第40話 意地悪な貴婦人にフランス人のジェローム


「あ、申し訳ありません」慌てて 手毬が謝る

「ああ‥痛いわ」

「あら 貴方 越後谷店 その店の者じゃないの?

前に見たわ 下働きの女中よね」


「何て事 貴方のような者が鹿鳴館に居るなんて!」


「身分の高い華族や士族 外国の来賓者

選ばれた者だけが ここに招待される事を許されるのよ」


「お前のような小娘が来るところではありません事よ」


後すさる手毬



「先日は水戸藩主 あの徳川家の正室 吉子様

鍋島藩の鍋島侯爵夫人 毛利家の安子さま


岩倉具視様のご令嬢

鹿鳴館の華と呼ばれる琴の名手の戸田極子さまなどが御来訪される場所」


「下女風情が 御下がりなさい」強い口調で中年の婦人に詰問される


「あ・・」問い詰められて 手毬は真っ青になり 後ずさる


「どうやって そんなドレスを手にして 着ているのかしらね 

たかが 店の小間使いのくせに信じられない どういう気かしら?」


ざわざわと他の客たちも 皆、騒ぎ出す


「そうだわ」「あの子ね」

「ええ・・私も見た事があるわ」「僕もですね」


「・・・貴重な品でも 盗みに来たの?」

酷い言葉を投げかけられ その言葉に傷つく

「そんな!」

更には冷たい視線に晒される 手毬


「わ、私は悪いことはしていません!」涙を浮かべて抗議する


鹿鳴館の警備の者達が 不審者として

手毬を捕らえる


「どういう事か 話を聞かせてもらうぞ」「ち、違います」

「どうしたのですか?」「あ・・ジェローム様」



泣きそうな顔で 駆け付けたジェロームを見つめる 手毬



「お知り合いですか?」

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