさ」
「やっぱり変な男だ。ねえ、
「
神代さんにもちゃんと優しくしているつもりなのに、言動だけで
誤解がないだけマシなのかもしれない。
それでも、神代さんは
「え、安本くんって私達のこと、差別してたの?」
「二人とも特別だって……気持ちの整理をしたいのはわかるけど撮るぞ。ほら、カウントダウン始まった」
「煽らなくてもいいのに……特別って言ってくれてありがと!」
そうして、二人の胸を揉んだ写真が撮れた……のだが、神代さんが写真を俺にくれない条件を付けた理由を知ることとなった……ほっぺに当たった感触と共に。
「え? どうして繭ちゃん、安本くんの頬にキスしているんですか?」
「あ、安本くんは外に出てね。ほら、早く!」
俺は困惑しながら外に追い出された。
確認できなかったけど、絶対俺の方がみっともない顔していただろ……してやられてしまった。
その後、こっそりと栗野に見せてほしいとお願いしても断れてしまって詰んでしまった。
悔しいな……でも、あまりにも得としか思えなくて、素直にその好意が嬉しかった。
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