19

 ロックウッドとリーサは走り続けた。時折発砲音がして、二人のすぐ横を弾丸がかすめた。

 二人は車へは向かわなかった。車に乗り込めさえすれば逃げ切れるだろう。

 だが、乗り込んで発車するまでの間に殺される可能性は十分にある。ロックウッドは今日ばかりは自分の車の形状を怨んだ。いや、怨むべきはそんな車を見た目が理由で使っている自分自身か。


 ではどこへ逃げるべきかロックウッドは考える。もちろん人の多いところは論外。

 それに忘れてはいないだろうか。ただ逃げて、逃げ切ればお終いではない。

 ロックウッドとリーサにはデュークを倒さなければならない理由がある。取り返さなければならないものがあるのだ。


 ならば――。考えるのは俺たちの逃げ先ではなく、奴の墓場だ。


 ロックウッドはデュークに聞かれないよう、走りながらリーサに作戦を耳打ちした。リーサはニヤリと笑って頷いた。


「悪いな。また君を頼ることになった」

「何言ってるの? 私がリチャードを頼ってるんでしょ?」


 二人は廃ビルを目指した。アーチボルドと死闘を繰り広げたあの建物だ。

 ビルの中に侵入すると、ロックウッドは爆弾を入り口に向かって投げ、直ちに起爆させた。

 デュークを倒すためでなくあくまで煙幕替わりだ。もちろんこれでデュークを倒せたら御の字だが、そこまで簡単に倒せる相手ではないだろう。

 ロックウッドとリーサは、発生した土煙に乗じて身を隠した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る