第105話 からゆきさん・・になるはずだった少女

その後の事である

「ええ、客船が数日間 出発を延期ですの!」「はい‥客船側の事情だそうです」

「まあ、仕方ないわ」


「出発まで時間があるから観光ね」「はい有栖お姉さま」

列車から降りて、二人は京都に神戸の街を楽しむ事になった

鴨蕎麦に京都の美味なる料理の数々、湯豆腐もある。

観光客向けの茶会、お茶の席

日本の歴史を紡いできたお寺、寺社の名所、それに、嵐山での川下り・・。


「明日は神戸の街ね‥奈良も言ってみようかしらね」「そうですわね」

手毬てまり有栖ありすが頷き合う。


街の喫茶に入り、手毬が化粧室へ行き 

有栖が一時的に一人で席に座っていた時。


「あ、有栖さま」声をかけて来た一人の少女

そばかすがある、人懐っこい笑顔を見せるのだった。


「まあ、柚葉ゆずはちゃん 元気していた?」有栖は嬉しそうに笑うと


「はい、御蔭様で伯爵さまの会社の一つでメイドとして

 今も働いております」

有栖の笑みに答えるように柚葉は笑顔で答える。


「そうね良かった‥何か困った事があったら 相談してね

私はしばらく遠方にいるけど、会社の橋本さんにも御義父様でもいいから」


「‥私が売られて、『からゆきさん』として南方の島か

遠い海外に連れて行かれそうになって 

偶然、船場近くに居わせた伯爵さまと有栖さまにお助けして頂きました」柚葉


「私は孤児で叔父は酒飲みで‥」うっすらと涙が浮かぶ柚葉

「そればかりは仕方無かった事、辛かったわよね 私に出来る事は少ないわ」


「あ!あの、会社に戻らないと」柚葉

「ええ、またいつか逢いましょうね」手毬


入れ代わるように手毬が戻る

「あら、今の方は?有栖お姉さま」手毬

「昔の知り合い とても可愛い方よ うふふ」有栖はそう言って、微笑した。




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