第6話 林檎がコロコロ 林檎の少女 手毬(てまり)

「ああ」「パリの街かどで売られる焼き栗 あのおじさん元気かな」



コロコロ・・


「あ・・・」

「おや!」

二人の足元に転がってきたのは 林檎がひとつ


「あ! あの!」顔を真っ赤にして、地味な着物と眼鏡をかけた少女が立っている

少女は思った


まるで、物語に出てくるような 素敵な方たち

淡い茶髪のウエーブの髪 緑の瞳の二十から三十代前くらいの青年 


それに 私より少し年上の少年の方は 黒髪に青の瞳

「・・・・・」じっと観察してしまう少女

黒髪の少年さんの方は 丸眼鏡をかけているけど 顔立ちは綺麗ね


どこの国の人だろう? あ、日本語は・・


「大丈夫ですか?可愛いマドマワゼル お嬢さん」 

「御嬢さん?」にっこりと流暢な日本語で 二人は話しかける



「あ、あの・・」わたわたと慌てふためき 戸惑う


「お嬢さんの林檎ですね はい、どうぞ」「有難うございます」

林檎を手渡す ジェローム達


「ボンジュール 私達は遠い異国のフランスから来ました どうぞ 宜しく」

「可愛いマドマワゼル」ジェロームはウインクを一つ


「は、はい」真っ赤になる少女

「今度からは林檎に逃げられないようにしないとね ふふ」


「あ、あの気をつけます 有難うございます」

何度も大きく頭を下げる少女


慌てて 彼女はそのまま立ち去る

「可愛い」青年「そうですね」少年 異国の二人組の素直な感想




こちらは大学の一角 廊下を急ぎ足でかけてゆく 若い青年が一人

「ふう」


「もうすぐ 汽車が到着する 会えるのは何年ぶりだろうか」独り言を呟いていた


「おや、京矢くん 今日の授業はお休みかい?」年配の男性が話かけた

「ええ、先生」微笑しながら青年は言う


「店の仕事に戻るの?」

「いいえ、今日は数年ぶりに 幼馴染に会いに行きます

汽車で来るそうで これから迎えに」


そういえば、新しく雇う女中もあの汽車だったかな?

あちらは 店の者が迎えるはずだったっけ?


まあ、店に戻ってからだね



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