第42話 手毬とジェロームと・・

「あら・・その子の事は知っていますわ木山男爵夫人 

うちの甥である子爵の要件を良くこなしてくれています

泥棒を働く子ではありません」


「梶野伯爵夫人」


「ジェローム様もこの子の事を庇っておられます よろしいですこと ふふ」

子爵の叔母だという 美しい貴婦人の登場


「・・わかりましたわ 失礼」すごすごと男爵夫人はその場を離れ

周り者達も 仕方なく場を離れてゆく


ポロポロと涙が零れる 手毬(てまり)


「泣かないで 手毬(てまり)ちゃん」

ジェロームや先程のフランスの貴婦人、男爵夫人が慰める


「・・手毬(てまり)さん 社交界は怖い場所でもあるのですよ 

気をつけた方がいいわね

私の甥とも親しいようですけど 少し考えた方がよろしくてよ」


「よく、今後の事は考えて 行動しなさい」そう言って彼女は立ち去った


再び、花が萎れる(しおれる)ように 哀しそうに俯いた手毬(てまり)

フランス語で今度は男爵夫人が優しく手毬に話しかけて、頬にキス


欧州流の挨拶なのだろうが 

男爵夫人がなんと、手毬(てまり)の唇に軽くキスをしようとすると


ジェロームがサッと自分の方に手毬(てまり)を抱き寄せて 口元を歪めつつ一言

「マダム、東洋の日本では唇は特別な意味、恋愛関係にある者同士だけ!」

ジェロームが言い切った


ちっ!悔しそうに そんな表情を浮かべた後

「オーボワア マドモワゼル」などど一言にウインクと投げキス 

その後、男爵夫人も立ち去った


「あの、今の方 本当は日本語が理解出来ているのでは・・?」手毬

「あ、そうだね あはははっ」ジェローム


「すごく綺麗な貴婦人でした 何処でお会いしたのでしょうか?」手毬

「さあ、何処かできっと君を見てたのだろうね」ジェロームは苦笑しながらの一言。


「後で ナッシュ、ナジムには ちょっと言わないと・・

どさくさに紛れてが得意だから」

ジェロームは ブツブツとフランス語の独り言




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る