第7話 美少女になってるぅぅぅううううぅぅぅっ!!!

「お姉ちゃん、何言ってるの?」

「み、みかんちゃんが動いてるよ! 柚子、お母さん、お父さん、見えてる!?」

「蜜柑?」

「この子の名前だよ!!」


 わぁ! わぁ~!!

 動いてるよぉ!!


「……もしかして、『黄金こがねみかん』のこと? お姉ちゃんのペンネームの?」

「これからは、この子の名前でもあるんだよ!」


 私の動きに連動してるみたい。

 興奮しすぎて目がシイタケになってる。

 描いといてよかった!


「じゃあ、お姉ちゃんは今、その『みかんちゃん』の身体ってこと?」

「え? んー? 元の身体のままだよ?」


 視線を下ろしても、いつも通り。

 なんでか全裸だけど。

 あれかな。

 皆が来るのを全裸待機ってことかな?


「そっちからは、私がみかんちゃんに見えてるってことだよね?」

「うん……お姉ちゃんの姿は見えないよ」


 まあ、もし全裸の娘や姉が見えてたら、もう少し反応があるよね。


「んー……あっ! そうだ! 私って入院してるんだよね?」

「ああ。状況を整理できてないが、蜜柑は病院で寝ている」

「私のカードとかあるよね? そこから入院費とか持ってっていいからね? 暗証番号は0427だから」


 そこまで面倒を掛けるのは申し訳ないし。


「お姉ちゃん、なんでパスワードとか全部一緒なの……」

「だって、忘れちゃうじゃん」

「……」


 呆れ顔も久しぶりに見た!


「それで、そっちはどういう状態なの?」


 お母さんが改めて訊いてくる。

 そういわれてもなぁ……


「部屋かな? 何にもないけど、四角い部屋みたいなところにいる感じ?」

「部屋?」

「うん。あっ、でもね! パソコンと液タブあるの!」


 これのおかげで退屈せずに済んだ。

 見事に電子機器しかないけど。


「それだけ?」

「うん。それでね? これってパソコンに繋がってるからじゃないかなって」

「繋がってる……?」


 たしか、私は、液タブの線を繋ぎっぱなしだったはず。

 ここがパソコンの中と聞いた時に、すぐに思い浮かんだ。


「だから、もしかしたら、スマホも繋げば使えるかなって思ったんだけど」

「やってみる」


 柚子が、充電器を持ってきて、その線を使い、パソコンとスマホをつないでくれている。

 そして、次の瞬間、目の前にはスマホがあった。


「繋いだけど……」

「すごいよ! スマホ来た!」


 どういう仕組みなんだろ?

 今、出てきたスマホも、元からあったパソコンと液タブも、普段私が使っている物。

 しかも、そこから線が出ているわけでもないのに、充電し続けている。


「これで生活できる!」

「蜜柑、あんたねぇ……」

「お母さん、あれだよ! ほら、私ってほとんど家から出なかったし! 今の状況もほとんど変わらないよ!」

「まぁ、相変わらず能天気なのは安心したわ」

「えへへ」

「お姉ちゃん、戻れないの?」


 柚子が少し期待した顔をしてるけど……


「わかんないや、ごめんね?」

「……そっか」

「とりあえず……大丈夫なのね?」

「うん! 大丈夫だよ!」

「そう、ならいいわ」


 大体状況は把握できたし、おっけーかな?


「私、買い物とか全部引き落としだから、カードとか現金は持って帰ってくれる?」

「残しておいた方がいいんじゃない?」

「ほら、私、泥棒とか入ってきても、守れないし」

「……そうね。じゃあ、預かっておくわ」

「おねがーい」


 あと確認することは……


「んー?」

「お姉ちゃん、何してるの?」

「ちょっと画面見てて?」

「? うん」


 ジャンプ。


「どう?」

「えっと……みかんちゃん?が上下に動いた?」

「ジャンプしてた?」

「ジャンプって言うか……ただ上下に動いた?」


 やっぱり描いたもの以外は駄目みたい?

 ジャンプするイラストなんて描いてない。


「顔が近づいたら教えて?」

「わかった」


 まずは柚子たちが映ってる壁に向かって歩く。


「どう?」

「表情は動いてるけど、大きくはなってない」

「そっかぁ」


 これは違うと。

 スマホでもないだろうし……

 じゃあ、こっち?


「どう?」

「あっ、うん。ちょっと大きくなったけど」

「なるほど」


 ここにあるパソコンのカメラに反応してるみたい。

 こういうのって手作業で大きくするのかと思ってたけど、そっちもできるのかな?


「うわっ!」

「おおきくなった?」

「う、うん。顔が画面いっぱいの大きさになった」

「ガチ恋距離っていうんだって!」

「うん?」


 やっぱりこっちのパソコンと連動してるみたい。

 じゃあ、なんにも変わらないかな?

 パソコンと液タブとスマホが使えて、そっちでも普通に動いてるなら……


「あ、そうだ」

「どうしたの?」

「そっちのスマホで、3人の写真撮ってくれない?」

「写真?」

「うん、こっちにも保存されるのか気になって」


 一瞬で、目の前からスマホが消えた。

 線で繋がれていなければ、ここには存在できないとか?


「……どう?」

「パソコンに繋いでー?」

「あ、そっか」


 スマホが戻ってくる。

 フォルダを見ると、確かに3人の写真があった。


「あったよ~!」

「よかった、んだよね?」

「うん。これでほとんど変わらないってわかったから!」


 家にいたのと何にも変わらない。

 ただ場所が変わっただけ。

 そう思えば、何の問題もない。


「LINE送ったよ~」

「うん、届いてる」

「じゃあ、全部できるね!」

「……そうね。とりあえず、問題があれば連絡しなさい?」

「うん! ありがと!」

「はぁ……なんだか疲れたわ」


 お母さんがため息をついた。

 こんなわけのわからない状態だもんね、しかたないね。

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