で、オマエは何ができるんだ? 2


「まず、戦闘に関してから__」

 先が長いので割愛する。


 ソニックが、一つ一つ、細かく説明しているものを。

 まともに聞いている沙羅では、なかったという事である。



 サバイバル的に、必要なスキルが、あるのか、どうか。

 確認したい、だけなのだから。



 戦いに関して、口に出している、ソニックの話に。

 口を挟まなかっただけ、偉いのだろう。


 それだけ、長い語りだったのだ。


 素材の話から入った、ソニックは置いておき、要点だけを、かいつまもう。


 ソニックは、機械翼で、空を飛ぶことはデキないが、ホバー移動が可能だ。

 地面から少し浮いて、重さを感じさせない、高機動戦闘が、可能らしい。


 実際に、少しやって見せるあたり、相当の自信が、あるのだろう。


 さらに、高圧電流・電気警棒。

 通称・ペンソードは、アフリカゾウも、一撃の代物だそうだ。


 はたして、アフリカゾウも、一撃の武器が。

 この世界で、通用するかどうかは、かなり疑問である。



 むしろ、そういうシチュエーションに、ならないように、動き回りたい。


 完全遭難している、今。

 あるのは、水だけの状態で。

 そんな大きなモノと、戦う可能性を考慮している、目の前のバカに。


 沙羅は、一言、言ってやりたかったわけだが、グッと抑えた。


 次に、スマホ付きガントレットの、アプリメモ機能をつかい、リストを作り出すことができる。

 分かりやすく言えば、モンスター図鑑みたいなものが、製作可能である。


 ネットに繋がっていない、スマホで。

 何ができるのか、必死に考えた結果だろう。


 もちろん、この世界に、存在すれば。

 電波も受信可能だ。

 4Gだ、5Gだと、電波を飛ばしている異世界。

 それは、異世界ではなく、現代である。


 沙羅の財布を、ソニックが、生まれるときの素材として、

 使った結果。


 全財産と、銀行口座のカードを全て失ったと、通達された訳だが。

 沙羅は、それでも、グッと耐えた。


 おサイフ携帯に、なぜか、沙羅の全財産が入っており。

 日本円で数字化された金額が、使用可能である。


 財布の中に入っていた、ポイントカードも電子化され、全て適応されているらしい。


 そもそもが、電波がドコにあるのか。

 日本円の使用先があるのか。

 そして、ICセンサーなるものが。

 この世界のドコに、あるのか。

 疑問でしかないのだが、口を出すのを、さらに、グッと耐える。


 ソニック左腕。

 スマホ付き、ガントレットを使用するには、画面を、指で操作する必要がある。



 生体認識機能と言い切った、機能が実装されているようで。

 ソニックの指にしか、反応しない、仕様である。


 つまり、沙羅の全財産は。

 ソニックに、奪われたという解釈で間違っていない。


 あらためて、確認をしなかった沙羅が、黙って、先をうながせば。

 まだ、喜々として話し続ける、ソニックに、嫌気が、さし始め。


 ガントレットの一部、端末部分は、脱着可能であり。

 二メートルほどの有線で、繋がっている説明を受ける頃には。


 戦闘以外の部分は。

 すべてスマホで、できた事がそのまま、ソニックが、引き継いでいるということだ。


 ネット回線の繋がっていないスマホに。

 どれだけ意味が、あるのだろう。


 さらに言えば、有線で繋がっている時点で。

 劣化していると、言ってやりたかったが。

 言い出すと、10の言葉は、返ってきそうだったので、飲みほした。


 沙羅の前で、よく廻る口で、おりなすマシンガントーク。



 ここが、自分の株価を上げる、サイコーの舞台と、張り切っているようだが。



 駅前で、演説をしている政治家の話を、聞いていたほうが。

 もう少しマシな時間を、すごせるような、気が、し始めたころ。


 横の岩沢が船を漕ぎ出し、言葉の終わりが、やってきたようだった。


 沙羅の言葉を、待っているソニック。


 これらを百歩譲って、全部、スグに使えたとしよう。

 デキることは、確かに多彩で、使える能力では、ある。


 ネットに、繋がっていないとしても。

 スマホ一つ、あるとないでは、大違いだろう。


 だが、両目が節穴で。

 大きな問題を、全て忘れている、目の前のポンコツに。

 沙羅は、言ってやることにした。


「…オマエ。

 ご飯は、電気です、とか、言い出さないよな?」


「何を言っているんですか~。普通のご飯ですよ」


「何を、普通と言ってるか、分らないけどさぁ~。

 じゃあ、ずっと、その電子機器は、使えるんだな」


 何を馬鹿なことを、と。

 笑いながら、手のひらを顔の前で仰ぐ顔面に。

 グーパンチを入れたい気持ちを、沙羅は押さえ込む。


「充電しなきゃダメに、決まってるじゃないですか!」

 さすが、ソニックと言うことも忘れ。

 沙羅の意識は、もう、説明とは言え。

 無駄に、スマホを操作して欲しくない、という所に収束される。



 このまま行けば。


「どうやって?」

 時計機能すら、使えなくなるのだから。


 電気が必要だと言った、その口から。

 解決策は、きっと、出てこない。

 確信すら、ある。


 ソニックは、人差し指を、左右に揺らし。

 得意げに首筋から、よく見た端子を、沙羅の目の前に差し出してくる。


「沙羅様、コレです!」

「そのUSB端子で、何をする気だ?」


「沙羅様こそ、なに言ってるんですか?

 充電するに、決まってるじゃないですか!」


 もう、ココまで我慢すれば。

 静かに、沙羅が怒っても、良いだろう。


「おい、ソニック?」

「はい!」



 ソニックの、賞賛を期待してやまない、キラキラとした目を見て。

 沙羅は、良心を捨てた。


「お前の名前を、改名しなければ、いけないようだな?」


「考えてくれるんですか!?

 この、沙羅様のファーストヒロインに、絶好の名前を!」


「ああ、オマエに、ピッタリ名前だ。これ以上は、ないぞ」


「やった~」

 素直に喜んでいるソニックの名前が、今、改名される。


「だめ子」


 だめ子の乗り出した体と顔は、硬直したまま動かない。


 それでも、沙羅は、言葉を続けた。


「こいつ、だめな子。の略で、だめ子、な」

「…ど、どうか、ご再考のほどを」


 ご再考と、言われたところで。

 沙羅の中で、ダメ子のイメージは、固まってしまった。

 ダメ子を説明するなら、名前通りだと言えてしまう。


 岩沢と、比べることすらデキない所まで、落ちきった株価。



 もう、上げるのは至難の業だろう。


 たいがい、ソコまで下がったら、会社は倒産している。


 だからといって、このまま、何もなしでは。

 話が、ループするだろう。


 それも、非常にめんどくさく、鬱陶しい。


 「私の名前は」談義にも、そろそろ、終止符を打たなくては、ならない。


 むしろ、打ってしまいたい。

 と言うのが、沙羅の本音だった。


 この談義は、ドコまでも、付きまとい。


 話を、突発的に全て打ち切らせ。

 非常に、やっかいなのだから。


 この全てを解決するため。


 沙羅の中で、あるシステムを採用することが今、満場一致で可決する。


「ポイント制だから、がんばって稼げば、変えてやろう」


「ちなみに、今のポイントは!?」

 食いつきが半端なかった。

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