第15話 いもうときたきた

「あっ、柚子! いらっしゃい!」

「うん」


 金曜日、今週も柚子が来てくれた。

 今日もかわいい。

 髪型変えたのかな?

 編み込みしてる。

 長髪の編み込みもいいけど、短めでもアリだよね~!


「お姉ちゃん、今週は何してたの?」

「んー、絵を描いたり、配信してたり?」

「え、本気で配信始めたんだ」


 言ってなかった?

 Webカメラとかで言った気に……


「あ」

「どうしたの?」

「柚子、Webカメラあげる!」


 私使わないみたいだし。

 それに……


「柚子も……」

「なに?」

「んー……やっぱなんでもないや!」


 柚子、大学生だから、忙しいだろうし。

 しかたない。


「配信ね、結構楽しいんだよ! いろんな人いるし!」

「はぁ……なんていうか」

「なあに?」

「お気楽だなぁって」

「そんなことないよぉ」

「配信もやってるんでしょ?」

「うん!」


 もう何度か配信した。

 ちょっとは慣れたかな?

 まだ1週間だし、そんなことないかぁ。


「あ、あのね! コラボしない?って連絡来たの!」

「へぇ……それって、どうなの?」


 どう、とな。

 それは、嬉しいよ?

 今まであんまり関わってなかったし。


「そういうのって、何でくるの? メール?」

「Twitterのダイレクトメールで来たよ?」


 Vtuberだとそっちの方が普通なのかな?

 ちゃんとしてるなら、どっちでもいいけど。


「イラストレーターのVtuberでAmong Usするんですけど、良かったら参加しませんか、だって」

「へぇ……いいじゃん。お姉ちゃんもイラストレーター同士の方が話し合うんじゃないの?」

「まぁ、多少はそうかも? 今まであんまり話したことないからわかんないけど」


 イラストに関する話なら盛り上がりそうだけど、他の分野はどうだろ?

 職業柄、アニメとかそっちの、サブカルチャー?なら、多少は話せるけど、その時間もイラスト描いていたりするから、ちゃんと話せるかわからない。


「おんなじ仕事なのに、一緒に絵描いたりしないんだ?」

「あっ、そっちも来てたよ? その次はイラスト共同で描きませんかって」

「それってさぁ……どうなの? どっちかは、ついでみたいじゃない?」

「そうなのかなぁ?」


 依頼なら、同時に2つって言うのはあんまりないけど、無いわけでもないような。

 でも、今回のは、依頼でも仕事でもないし……


「まぁ、私にはわかんないから、がんばって」

「そうだよね~」

「体調には気を付けて」

「頑張るけど、柚子って私の配信見てない?」

「見てない。身内のつくった声とか聞きたくないし」


 つくっては、無いと思うんだけど……

 でも、わかんない。

 お母さんが電話で話すみたいな声に、自然になってるかもしれないし。


「そういえば、イラストレーターとしての仕事は? やってるの?」

「うん。また依頼くれるみたいだから、いくつか受けてるよ」


 依頼来たばっかりだから、まだ締め切りまでは時間があるけど、構図などは考え始めてる。


「さっきも言ったけど、体調気を付けて? 今までの仕事以外に配信してるのに、休む時間ある?」

「うん。流石に配信の方は、趣味というか、個人的にやってることだから、イラストの仕事に影響が出ないようにはするよ」

「ならいいけど」


 遅れたりするといろんな人に迷惑かけちゃう仕事とは、やっぱり違う。

 誰かと一緒に配信する時は別だけど、個人の配信なら最悪……できるだけ避けたいけど、ドタキャンしても大丈夫。


「柚子、今日も泊っていくの?」

「うん、いいでしょ?」

「いいよー」


 使って使ってー!

 この部屋、誰も使わないのもったいないし。


「ゲームしよ、ゲーム!」

「また私が操作でしょ?」

「柚子がやってるのを見てるだけでも、楽しいよ?」

「はぁ……」


 準備も柚子に任せるしかないけど、言葉ほど柚子は嫌がってなさそうだからよかった。



φφφ



「次は特急周遊で!」

「はいはい」

「ん-、今!」


 柚子と桃鉄をしてる。

 柚子はごはん中だけど、家だからおっけーってことで。


「そういえば、今日は配信いいの?」

「うん、柚子が来るってわかってたからね」

「そ」


 柚子が来る前にも配信してたし、今日はもう大丈夫。

 やりたくなったら、夜中にちょっとやってもいいし。


「あ、柚子、さくまさん絶好調だよ?」

「今更追いつけなくない……?」


 何故か、最強コンピューターのさくまさんは、前の年で最下位だった。

 しかも、総資産が3位の半分。

 まあ、柚子が搾り取ったんだけど。


「というかさ……」


 柚子がテレビから目を離さずに言う。


「今の状況って結構アレだよね」

「今の状況?」

「いや、よそからみたら、私、独り言ぶつぶつ言ってる人じゃん」

「そうだね~」

「それに、お姉ちゃんというか、Vtuber?としゃべってる人じゃん」

「だね~」


 確かに、事情を知らない人が見れば、そうかもしれない。

 でも、他の人が見れるわけもないし。


「なんていうか、慣れちゃったなって」

「私は嬉しいけどね」


 今日も来てくれて。


 

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