第33話 夜中のホットミルク

しばらく後 

「御父様に許可がもらえて良かったわ」


「電話って本当に便利よね」「そう思うよ」


「ああ、夜風が気持ちいいわ」

美しい庭園 月灯りが二人を照らす

「・・庭園が月灯りで綺麗」「そうかい?」「ええ、散歩したいわ」


庭園を散歩する二人 有栖と京矢

「手入れがいきとどいて、流石 綾小路子爵様」京矢が呟く


花の甘い香りがしていた 夜空の月に星が輝く

「星空が綺麗ね」有栖が笑う


「ああ、そうだね」

京矢が夜の月に星明りに照らされた有栖を見つめて そっと微笑む


「私の事をどう思うの ただの妹代わり?」

じっと目をそらさずに京矢を見つめる 有栖


「え・・」「キスしてほしいの」

有栖の頬に手をやり そっとくちづけを交わす



そこに偶然やって来たジェローム達

抱き合いキスする二人

「・・あ・・有栖(ありす)ちゃん」遅れてきたジェローム

「・・・まあ 仕方ないですね」


「泣かないでください」「いや、泣くから」

「はいはい」がっくりとした大きなジェロームを抱き留めて 

子供を慰めるように ポンポンと背中を優しく叩く ナジム



こちらは喉が渇き 台所に水を飲みに来た 手毬(てまり)


「子爵様」「やあ、手毬ちゃん 眠れないの?」

「あ・・あの 喉が渇いて・・」


「そう ホットミルクを作ろうか」


「え、私が作ります」「僕の分と君の分の二人分」


甘い香りを漂わせたホットミルクに

前に作った手製のクッキーを添える 手毬


「うん美味しいね」「良かったです」

「手毬ちゃん」 「はい?」 「好きな人はいるの?」



「えええ!私 そんな・・」真っ赤になる手毬


「じゃあ 立候補しようかな」

驚きで ますます赤くなる手毬


顔をそっと近づけて じっと 手毬を見る綾小路子爵


「可愛いよ 手毬ちゃん」

「・・・」何も言えず ただ赤くなるばかり


「うふ お休み」子爵はブランデーを手に取るとそのまま台所を出る


手毬は赤くなったまま もう一杯分の自分用のホットミルクを作り

それを手にして 台所を出た


「私は・・そんな どうしよう」身分の差 自分の気持ちがわからず

戸惑ってしまう


「身分が違い過ぎるもの でも・・でも・・」

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