第37話 義父の伯爵と有栖の幻想(はた迷惑な妄想かも)

広い屋敷の居間でくつろぎながらの会話

「有栖(ありす)は綾小路子爵の事はどう思っているのかな?」

義理の父親である伯爵は問う


「え?・・良いお友達ですわ」有栖


「京矢くんと子爵と選ぶとしたら?」伯爵が問う

「・・・・・」


父親がどちらの答えを求めているのかは知っている


でも・・自分の気持ちは裏切れない

京矢は かなりの資産があるが 平民 身分の差が重い


「子爵は もっと出世すると思うよ 身分もね

でも 一番大事なのは・・有栖の気持ちだから」


「お父様」


「私の有栖・・」

「平民とはいえ、京矢君も捨てがたいと私は思っている」


「・・・・・」


「ふむ」

「そういえば 先日遊びに来た 手毬ちゃんだが

有栖に顔立ちが似ている それに・・もし」


「え?」



「いや 何でもない」微笑む父親の伯爵


「さて 私もそろそろ休むとしよう

温泉の旅の前に 鹿鳴館でのパーテイに出るドレスも間もなく

出来上がる とっても楽しみだよ」


「はい お父様 ありがとうございます」


「ふふ、お休み 有栖」


「鹿鳴館に出るドレス お父様はどうして数着も作るのかしら?


「また 海外に行くのかしら? 

政府の仕事で 香港や上海には 何度か行ったけれど」


「此処、横浜に 故郷の博多には戻らない気かしら」


「それに 手毬さんのサイズまで確認していたわね

もしかして 手毬さん 愛らしいから 養女にするのかも」


「そうなったら 楽しいかも知れない

もし私の妹が生きていたら あんな感じだったかも・・」


うっとりと空想に夢中になる 有栖

私の可愛い妹、美味しい料理にお菓子を作ってくれる妹


・・妄想は いや幻想というべきか  それは素敵な幻想だった 多分


食欲魔人的な 有栖(ありす)姫  それで案外、幸せかも・・手毬(てまり)


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